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職業:白銀の乙女  作者: 紀美野ねこ
翔子とチョコと時々ダンジョン
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5. 翔子と手紙の返事

 お昼は塩焼きそばを作って食べた。こういうのは二個入ってるからちょうどいい。

 料理は得意でもないけど、チョコが手伝ってくれるのはとても助かる。


「「ごちそうさまでした」」


 ほぼ同時に完食。この辺はまだまだずれない感じ?

 で、チョコが空になったグラスに冷たいお茶を注いでくれる。


「ありがと」


「午後からは本読めばいい?」


「うん、お願い。私は蔵の整理やらないとね」


 午前中に蔵の整理をするつもりが、完全に斜め上の展開になってしまった。

 私が謎言語を読めるようになるまでは他にすることもないし、手紙の返事だってすぐには来ないだろう。


「なんだか雑用を翔子にやってもらうの気が引けるんだけど」


「まあまあ、適材適所がいいのは同感でしょ?」


 チョコも私なのでもちろん納得してくれる。

 まあ、今すぐって必要もないし、もう少しゆっくりしてからかな。

 そういえばと思い、テレビのリモコンを……チョコが取ってくれる。


「ニュースでいいよね?」


「うん、お願い」


『本日午前九時より都内最大の陥没箇所へと調査に入った陸上自衛隊は……』


 陥没箇所全体がブルーシートに覆われていて、そこへ粛々と入って行く自衛隊の皆さん。さすがに銃火器は持ってないっぽい。


「なんで自衛隊なんだろ?」


「普通、こういうのって事故調査委員会とかいうのだよね」


 あれも政府機関だったような気がするけど国土交通省とかだっけ? いや、事故ごとに違うんだっけかな。まあ、今回のは国土交通省であってそうな気がするし、単純に自衛隊の皆さんは安全確認のためなのかな。


『速報が入りました。都内の陥没箇所へと入った陸上自衛隊が未確認生物と遭遇し、隊員一名が軽症を負ったとの情報です。繰り返します……』


「「え? マジで?」」


 二人揃って思わず声に出てしまう。

 未確認生物って……


「まさかうちの蔵みたいに地下への通路があったり?」


「で、その先で私みたいな魔導人形と出会ったとか?」


「うーん、でも、それなら意思疎通はできるんじゃない?」


「謎言語だと無理かも?」


 確かにチョコの言うように謎言語だったら通じないか。

 チョコが日本語を話せるのは、明らかに私がセットアップしたからだよね。いや、取説には日本語もあったし、そうでもない? ううーん……


「でも、いきなり向こうから攻撃しては来ないよね。まあ人っていうか知能があれば、まずは対話を試みると思う」


「それがなかったから未確認生物ってことなのかな」


『政府は事態を重く見て、再度の調査には慎重な姿勢を……』


 あー、怪我人が出ちゃったらそうなるよね。次はアサルトライフル装備とかになりそう。

 というか、未確認生物とかいう話になると、それこそ米軍とかが出てくるかも?


「うちの蔵の地下に未確認生物とかいないよね?」


「いないと思うけど、奥の扉の先がわからないからね」


「でっかい虫とか出てきたらやだなあ」


 その言葉にチョコも身震いする。

 田舎育ちなので虫は苦手ってほどでもないけど、サイズが大きいのは……無理無理。


「蔵の入口の方も塞ぐ方法を考えといたほうがいいかも?」


「それするとチョコが出入りできないし」


「いや、私は多分だけど工場出荷時にリセットされて封印じゃないかな?」


 うーん、それはそれで悲しい。やっぱり家に一人だと寂しいんだよね。

 チョコは私だから遠慮もいらないし、一緒にいて気が楽だし……


「あまり気に入りすぎると、お別れの時に悲しくなりすぎるよ?」


「いやいや、アライグマじゃないんだから」


 そう言って笑い合う。

 テレビは陥没の話題を終え、天気予報へと変わった。


「じゃ、蔵の片付けをさっさと終わらせるかな」


「重いものとかあったら呼んでね。この体、随分と力持ちなんだし」


「うん、その時はお願い」


 地下通路に落ちたガラクタを拾って上がる時、三箱をチョコに運んでもらった。

 部屋に飾ってあった大盾を持てるぐらいなんだし、っていう本人の申し出があったので試してもらったら、軽々持ち上げてくれました。

 自分も一箱持って上がったけど楽勝? もうちょっと重いかと思ったんだけどね。


***


「これで終わりかな」


 集中してやったせいか疲れもなく。

 大工道具だったり、農具だったり、ガラクタだったりと色々あって楽しかったから?

 ガラクタは粗大ゴミに出そうか迷ったけど、とりあえず価値が分からないので保留。蔵の奥の方へとしまい直した。

 地下への入口の前に大きな棚を置き、そこに使いそうなものをしまっていく。

 これで蔵の扉を開けても入口は見えないし、使いそうなものを置いてあるので不自然さはないと思う。


 さて、チョコは何か面白い本でも見つけたかな。

 棚の裏に回って地下への階段を降りる。

 降りて左手にある蔵書部屋に入ると、椅子に座って真面目に本を読んでいたチョコが私に気づく。


「どう? 面白い本あった?」


「うん。これ『白銀の乙女たち』っていうラノベ」


「ラノベ?」


 チョコは言葉よりも早いしって感じで左手を差し出す。

 私が右手を出して掌を合わせると……


「ラノベだ……」


 内容はわりと普通のラノベっていうか、森の賢者に拾われた女の子たちが黒神教徒とかいうのと戦う話。

 で、その『白銀の乙女』と呼ばれる女の子たちにそれぞれ『永遠』『不可視』『異端』『天空』『慈愛』という渾名が付いていて……


「チョコの、魔導人形ってこれが元ネタだよね」


「うん、そのものっぽい」


 それはちょっと見てみたい気がする。

 取説に書いてあったタイプ変更で各ヒロインに変身するのとか。

 変身ヒーロー、ヒロイン? いや、魔法少女かも? 魔導人形に登録して魔法少女になってよって感じ?


「向こうの部屋で試してみる?」


「うーん、返事が来てなかったら?」


「あ、そうだね。先に確認しよっか」


 蔵書部屋を出て、魔導人形部屋へと移動する。

 手紙を送信してから三時間ぐらいだけど返事来てるかな? 送ってすぐに気がついてくれてればワンチャンありそうだけど。


「私が見る?」


「うん」


 私は椅子に座り、チョコに確認をお願いする。

 クローゼットが開かれると転送の引き出しの取っ手についてる宝石が緑に点滅していた。


「返事来てるっぽいね。開けるよ?」


「うん」


 全部言わなくても伝わるの楽ちんすぎて堕落しそう。

 チョコは引き出しを開けて中身を手に取ると、それを持って私の対面の椅子に座る。


「なんだか気合の入った封筒だし、これって封蝋ってやつだよね」


「だと思う。きっちり推されてる紋章は……なんだろう。狼かな?」


「割らないとダメなんだろうけど、もったいない気がしてきた」


「わかるー」


 とりあえずスマホで写真撮ってから開封することになりました。


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