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職業:白銀の乙女  作者: 紀美野ねこ
永遠と不可視と無邪気な妖精

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59. 翔子と交代要員

「ここから先はダメにして、この脇道からゼルムさんたちがいた部屋までを公開でいいんじゃないですかね?」


「なるほど。あまり奥まで行かれても困りますし、ここから立入禁止にしましょうか」


 場所は第一階層。今日は美琴さんもついてきて報道陣に公開する範囲をざっくり選定中。

 今日一緒に行動してれば、美琴さんも向こうの言語を話せるようになるのでは? という実験も兼ねてる感じ。

 第六階層の神樹での待ち合わせ時間にはまだ余裕がある感じだけど、今すぐやらなくてもいいので先へと進む。


「翔子さんの家の蔵の地下とは全然違いますね……」


 最短ルートを通って第六階層を目指しつつ、気になる交代要員のことを質問。

 サーラさんは『白銀の乙女たち』を読んでだいたい想像がつくんだけど、フェリア様がよくわからない。妖精だということは聞いたけど。


「フェリア様は実際大した方なのだがな。どうにも普段の行動が子供っぽいというか……妖精は皆そうなので仕方のない部分でもあるのだが」


 なんかこう、私のイメージする妖精っていうと『悪戯好き』みたいな感じだけど、そういう人なのかな? 賢者と呼ばれるくらいなんだから『普段じゃない』時はまともなんだろう。


「私とディアナさんがこちらに来ることになったのをどこかで聞いてー、自分も行きたいって言い出したんだと思いますよー」


「だろうな……」


 マルリーさんはすでに達観してるのかいつも通り。ディアナさんはまだまだ割り切れてないぽくて気苦労が多そうですね。


「放っておくとフラフラといなくなりそうな人なので注意してくれ。言うことを聞かないようなら『ロゼ様に言いつける』とでも言ってやれば大人しくなるだろう」


「本当に対応が子供相手なんですけど……」


 一応、少し先を警戒して進んでいるチョコが呆れてる。小学生かよっていうね。


「しかし、賢者というからには相応の立場の方なのだろう?」


「はいー、精霊魔法と元素魔法の両方を極めてる人でー、魔導都市リュケリオンのトップの一人なんですよー」


「……研究者がトップに立つといろいろあるというのは違う世界でも変わらないのだな」


 と智沙さん。何か思い当たる節でもあるのかな?

 美琴さんがそんなやりとりを理解できてないので、小声で通訳しつつ奥へ下へと進む。


 第四階層からは様子が変わって、また美琴さんがあちこち見て感心し始めた。今までの階とは全然違うもんね。


「そういえば、途中で様子が変わるダンジョンって珍しい気がするんですけど」


「そうだな。複数の機能、このダンジョンなら魔物の回収と神樹の育成だが、それを持つダンジョンはあまり見かけない。

 このダンジョンは古代後期に作られた複合型ダンジョンだと思われるが、それを確かめようにもダンジョンコアのある第十階層はあの状態なのでな」


 なんか専門用語がたくさん出てきたけど『ダンジョンコア』が気になる。名前の通りなんだと思うけど、右下が安地あんちとかだったりするのかな?


「そのダンジョンコアを見ればわかるんです?」


「いや、私にはわからないが、まあ専門家がいるということだ」


 とディアナさん。実物を見てみたい気がするけど、第十階層には近づきたくはないんだよね。

 うーん、埼玉の方はどうなんだろ。今朝の手紙にはあそこがどういうダンジョンなのかの情報はなかったんだよね。

 今日入れ替わりに来る二人に聞いてみるかな……


***


「すごいです……」


 美琴さんが神樹を見上げてうっとり?

 こんなサイズの樹は日本でもほぼ無いよね。それが半分だけっていうのが少し痛々しいけど、樹自体は大丈夫そうでなにより。


「そろそろ時間のはずだな」


 智沙さんがごつい腕時計を見てそう告げると、ディアナさんが頷き、風の精霊魔法を唱える。


「こちらディアナだ。サーラ殿、おられるか?」


「ほいほーい、いるよーん」


 軽い口調が返ってきて、確かにこれは『白銀の乙女たち』で読んだサーラさんだな、と。


「サーラー、そっちにフェリア様はいますかー?」


「うん、いるよ。ちょっと代わるね」


「おーい、ディアナ。さっさと樹洞うろを開けんかー」


 すごい綺麗な声なんだけどセリフがですね……

 ディアナさんはため息ひとつ頭を押さえてるし、なんとなく察した。


「フェリア様ー。こっちには妖精族はいませんしー、魔素もないんですけどー、ちゃんと考えて準備してるんですよねー?」


「しておるに決まっておろう!」


 そう聞こえてくると、マルリーさんはしょうがないなあと言った感じでディアナさんを促す。


「……。では、少し樹から離れてもらえますか」


「うむ、早う頼むぞ!」


 その返事を聞いてまたため息一つ。精霊魔法を唱えると、神樹の樹洞うろが広がっていく。

 一分も経たずに人がしゃがんで通れるほどのトンネルとなった樹洞うろ。先に向こうから来て、バトンタッチしてこっちの二人が帰る予定。


「さて、いろいろと世話になった」


「ですねー。ご飯もお酒もとても美味しかったですしー、お土産までいただいてしまってー」


 二人のお土産はこちらで着ていた衣服一式。

 全て天然素材——綿・絹・麻——でできているので向こうでも再現可能……多分。裁縫技術とかはミシンが入ってるから異世界レベルなんだろうけど、目を瞑ってもらう方向で。


「また来てくださいね」


 チョコの言葉に頷く私と智沙さん。

 ゼルムさんの時もそうだったけど、一緒に仕事した人と別れるのはちょっと辛いかな。


「ワフン」


 ヨミが樹洞うろに向かって吠えたので、向こうからの二人が来たのかな。

 ちょっとしゃがんで覗き込んでみると……


「とぉー!」


「ワフッ!」


 目の前に飛んで来る何かに思わず顔を背けようとしたら、ヨミが目の前に割り込んできてそれをキャッチした。


「ちょっ、ヨミ! ギブギブギブ!」


 ヨミが甘噛みで咥えているのが……フェリア様かな? なんかこうフィギュアみたい。もぞもぞ動いてるけど。


「あー、ごめんね。びっくりさせちゃって」


 え? いつの間に樹洞うろから出てきたの、この人?


「サーラー、ちゃんとフェリア様が粗相の無いように頼みますよー?」


「はー、マジでとばっちりなんだけど……」


 マルリーさんと並ぶと小さいのがさらに小さく見える。

 身長は胸のあたりまでしかなく、いかにもハーフリングって感じのこの人が『不可視の白銀』サーラさんなんだよね?


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