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五日後

 王都が水浸しになると言ったのは、誰だったか。


 それ程までに、激しい雨は降り続いている。


 それは、王都周辺だけでなく、大陸全土で言えることのようだ。


 そろそろ聖女様には、聖堂で星々に祈りを捧げてもらいたいものだが、王太子夫妻は、共同の寝室も兼ねた自室からは出てきていないと聞く。


 結婚したばかりで離れがたいのだろうし、王家の安泰を願うのなら、仲睦まじいのも喜ばしいことだ。


 原初の民であり、聖女様の血を引く御子が誕生となれば、これ以上の明るい話題はない。


 だから、今はまだ何も言うまい。


 先日、アリーヤ様の機嫌がよろしくなかったのは、風邪の為に式に参列できなかった妹君への見舞いが許可されなかったからだとも聞いた。


 心優しいアリーヤ様だ。


 妹君の事が心配なのだろうが、王太子妃様ともなった方が、地方に向かうのは簡単なことではない。


 その事を慰めるためにも、王太子殿下は共に過ごす時間を設けているのだろうし、新たな家族が傍にいればアリーヤ様も安心することだろう。


 修道会としては、もう少しだけ待つことにしよう。


 私の足は、その場に向かっていた。


 改修されたばかりの祈りの場は、尊ばれる血筋のあのお方に相応しく、豪華絢爛なものだ。


 大理石の床と、壁には特別に銀と金の装飾が施されている。


 短時間でこれを仕上げてくれた職人には、直接礼を言いたいものだ。


「こ、コールダー様、昼食の用意が整いましたが……」


 声をかけてきた下級修道士が、何かを言いにくそうにしている。


「どうしたのだ?」


「配送の馬車が、家を失って彷徨っていた暴徒に襲われて、ワインの搬入が間に合っておりません」


「それで、私に安い物で我慢しろと?」


「も、申し訳ありません……」


 まったく、この私をバカにしたものだ。


 高貴な私に、安物で我慢しろなどと。


 それに、修道会の馬車を襲うなど、


「その暴徒共は取り締われたのか?」


「即、捕らえられ、縛り首になったそうで、防壁の向こう側に吊るされています。ただ、その時に品物が割れてしまって」


「勿体無い事を。お前達にあのワインの価値が分かるはずがないでしょうけど、たかだか平民の首で償えるものではないのだ」


 腹立たしい思いで、食事の席に着く。


「土砂災害の影響で、他の品物の流通も滞っているそうです」


 どこかで聞いた話だ。


「それで、あの、コールダー様、聖女様はまだ……」


「お前が口出す事ではない」


「も、申し訳ありませんでした」


 余計な事を口にする修道士を睨み付けると、顔色を変えて慌てて走り去っていた。


 食事時に不快な思いをさせられて、後であの者には罰を与える必要がありそうだ。


 冷め始めた食事を口にして、今後の予定を頭の中で立てていた。















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