17. 翔子と新装備
「えーっと、結構大きいね」
「はい。遺品のサイズも考えてなんだと思います」
あ、そっか。手紙を基本に考えてたけど、遺品なら鞄ぐらいは普通に入らないと厳しいよね。
それにしても……
「この箱自体はどうやってこっちの世界に?」
「それは私にもわかりません。私の祖父の叔母にあたる人がいて、館長の親友で私も良くしてもらっていたんですが、元々はそのお婆様が持っていたものです」
え、えーっと? 祖父の叔母ってことは曽祖父か曽祖母の妹さんってことだよね? 館長さんの親友?
「館長さん、いくつなの? 私、五十後半だと思ってたんだけど……」
「館長は今年が米寿です。そんなお歳には見えませんよね」
「「えええー……」」
米寿って八十八だよね。数え年だから八十七?
女優さんとかって歳とってもすっごく若く見えるし、セレブってそういうものなのかも……
いや、今その話は急ぎじゃないんだった。
「あ、確認してもらえます?」
「はい」
と美琴さんが宝箱っぽいのを、宝箱っぽくかぱっと開ける。
なんだか、うっすらと光ったような気がしたのは認証機能でもあるのかな?
「何か来てますね。え? これは……」
手渡されたのは封筒と……ホルスターに白銀のハンドガン?
チョコが私の手に渡ったそれをホルスターから抜いて手に取る。
「これってH&KのSFP9?」
「っぽいね。カスタマーサポートさんの趣味なのかな?」
「実はデストロン派?」
「あれはワルサーでしょ」
普通はグロッグとかベレッタとかだと思うんだけど、なぜSFP9? 陸自が採用したからとか? でも、銀色のSFP9とか無いよね?
「あ、あのー……実銃ではないんですよね?」
「うん、銃口ないしね」
チョコが本来は銃口がある部分に指をあて、そこが塞がっていることを確認する。
「こらこら」
一応、グリップにセーフティーがあって、もちろんかかってるんだけど、ちゃんと確認してからにして欲しい。
ともかく、これをどう使えっていう話なのかは手紙の方に書いてあるんだと思う。
「とりあえず部屋に戻りませんか?」
「あ、うん、そうだね」
まあ、あんまり趣味をいじるのも良くないかなってことで、私たちに割り当てられた部屋へと戻ってきた。
円形のテーブルに椅子が二つだけなので、チョコはベッドに腰掛けてもらって、椅子は美琴さんに座ってもらう。
ホルスターとハンドガンっぽいものはチョコに預けて見てもらうことに。誤射しないように十分注意してもらってだけど。
「取説が入ってるといいけど」
封蝋を割って……あれ? なんか手紙じゃないものが入ってる。
先に手紙を抜いて封筒を逆さにすると、ぽろっと落ちてきたのは指輪だった。
「これ、チョコがつけてるのに似てる」
「ん、見せて」
ハンドガンをベッドに置いてやってきたチョコがそれを手に取って自分のと見比べる。
まあ、そっちも任せて手紙の方を読みましょ。
ふーむ、魔導拳銃って言うのね……
「んー、チョコ、その指輪とハンドガン貸して」
「オッケー」
まずは受け取った指輪を右手の中指に。そのまま右手に魔導拳銃を持つ。
親指でマガジンチェンジのボタンを押すと、マガジンがスルッと落ちてきた。
「え? さっきリリースできなかったんだけど?」
「この指輪をはめた状態じゃないとダメだって書いてあった。セーフティーも外せないし、トリガーも引けなくしてあるんだって」
私は落ちてきたマガジンを抜くと、それは弾が入るマガジンではなかった。
手紙の内容からすると、発射される弾の魔法の術式が書かれているらしい。
「つまり、マガジンを変えると違う魔法が撃てるってこと?」
「そうそう。今のこれは氷の銃弾を撃つ魔法だってさ」
美琴さんが全くついて来れてないっぽいけど説明は後で。
今日送られてきたマガジンには氷弾の術式が書かれているらしい。SFP9らしく、九ミリの氷の銃弾を撃つとのこと。
「試射する場所があればいいのにね?」
「実家だったら訓練場に行けば良かったけどね。まあ、明日潜ってから試しましょ」
魔法を使うと魔素を消費するから、それを回復できるうちの地下かダンジョンでないとね。
「あのー、氷の弾って銃弾よりも脆いですよね?」
「うん、そうね。今回は殺傷力は抑え目のを選んでくれた感じかな」
「はあ?」
有効射程は三〇メートルほどで、接近される前に胴体か足を撃って無力化を狙うようにと書かれていた。とどめはチョコに任せる方がいいとのこと。
とはいえ、実銃の初速で飛べばやばい代物なのは間違いない。扱いには気をつけないとね……
***
「「おはようございます」」
「おはよう。体調は問題ないか?」
「「はい」」
翌朝、宣言通りの時間に迎えにきてくれた智沙さん。
今日一日、多分、明日以降もお世話になるのでしっかりと挨拶をする。
「すいません、お待たせしました」
美琴さんもついて来てくれるが、陥没の外側で待機の予定。
一応、連絡を取り合いながら進むことにはなっているけど、地下は電波の届きも悪いらしい。
「では、行こうか」
別邸を出てしばらく歩くと、私たちを乗せていく車が……
「うわ、ハンヴィーだ。実物初めて見た……」
「かっこいいよね……」
「三人は後部座席へ乗ってくれ」
「はい」
促されて後部座席に三人で座る。
智沙さん、ちょっと嬉しそうな顔? この車は趣味なのかな? かなりいい趣味だと思う。お金めっちゃかかりそうなことを除けば……
「では、出発する」
エンジンの重低音が響き、ハンヴィーはゆっくりと進み始めた。
そして屋敷を出て公道に入ったところで、
「二人はその格好で地下へと行くのか?」
と突っ込まれた。
私もチョコも一応動きやすい格好はしているが、長袖シャツにジーンズという「ちょっと散歩してきます」ぐらいの格好だもんね。
逆に智沙さんはプロテクター装備でいかにも警備員という格好。それも現金を運んだりする時に見るような重装備。
「えーっと、現地に着いたら着替えるので」
「そうか。それとその銃は本物か?」
腰の右側、ホルスターに入っているのは昨日届いた魔導拳銃だ。
警備会社の人なら当然気付いてたとは思ってたけど。
「いえ、実銃ではないです。エアガンでもないですが場合によっては使います」
「ふむ、わかった。使う際には声をかけてくれ。わかればいい」
「了解です」
館長さんも言ってたけど、質問とか一切してこないのがすごい。ボディーガードが護衛対象に質問とかしないのは普通なんだろうとは思うけど。
ただ、私の方はいいとして、チョコがタイプ設定したときにどんな顔するのかは気になるかな……




