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職業:白銀の乙女  作者: 紀美野ねこ
翔子とチョコと時々ダンジョン

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25. 翔子と収穫なし

 若干、冷たい視線を浴びつつも第二階層に到着。

 ここは大きめの部屋だけど、上にもあった崖のような壁で半分に区切られている感じ。


「ふむ、この部屋に降りたようだの」


 ゼルムさんが開いた地図を皆で覗き込む。

 第二階層、第三階層も第一階層と同じ構造になっているのでわかりやすい。


「じゃ、この部屋を出れば広い道に出る感じかな。魔物っていると思います?」


「絶対にとは言えんが、まあ、おらんだろう。ワシらが入る前に第三階層までの魔物は駆逐したという話を聞いておったしな」


「なるほど」


 それを聞いてちょっと安心しつつも、ちょっと残念な気持ちに。


「これは今日も出番無し?」


「かもね。でも、油断しないでよ?」


「ん。わかってる」


***


「んー、ここも何もなしかな」


「だね。第二・第三は空振りかなー」


 私たちが今いるのは、第三階層の一番奥になるのかな。第一階層のこっちの世界で入り口になっちゃった部屋の真下。

 ここの真上の第二階層の同じ部屋もそうだけど、今まで見た部屋の四倍ぐらいの、縦横それぞれ倍ぐらいの広さがある。

 確かにこの広さの空間分、ビルの基礎が抜けたら……だよねえ。


「ふむ。残りは第四階層への階段があると思われる場所ぐらいか」


「うーむ、ここより下におった連中なら、早めに上がってくると思うておったんだがな」


 参ったなという感じで頭をかくゼルムさん。

 私でもこの状況になったら、とりあえず外に出るために上の階に行こうと思うし、何かあるのかも?


「とりあえず下への階段に行きましょう。多分、この辺ですよね?」


 チョコが刺すのは、もともと階段があった場所の近く。第一から第二、第二から第三へと階段が生えたのと同じ位置。


「そうだな。そこの様子を見て今日は終わりにしよう」


 智沙さんの言葉に皆が頷き、大部屋を後にする。

 それにしても、なんでダンジョンってこう通路と部屋で構成されてるんだろ。そもそも部屋に何もないのも謎。宝箱の一つもあればいいのに。

 と、同じことを思ってたであろうチョコから質問が飛ぶ。


「ゼルムさん。ダンジョンってどこもこういう感じなの?」


「ん? まあ、この手のダンジョンならちゃんと管理されてれば似たようなもんかのう」


 ゼルムさん曰く、第一階層から第三階層の様子を見るに、地上から魔物を回収する階層なんだろうと。

 回収された分、ダンジョンに魔物が増えるんだけど、それをしっかりと駆除してればいいらしい。

 駆除せずに放置してると、そのうち魔物が溢れてひどいことになるそうだけど……


「ダンジョン自体が駆除はしてくれないの?」


「してくれんな。ダンジョン本体は生物を害さないという原則があるらしいぞ」


 素朴な質問を投げたけど、ゼルムさんは肩をすくめて答えてくれる。

 というか、そんな原則あったんだ。でも、それだと……


「落とし穴とか罠の類は無いんです?」


「……そういう罠がある危ないダンジョンもあることはある」


 滅多にないそうだけど、ダンジョン自体が変質しておかしくなると、即死トラップ満載なダンジョンとかになるらしい。

 今のところ、ここはそういう感じではなさそうだけど、転移してきておかしくならないとも限らないよね……


「本、持ってきとけば良かったね」


「あー、そうだね」


 蔵の地下の蔵書部屋にはダンジョンの本がそれなりにあった。

 東京に出てくるまでに全てを読破はできなかったのが悔やまれる。チョコの言う通り、読めてない本を持ってくるべきだったなー。


「チョコ君、もうすぐだ」


「はい」


 智沙さんが気を引き締めるように伝えてくれる。

 場所は第一、第二とちょっとだけ違い、元々階段があった場所の手前に生えて?いた。


「ちなみにゼルムさん、第四階層の地図は?」


「残念ながら持っとらん。すまんの」


 仕事に必要な分しかもらってなかった感じかな?


「いえいえ。何か知ってることとかあります?」


「ワシらに第三階層までの扉をつける仕事が来たのは、そこまでの魔物を駆逐できたからだ」


「つまり、第四階層以降は魔物退治してる最中だった?」


 頷くゼルムさん。ということは、その退治してる時にダンジョンの半分が飛ばされちゃったってことか……


「翔子、ここ、お願い」


「っと、了解」


 階段の非常用照明のための魔晶石に魔素を注ぐと、暗くて先が見えてなかった階下が伺えて……


「なんか、変じゃない?」


「変だね。先の方は照明がついてない?」


 私たち二人が首を捻っていると、後ろからゼルムさんと智沙さんが階下を覗き込む。


「もう少し明るかった気がするが」


「そうだな。何か詰まっておるのやもしれん」


 ああ、確かに何かが詰まってるって可能性はあるのか。……何が?


「うーん、気になるし、途中まで降りません?」


 とチョコ。もちろん私も同じ意見。このまま帰ると寝付けなくなりそう。

 智沙さんはゼルムさんを見て、ゼルムさんが頷いたので、


「では、行き止まりになっていないかぐらいは確認しよう。明日以降の予定にも影響するからな」


「じゃ、ちょっと見てきます」


「待て、チョコ君」


 サクッと見てこようとしたチョコを智沙さんが止める。

 そして、バックパックからロープを取り出してチョコに巻きつけると、反対側を智沙さん自身に巻きつけた。


「君から二回引っ張ったら、私は思い切り引き上げる。躊躇う必要はないからな?」


「あ、ありがとうございます」


「ふむ。用心するに越したことはないからのう」


 ゼルムさんも頷く。いざとなったら、チョコを引き戻すのに力を貸そうという感じかな。

 チョコが私に目線を寄越したので頷いておく。私の考えとしても「ここは遠慮したりする場面じゃないよね」という気持ちに同意したつもり。っと、そうだ。


「チョコ、これ持って行って、余裕があれば写真撮ってきて」


「あ、なるほどね」


 スマホの写真アプリを起動して渡す。

 電波も届かないし、コンパスも効かないんだよね、この地下。ただの時計がわりに持ってたけど、写真ぐらいは撮れる……はず?


「じゃ、ちょっと見てきます」


 慎重に階段を降りていくチョコ。智沙さんはロープをしっかりと握っていて、私もゼルムさんも何かあったらに備えて身構える。

 降りていくチョコの背中が小さくなっていくが、まだそれなりに見えるあたりで止まり、カシャッというシャッター音が聞こえた。行き止まりっぽい?

 その後も二度ほどシャッター音が聞こえてから、振り向いたチョコがこちらに駆け上がってきた。


「どうだった? やっぱり行き止まり?」


「これ見て。草」


「え? 単芝?」


 アルバムアプリを起動したチョコが、先ほど撮った写真を表示すると、そこに写っていたのは植物でできた壁。

 生垣とかじゃなくて、背の高い葦のような雑草が生い茂っててその先を隠している。


「ここが天空にある城だったら完璧だった」


「はっはっは、どこへ行こうというのかね?」


 目が! 目が! 智沙さんの優しい目が辛いよ!


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