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陸地から離れて

 本当に海に出た……




 ゆらゆらと波に揺られながら、月が映る海面を眺めていた。


 月明かりの中、王都から少し離れた港で小舟に乗って沖合いに出ると、大きな船が停泊していて、さらにそれに乗り換えていた。


 船に詳しいわけではないけど、それでも軍艦規模だとわかる、かなり大きな船を見て、レオン達が何者なのかは気になった。


 ただの傭兵部隊がこんなものを所有できるはずがない。


 それこそ帝国の……


 でも私は何も尋ねなかった。


 何だっていい。


 今はドールドラン大陸の土を踏んでいない事が重要だった。


 相変わらず私にくっついたままのモフーと、レオンの後をついて船内を歩いていく。


 他の人からの不躾な視線が痛かったけど、ずっと気付かないふりをしていた。


「俺はレインの部屋に行くから、ここはシャーロットが使ってくれ。変な奴はいないけど、念の為に部屋の鍵はちゃんとかけておくように」


 案内してくれた部屋は、レオンが使っている部屋だった。


 船内だから手狭ではあるけど、一人で使えることは有り難い。


 自分の場所をあけ渡すだなんて、レオンはやっぱりただのお人好しなのかと思いながらベッドに横たわる。


 そう言えば、ベッドに寝ることなどいつぶりだろうか。


 ゆっくりと体を休められるとなると、それこそ生死を体験した疲れのせいか、緊張も警戒もせずに深い眠りに落ちていた。


 それからどれだけ時間が経ったのか、翌朝、日がすっかり昇りきった頃まで私は寝ていたようだ。


 部屋から抜け出し、船の甲板に出る。


 やはり遭遇する人達は私を異物を見るような目で見ているけど、それはどうでもよかった。


 船の縁に手を置いて、どこまでも続く波打つ海面に視線を向けると、陸地の影はどこにもない。


 空を見上げる。


 どの辺を航行しているのか、青空が見え、私の後を追うように星達はついて来ている。


「シャーロット、ここにいたのか。一緒に食事をしに行こう。朝食を食べていないから、お腹が空いているだろ?」


 レオンが甲板まで私を探しにきてくれたようだけど、別にお腹は空いていない。


 それよりも、私の意識は見えないあの大陸に向けられていた。


 今頃、ドールドラン大陸はどうなっているか。


 滅びてしまえばいい。


 全て流され、最後は大陸ごと海に沈む。


 そうなるのは、もう少し先だ。


「モフーにも、何かエサを与えないと」


 それはレオンが勝手にすればいいけど、モフーは変わらず私から離れない。


 今は腰に下げた袋の中に入っている。


 身に着けているようなものが死骸になるのは、気分が良いものではないから、仕方なくレオンの言う事を聞いて食堂に向かった。


「放浪姫さんは、見つかったか?」


 食堂に入ると、席に着いて食事中だったレインさんがまた、からかっているようなニヤリとした笑いを向けてくる。


 気が進まないから入り口で立ったままでいると、レオンはテキパキとテーブルに食事の用意をしていく。


「ほらほら、早く来ないとレオンのお節介がエスカレートするぞ」


 レインさんに大きな声で促されると、他の人からの視線が突き刺さる。


「シャーロット、遠慮しなくていいから」


 別に遠慮しているわけではなかったけど、ここで騒ぐわけにはいかないから、大人しく従ってレオンの隣の席に腰を下ろしていた。


 こんな風に、慣れない人達と向かい合わせで座っても、食事が美味しくなるはずがない。


 レインさんが一方的に話す内容に、レオンは適当に相槌を打っている。


 その気軽さから二人の信頼関係がわかりそうなものだ。


 警戒を緩めてはならない。


 いくらレオンが親切にしてくれていても、レインさんもそうとは限らないのだから。



 













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