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職業:白銀の乙女  作者: 紀美野ねこ
ボクっ娘とポンコツとオタク賢者

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142. 翔子とチョコと同期問題

 その後、みんなでわいわいと夕飯を食べて別邸に戻ってきた。ミシャ様たちに先にお風呂に入ってもらうことになったので、私とチョコは食休み。と思ったら……


「翔子さん、チョコさん、少し良いですか?」


「ああ、私の部屋で頼む」


 ニッコリ美琴さんから不穏な雰囲気! 智沙さんもなんか微妙に怒ってるような……


「「は、はい……」」


 智沙さんの部屋でいつものように座り、ヨミは私の足元でくるりと丸まっておねむかな? そして、ニコニコ顔の怖い美琴さんと目を瞑って腕を組んでいる智沙さん……


「翔子さん、チョコさん。お二人は離れ離れになってしまって良いんですか?」


「えっ、いや、別にいいんですけど……」


 さっきもそう答えたし、館長さんも納得してたし?


「しばらくというのは一生という可能性もある」


 智沙さんが目を瞑ったまま、静かに重く言ってくるんだけど、私もチョコも二人がどうしてそこまで気にしてるのかわからない。


「えっと、向こうでお仕事もらって楽しく仕事できればいいかなと」


「うんうん」


 その答えに二人して大きなため息をつく。


「翔子君はチョコ君に会えなくなるのが寂しいとは思わないのか?」


「そうですよ? 三ヶ月ほどとはいえ、ずっと一緒だったのに?」


 えー……、うーん……

 チョコと顔を見合わせて、お互いで考えてみるんだけど……


「どっちも私なので特には……あー、そうか」


「そうそう。美琴さんや智沙さんには、翔子と私が別人だと思われてるから?」


 そういうことなら感傷的になるのもわかる気がする。


「でも、実際に別人じゃないですか。しょうがないことですけど、チョコさんだけお別れなんて嫌ですよ……」


「ああ、私には双子にしか思えないし、どちらもこちらにいて欲しい……」


 ううう、そういう風に言われると嬉しいんだけど困る。チョコもむず痒い感じなのか、お互いどうしよって感じに。

 でもまあ、ここは私がなんとかなんだよね。


「えーっと、向こうの世界に行ってルナリア様に会った時に、チョコは元々はミシャ様のための魔導人形として贈られたものだって聞いたんです。

 その時に『そういうことなら、一件落着したらチョコは返します』って話もしたんですよ」


「結局、ルナリア様もミシャ様も私はチョコのままでいいって話になったんですけどね」


 その話を聞いて驚く二人。うん、まあ、言うほどのことでもないと思ってたんだけど、今思うと伝えておくべきだったかな。


「私とチョコは体は別人ですけど中身は同じですし、向こうの世界に行って楽しくやっていけるんなら、こうなんて言うか……」


「一粒で二度美味しい感じ?」


 それそれ。まあ、こういうボケツッコミができなくなるのは寂しいかも? 脳内でやればいいだけなんだけどね。


「はあ……、でも、チョコさんが向こうで経験したことを、翔子さんは同期できなくなるんですよ? 不安じゃないです?」


「うーん、ミシャ様や白銀の館の人たちがいますし、ルナリア様やフェリア様もいますし、全然大丈夫かなって」


「あー、私が行って向こうであった楽しいことを送れなかったり、翔子が見た秋アニメの感想を受け取れなかったりするのは残念かも」


「それはあるねー」


「ミシャ様に記憶同期のためのメディアを開発してもらって、それを転送の箱でやりとりしてとか?」


「頼んでみよっか? フェリア様とルナリア様を味方につければワンチャン……」


 そんなやりとりをしていると、智沙さんが深く大きなため息をつく。あれ、ちょっと軽いノリにしすぎたかも……


「二人がそれで納得しているなら、私からはこれ以上何もない。ただ、チョコ君が向こうから帰ってこれるようになったら……」


「絶対に帰って来てくださいね? 館長からはチョコさんのための戸籍を用意するように言われてたりするんですから」


「「アッハイ」」


 てか、館長さん、チョコのための戸籍を用意するってどんだけなんですか……


***


 翌日、いざ混沌空間の分離開始! というわけにもいかず。まずは第十階層の測量装置に溜まったデータを取りに行くことに。


 それとミシャ様が試しておきたいことがもう一つあるそうです。私とチョコの同期がどれくらいの精度なのかを。


「これでズレてたら二人でシンクロダンスの練習でもするのかな」


「瞬間、心、重ねて」


 終わった後のオチは無しで行きたいところ。


「まず、これ二人にね。実物は見たことあります?」


「おお、これって!」


「白銀の乙女の皆さんがつけてた腕時計!」


 腕輪に時間を測るための魔法を付与してあるそうだけど、それ以外にもいろいろ機能があるらしい。

 そういや、ケイさんが手紙を送ったり受け取ったりしてたのも、この腕輪の機能だっけ。


「うん、大丈夫っぽいね」


 本人が持つ魔素をごく微量使って動いてるそうです。魔素のない地上に出て普段使いでも大丈夫だという話。


「じゃ、翔子ちゃんはこっちね!」


「チョコ殿はこちらへ」


 場所は第六階層の神樹のフロア。私とチョコはそれぞれフロアの反対端にいる、ルルさんとディアナさんのところに分かれる。


「はい。これね!」


「了解です」


 ルルさんが差し出したのは、同期ズレを確認するための魔導具らしい。ミシャ様作。それを受け取ると準備完了が真ん中にいるミシャ様に伝えられる。


 本番の手順としてはこう。


①それぞれの世界で、第九階層に向かう


②所定の場所に着いたら待機


③ミシャ様から赤い石が転送されてきたらスタンバイ


④緑の石が転送されてきたら魔導具のボタンを押す


 完全に同期して起動できれば、魔導具が正常に動き出して混沌空間は十分もせずにそれぞれの世界へと整理されるらしい。


 効果の持続は一時間弱だけど、行動制限は三十分と聞いている。その間に第十階層の旧パルテームの悪霊を退治する。


 退治後は速やかに菊姫お姉様——菊理媛命様——の勾玉を祀って、②の所定の場所に戻るんだけど、そこは行動限界と相談。無理はしない方向で。


「じゃ、開始しますよ」


 ミシャ様の声が聞こえてしばらくすると、腕時計が光り、赤い石が転送されてきた。ステンバ〜ィ、ステンバ〜ィ……


 また腕時計が光り、緑の石が転送されてきたので、魔導具のボタンを迷わずゴッ! さて……結果やいかに!?


 チャッチャッチャッチャラチャラッララ〜♪


 なんで『ミシシッピ組曲』なの? 異世界横断ウルトラクイズ? ベルグ行き決定! みたいな……


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