3章 本当の始まり
「猛、どうしたの?」僕は聞いた。
「俺は…腹が減っているんだー!」…え?聞かなきゃよかった。でも、僕もお腹空いたし…
「で?あんたの言うこと聞いてる暇のないんだけど。」
おーい!夏奈ー!なんでそんなこと言うんだよ…僕もお腹空いてるから何か食べようかって言おうとしたのにーー!言えなくなった…。
「え~。でも腹減ってんのは慎司も同じだろ?俺ら朝7時からなにも食ってないんだぜ?」
ナイス猛!僕は心の中でそう思った。
「仕方ないわねー。じゃあいつものところに連れて行ってあげるわよ。」
いつものところ?
「いつものところって何?」「え?ああ、いつも盗み食いしてるお店。」
ちょっと!ぬ、盗み食いって…嘘でしょ…びっくりした。(怒)
「え…?何かおかしい?」
当然しょ?って顔でいうなよ…。
「い、いやおかしいだろ!!」猛さんの言う通りでございます。
「え?だって、何も食べなければ死んじゃうじゃん。」「そこら辺の森で食料調達しろよ!」「めんどくさいじゃん。」「はあ?」また喧嘩…でも今回は猛が正しいな。
よく考えてみれば夏奈って物分かり悪いよな…。
「とりあえず西の建物にいこう。そこでご飯をもらえるかもしれないし?」僕は言った。
「う~、分かった。俺、我慢する。」いいぞ!猛!
「じゃあ、出発~!」
~30分後~
「え?…ここ?」目も前にはボロボロの建物があった。コケも生えていたし、つたも伸びていた。
よく見ると入り口の所に『**研究所』と書いてあった。名前は隠れていたが、ここは研究所[だった]のは間違いないようだ。
「うっそ…じゃあこの建物にはもう誰もいないって事?」「そう…なるよね。」そう言いながら猛を見ると、今まで見たことないような顔をして下を見ていた。え!?どうしてそうなったん!とつっこみしたくなった。
「ど、どうしたの?」「ああ…だって、ここに誰もいないなら…飯、食えないじゃん…」ああ!そういえば我慢してたな。
「ああ。そんなこと?大丈夫でしょ。何とかなるよ!」いやー、我慢できないと思うよ?
「そっか…何んとかなるんだ…アハ、アハハハハ」ヤバい!猛の自我が崩壊してきた!
「夏奈!大丈夫じゃないよ!とにかく猛に何か食べさせないと…何か食べ物持ってない?」
「え?何も持ってないけど。」あー!こんな時にー!何かないかー!
「あ!そういえば私、葡萄持ってるよ!」それはありがたい…ってなんで葡萄⁉
「なんで持ってるの?」「ああ、盗んだやつ。」「え!盗んだ物食べさせるの⁉」「そうでもしないと死んじゃうよ!」「う~…気が引けるけど、仕方ないか…」よし!そう言って夏奈は猛に葡萄を食べさせた。そうしたら、猛はすっかり元気になっていた。今思えば何であんなことで騒いでいたのやら。
「よし!気を入れなおして、この建物の中に出発!」さっきまで死にそうになってたのに…って、え!?中に入る?この建物の?
「何で入るの?意味ないよね?そうでしょ、慎司さん」「そうだね。」「え!?意味なくないよ…だって、看板に[こい]って書いてあったじゃん。」「そうだけど…」猛の態度を見て諦めたように。
「はあー…いいんじゃない?あいつ何言っても聞かないから。慎司さんも暇してたんでしょ?暇つぶしに行ってみよう!」と、夏奈が小声でいった。
「まあ…いいか。」こうして、建物の中に入った。
この先、恐ろしい試練が待っているとも知らずに…。
建物の中は、外観に負けず劣らず汚かった。暗いし気味悪いし…ちょ、ちょっとだけ…怖いし。
そう思っていると、パッと電気がついた。全員が息を飲んだ。その瞬間、扉がギギーと閉まった。閉じ込められた!?でも、明かりがついたってことはここには、僕たち以外の誰かが[いる]ということか…?
「おい!どうなってんだ!?」「私に聞かれても分かんないよ!」「とにかく、ここから[脱出]しないと!」
《ガガーピー。ここは藤原研究所だ。ここから出るにはこの部屋に隠されている6つの謎を解いてもらう》‼いきなり、部屋中に老人のような…だが甘い声が響き渡った。誰だ?ここは藤原研究所!?それって夏奈の苗字じゃん…
「おい夏奈!どうなってんだよ!ここってお前の家族が造ったんだろ!」「し、知らないし!」
夏奈は反論した。
「…あ、でも…」と夏奈がぽそっとつぶやいたが、誰も気付かなかった。
《もういいかな?…1問目だ。》こっちの都合お構いなしにそうスピーカーで流れた後、僕達の目の前に画像が映し出された。
「おい!いきなり何を言っているんだ!」
《おいおい、落ち着きたまえ…鬼頭猛君。》!!どうして猛の名前を…。
でもここに誰かがいるということは確定した。猛は驚愕していた。多分、僕と同じことを考えているのだろう。
《そんなに驚かないで欲しいな。まあいい。続きを話そう。1問目は、この部屋から脱出することだ。入口や窓からの脱出は禁止とする》
「おい!いきなり閉じ込めておいて、何が【謎を解いてもらう】だ。そういうのいいからここから出せ!」「そうよ!」「なんなんですか貴方は。」全員で訴えたが、
《うるさい。ならばヒントをやろう。》無駄だった。
「いいから出せ!」《黙れ!あと一回でもワシに逆らったら…殺す。それが嫌なら言うことを聞け! ヒントは、画像だ。》そのあと、いくら夏奈や猛が訴えても男からの応答はなかった。駄目だこりゃ。そう思いながら画像を見ると〖新〗という字の下に人の耳に音符が入ってくⒶと描いてあるイラストと、何かの試合を(多分サッカーの試合)見て盛り上がっている観客がⒷと描いてあるイラストと、部屋の中に何かの絵が飾ってあるⒸと描いてあるイラストが映し出されていた。
「なんだこれ?」「新っていう字は大事そうだな。」「んー、新っていう字以外全てイラストだし…あー!全然分かんない!」「これ、分かる奴いる?」「ん?一番下に何か書いてあるよ?」「なんて書いてあるんだ?」「えーと…≪このイラストで、意味が分からないものを1つ選べ》て。」「問題の説明か。聞いても、謎が解けるってわけでもないしなー。」といろいろ考えた。良くわかんないままだ。
≪まだ分からないのか?まだ簡単な方だぞ?…よし!もう一つルールを追加しよう。制現時間を追加する。タイムは、10分だ。せいぜい頑張りな。》…ち!あいつの声が聞こえたと思ったら、そんなめんどうくさい事を…!
「わかった!」解けた!という声で猛が言った。答えは何なんだ、と思い唾をのんだ。
「で?答えは?」と夏奈。こいつ、猛にだけ態度がキツイんだよなー。
「答えは、Ⓒだ。」と猛はスピーカーに向かって冷静に言った。
≪正解!おめでとう!》男の声がスピーカーから響き渡った。画像が映し出されていた場所を見るとコンクリートの地面から赤いスイッチが出現していた。
スイッチを押すと、玄関とは真逆の方の壁に黒い扉が開いた。
≪次のステージえお進み下さい。》男の声が流れた。だが僕は男が笑っていたのは聞き逃さなっかった。
不安に思いながら僕達は次のステージに進むことにした。