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男達の末路

 その日、その男は悪友と、ニセモノの聖女の処刑が行われる広場にいた。





 若い女が痛めつけられた挙句に、惨たらしく殺されると聞いて、早くそれが見たくて最前列でその時を待っていた。


 台上に現れた女は、家畜のように首に縄を巻かれ、引きずられながら歩かされている。


 その見窄らしい姿に、嗜虐心が増す。


 何の抵抗もできない女をいたぶって、痛めつけられたその苦悶の表情を見ることで、得も言われぬ快感を呼び起こす。


 引き倒され、床に這いつくばった女に向けてぎゃはははと遠慮なく笑い声をあげ、そして立ち上がったところに石を投げつけていた。


 一つは見事に女の額にあたり、流れる血を見ることができてスッとした。


 若々しく、それなりに美しかったであろう女が、あちこちに傷や痣をつくり、そして最期はそのか細い首に斧を叩きつけられて、派手に血飛沫を飛ばしていた。


 胴体から離れた瞬間、物体と化した首はゴロゴロと床板の上を転がっていく。


 アレを踏みつけたら、どれだけ気持ちがいいのだろうか。


 どれだけ愉悦に浸れるのだろうか。


 残念ながら、見ることしかできないが、得られた興奮は、想像以上だった。


 周囲の者達も熱に浮かされたような顔で、その光景を眺め、歓声をあげていた。


 何よりも得難い娯楽だった。


 処刑が終わっても、その光景が脳裏に焼き付いて、興奮が冷めない。


 何かにこの烈情をぶつけたい。


 それはもちろん、犯罪と呼ばれる手段でだ。


 しばらく酒を飲んで過ごしても治まらないものを、その辺にいた適当な女でこの興奮を鎮めるつもりで、目の前を通り過ぎた奴に足を引っ掛けて転ばしていた。


 それが、ちょうど手頃な女だったのだ。


 運がいいことに、金髪にアンバーの瞳を持つ、売ってもかなりの金になりそうな年若い女だった。


 それに加えて、これから行う陵辱行為を想像すると、興奮する。


 地面に転がった女は、抵抗をしなかった。


 どこを見ているのか分からない、虚な視線が彷徨っている。


 抵抗されないのも面白味が欠けたが、順番を待っている仲間達がいるから早く事を始める必要もあった。


 そこで、完全に油断していた。


 一度は地面に組み伏せたのに、大人しいと思っていた女から突然腕を噛まれ、怯んだ隙にスルリと逃げ出されていた。


 仲間達と後を追いかける。


 女の足だ。


 すぐに捕まる。


 その服を掴もうと手を伸ばしたところで、前方に数人の人影が見えた。


 その中の一人が女を自分の外套の中に隠すように引き寄せる。


 女の仲間か?


 俺と同様に仲間達も足を止め、ナイフを取り出す。


 戦略などはなく、いつものように、殺して奪えばいい。


 そう考えていた。


 だが、俺たちがナイフを取り出した瞬間に、風が吹いたかと思えば、周囲にいた仲間達が次々に倒れていた。


 倒れてから、奴らが至るところから血を流していることに気付いた。


 何が起きたんだ?


 一人残された俺の背後には、一人の男がいつの間にか剣を抜いて立っていた。


「武器を向けたってことは、殺されてもいいってことだろ?」


 背後からの囁き声に応えるように、


「この国は、どこまでも腐っているな」


 女を抱き寄せている前方の男が口を開く。


「お前みたいなバカ。嫌いなんだよな」


 また、俺にしか聞こえないように囁かれる。


 そして、腹に覚える灼熱感。


 続いて訪れる、激痛。


 喚き散らそうとしたところで、口に何かを突っ込まれる。


 首に腕を回され、体を押さえつけられ、男から離れる事も叶わない。


 声を出せないところに、腹を貫いている剣がぐりっと捻り回された。


 鋭利なものに内臓が引き千切られるような激痛に、出せない悲鳴をあげる。


「レイン、時間をかけるな」


 背後にいる男がレインなのか、舌打ちが聞こえ、そして一度引き抜かれ剣は、俺の心臓を一刺しし、そこで俺は絶命していた。














 地面に倒れた男達は、傷付けた女性が誰なのか知らない。


 知らないまま、事切れていた。


 











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