地獄の少年
その少年は最初から燃えていた。
生まれたときから燃えていたから、
誰も近づけなかったし、
産んだ母親は死んだ。
誰にも祝福されなかった。
父親からも恨まれていた。
世界中の誰もが
彼を抱きしめたことがなかった。
少年は、
『地獄の少年』
と呼ばれた。
まるで地獄の業火のような
燃え盛る炎に包まれていたからだ。
近づくだけで むせかえる熱気が、
近づくだけで 肉の焦げる臭いが、
彼から人を遠ざけていた。
どうしようもなかった。
滝にうたれても 消えない炎。
川に飛び込んでも 消えない熱さ。
お風呂に入れば 一瞬で湯が蒸発した。
それは早速 ただの炎ではなく
地獄のように どこに行ってもつきまとった。
まるで生きることそのものが
罪のように 罰のように 償いのように
地獄の業火が 彼を焼きつづけた。
少年の歩いたあとは 地面に焦げたあとがつくから
少年の歩いたあとは フローリングも焦げてしまうから
どこに行っても 疎まれていた。
教室も家も 疎まれて 行けなくて
炎に焼かれても焼かれても
消えなくて 消えなくて
何度自分を刺そうとしても
包丁のほうが 溶けていく。
常に焦げ続ける日々
叫んでも叫んでも 喉が焦げてて 声が出ない。
血反吐を吐いても 涙が出ても
一瞬で蒸発していく 無意味さに
どんなに飽きても 変わらない日々
やがて寿命が尽きるまで
彼は燃え続けた。
どうしようもなかった。
自分では、どうしようもなかった。