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1-11 黒狼

 森に入ってすぐに2体のゴブリンと遭遇する。今日は護衛対象がいないので近づいてきたゴブリンを棒で突いて気の流れを邪魔して動きを止めた後にナイフでとどめを刺す。倒したあとは胸を開いて磨晶を取り出す。今日から魔法で水が出せるようになったので手と磨晶とナイフをさっと洗う。魔法便利だ。

 魔法を使う感覚で分かるんだがマックさんに教えてもらったこの魔法は魔力そのものを水に変化させているようだ。少量なら問題ないが大量の水を作るのは難しそうだ。

 森を歩いてゴブリンを探して狩る。遭遇したゴブリンは1体か2体で行動しててシルフに出会った時以降3体以上の集団は見かけない。ゴブリンは群れたりしないんだろうか?それとももっと森の深くに行けばもっとたくさんの集団やゴブリンの集落みたいなものもあるんだろうか。このあたりも資料室で聞いておけばよかった。


 10体ほど狩ったところで小川の方に戻りながら兎を狩る。昨日持って帰った兎もまだ教会に残ってるから今日狩った分は売るか他の加工もやってみるか。昼に食べた燻製もおいしかった。そう思ったが別に料理が得意なわけでも無い地球でも料理はほとんどやってこなかった。シルフかシスターにできるか聞いてみて無理そうなら売却だな。


 小川に戻って狩ってきた兎2匹の血抜きをする。そのまま皮を剥いで肉は荷車に載せ毛皮は川の水にさらして洗う。洗い終わったら荷車に広げて干す。


 荷車の荷台に腰かけて魔法で出した水を飲みながら少し休憩しながら考える。俺は地球に帰ることはできるんだろうか。とりあえず目先の生活を考えて行動しているが帰るための手段を積極的に探すべきかこちらでの生活基盤をしっかり築くべきなのか・・・

 どちらの選択肢になるとしてもとにかく金が必要だ。


 そんなことを考えていたら血のにおいに釣られたのか森から今日の目当てが現れた。


 黒狼だ。


 現れた黒狼の群れは6頭。1頭が他の5頭よりすこし大きいのであれがこの群れのボスか親なんだろう。

 シルフを守りながら戦うのは不安だったので1人の時に狩りに来ようと考えていた。今は小川を背にしているので全方位囲まれることもない。


「「Gurururururururu」」


 3頭の黒狼が唸りながら俺を囲むように近づいてくる。

 鋭い牙をむき出しにしていてあの顎で噛みつかれたらやばそうだ。

 俺は黒狼が襲ってくる前に右にいる1頭にダッシュすると首元を狙って棒を突きだす。突いた黒狼は少しよろめいてその場に倒れる。よし。こいつらも問題なく気の流れを狙えば無力化できる。まず1頭。すぐに振り返ると真ん中にいた1頭がこちらに飛びかかって来たので転がるように右に躱すとすれ違ったところを左胸のあたりを突く。くそっ、少し場所がずれた。一撃では仕留められなかったので動きが鈍くなりながらも振り返ったところを喉元に突き入れて倒す。これで2頭。ボス狼は後ろから見ているが残りの2体が倒れた2頭の代わりに俺を囲もうと近づいてくる。わざわざ待つ必要もない。残っていた左の1頭に近づいてこちらも一突きで倒す。3頭目。近づいてきた2頭も同じだ。同時に相手にしないように近づいたり離れたりして1頭ずつ突いて倒す。

 あとはボス狼だけだ。黒狼は群れより少ない獲物だけを狙うと聞いているが1対1だとどうするのか。俺は棒を構えてボス狼と対峙する。


「Gurrrrrrrrrrru!!」


 唸りを上げてこちらを睨んでいるが近づいてくる様子はない。ゆっくりとこちらから近づいても逃げる様子もない。それなら倒してしまおう。

 ボス狼に向かってダッシュする。向こうも戦う気のようだ。こちらに向かって振り上げた前足を振り下ろす。俺はその振り下ろされた前足を狙って棒で突く。力を込めている部分には気の流れも集まっている。俺には良い的だ。思ったよりダメージがあったのかひるむように後ずさったボス狼の喉元に力を込めて一突きする。これで終わりだ。


 倒した6頭の首にナイフを入れトドメを刺していく。トドメを刺して黒狼たちの死体を荷車のそばまで運んだらどっと疲れがきた。腰を下ろして水を飲み一息つく。

 地球では格闘技や武道の試合をしたことはあるが命のやり取りははじめてだ。ルールも審判もない殺し合い。負け=死だ。自分で思っていたより緊張していたのかもしれない。もちろん油断して死んでしまうより何倍もマシだ。相手の力量を甘く見ず勝てない時には逃げる選択肢も考えて行動しないといけない。逃げる余力もなくなってからでは遅いのだ。死んだら終わりだ。

 安全に戦うために遠距離で攻撃できる魔法が欲しい。完全な安全なんてないけど少しでも危険を減らす努力は必要だろう。


 一息ついたら肘や膝に擦り傷がついている。黒狼に直接キズを付けられることは無かったが転がった時にでもついたのだろう。せっかくなので治癒魔法の練習をする。魔法で出した水で傷口を洗い、患部に手をかざして魔力を流す。おお、じんわり暖かい感じがするな。合わせて患部の近くの気の流れを操作して肉体を活性化させる。キズの直りが早くなった気がする。この辺りも検証が必要かもしれない。

 それでは黒狼の解体だ。血抜きが終わったら腹側にナイフを入れて皮を剥いでいく。剥いだ皮はそのまま小川でさらす。皮を剥いだ後は磨晶を取りだして肉の部分は少し離れた森の方に捨てた。6体分の解体は中々骨が折れる。皮剥ぎの重労働ったら半端ない。牙ってどうやって抜くんだ?ナイフで無理やり顎から切り離して水で洗う。これもっとでかい魔物なら一人じゃ無理だろ・・・いや、そもそもそんなでかい魔物と一人で戦うのが無茶か。


 6体分の毛皮を洗うところまで済ませたら荷車に広げるようにして積む。今日の狩りはこれで終わりだ。

読んでいただきありがとうございます。

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