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出勤

書き直しました。

短いですが、序盤ですのでこの程度かなと思ってます。

読んでくださっている方も、初めての方も楽しんでいただけると幸いです。

『調査は順調か?』

「ああ、問題ない」

 誰もが寝静まる静かな夜、冷たい風が静かに流れる。

そんな静寂が包む夜に男の声が響いた。

『ではそろそろ戻ってこい』

「了解、だが少し気になる2人組がいる、それだけ見届けたら帰るさ」

 漆黒の夜にすら負けない黒いフードに身を包んだ男は、耳障りな濁声でそう言うと通話を切る。

「ククク、楽しみだ」

 男は不気味な笑みをフードで隠し、その場から瞬時に消える。

 誰もが寝静まる夜、その男は音もなく消え、そして音もなく絶望を撒くのであった。



「おはようございます!」

 沙羅さんに言われた通り、壁にかけられた自分の名前の板をひっくり返す。

俺が出勤した部屋は自警団の人達が仕事を確認したり、報告書をまとめたりする所だそうで、基本は皆ここにいるらしい。

 部屋の名前を待機部屋と呼ばれている。

「おはよう、それが外出してるかどうかの確認になるから忘れないようにね」

「了解しました」

 荒木剛太と書かれた板は、赤字からひっくり返り黒字になる。

赤字が離席、黒字が在席のようだ。

「あなたのデスクを紹介するわ」

 そう言われ沙羅さんについていく。

「んー、なんか所々見覚えがあるような……」

「ああ、ここ自警団待機施設は廃校した学校を改造して作ったものだから、義務教育を受けてれば懐かしさを感じるはずよ」

「なるほど……」

 通りで初めてなのに見覚えがあると思った。

壁とか床とか完全に学校のそれだ。

 そう思いながら歩いていると、途中主任と目があったので挨拶した。

「おはようございます」

「ん? ああ今日が初出勤か、よろしくな」

 主任は縦に並ぶデスク全てを見れるように配置された、部屋の1番端にある大きなデスクに座っていた。

何やら眉間をマッサージしてPCと睨み合っている。

「愛想悪い人だけど、悪い人じゃないから」

 沙羅さんはそう言うと、デスクの椅子を引っ張る。

「ここがあなたのデスク、私の隣よ」

 そこは主任が座るデスクから見ると、3列ならぶデスクのうち、3列目の上から2番目の席に誘導された。

沙羅さんは1番目の席のようだ。

「上に乗ってる段ボールには制服と支給品が入ってるわ、ここにあるリストと見比べて、漏がないかチェックして」

「分かりました」

 俺は渡されたリストをデスクに置き、ダンボールを開ける。

そんな時、聞き覚えのある声が俺を呼んだ。

「おや、荒木くん初出勤かい?」

 その声の主は暁さんだった。

ダンボールを開けて入っていたものを確認していると、それを覗きながら話しかけてきた。

「暁さん、おはようございます」

「うんおはよう、いやぁ懐かしいね、あーこれ最新の自警団手錠じゃないか」

 そう言うと手錠のようなものを取り出す。

「自警団手錠?」

「うん、自警団には逮捕権がないからね、一時的に拘束するための道具が支給されてるんだ、ほら後これ」

 そう言うと今度は紐のようなものを取り出した。

「これは拘束縄、強靭な素材でできていてね、能力者でもこれを引き千切るのは大変なんだよ」

「へぇー、凄いですね」

 俺はそれを袋から取り出して、思いっきり引っ張ってみた。

確かにどれだけ力を入れても千切れそうな感じはしない

「それと……これが自警団手帳、これの機能は警察の手帳と同じだ、これは身分証明になるから無くさないようにね」

「おおお、本当に警察手帳みたいだ!」

「うん、同じ制作会社に頼んでるからね」

 暁さんの話を聞いて、手帳を取り出して中身を見てみた。

そこには俺の顔写真があり、下には自警団のマークだろうか、朝顔のような花の紋章があった。

「……朝顔?」

 朝顔といえば夏の風物詩だが、何故これが紋章なのだろうか。

頭を傾けていると、沙羅さんが説明をしてくれた。

「朝顔の花言葉は硬い絆、これから説明するけど自警団は基本2人1組で行動するバディシステムって言うのを採用してるの、だからお互い信用して動くって言う意味ね、後は警察との協力関係の暗示かしらね……それよりも」

 沙羅さんはそこで言葉を切って、暁さんをみた。

「暁くん、こういうのは私が説明するのだけど?」

「あ、あはは、つい……じゃあまた」

 暁さんはそう言うと足早に帰ってしまった。

どうしたのだろうか、そう思って振り返ると理由が直ぐに分かった。

「うわっ、こわっ!」

 振り返った先には、鬼の形相で睨んでいる沙羅さんがいた。

そ、そこまで怒る事だろうか……。

「……怖いかしら?」

「え? ああいや、あはは」

 しまった、つい感想を口に出してしまった。

流石にここで、はい怖いですなんて言えない。

俺は誤魔化すために、目を逸らしてチェックに戻った。

「そういえば安藤さん」

「……ん? ああ私? ごめんなさい、苗字では呼ばれ慣れてなくて」

「そうなんですか?」

「ええ、安藤は他にもいるから私は皆からは沙羅って呼ばれてるの、あなたも良ければ名前で呼んでくれるかしら?」

「分かりました、沙羅さん」

 女性を下の名前で呼ぶと言うのは、些か抵抗はある。

まあしかし沙羅さんの場合は他の人も呼んでるし、その内慣れるだろう。

「それで何? 何か分からない事あった?」

「あーいや、更衣室どこかなって思いまして」

「ああ、更衣室はここを出て隣よ、私服はロッカーにでも入れてなさい」

「はい、あ、それと自分寮暮らしになると思いますが、制服で出勤していいですか?」

「ん? ああ良いわよ、というか寮であろうと自宅であろうと私服で出勤する人は少ないわね、着ればわかるけどこの制服色々便利だから」

「そうなんですね」

 色々便利……どういう事だろうか。

不思議に思いつつも、俺はその場を後にして更衣室に向かった。



「沙羅さん、着替え終わりました」

 服を着て沙羅さんが言った意味が分かった。

色は全体が黒で、所々白の装飾がある。

結構オシャレだ。

 だが何より凄いのはその軽さだ。

質感はかなり丈夫な感じだが、さっきまで着ていた私服よりも軽い。

しかも着き心地がよく、体によくなじむ。

「あら似合ってるわね、どう? 凄いでしょそれ」

「はい、確かにこれは私服を着るより良いですね」

「そうなのよね、私も何度かその服のまま……ゴホン、何でもないわ、それよりも……」

 何度かその服のまま、の続きは何だろうか。

なんか聞いちゃいけない気がするが、かなり気になる。

そんな事を考えていると、沙羅さんはデスクからカッターを取り出した。

「ちょっと腕出しなさい」

「……? 分かりました」

 カッターを何故取り出したのか分からないが、言われた通り腕を出すと、沙羅さんは徐に刃を出して俺の腕に向けた。

「ちょっ!? 何する気ですか!?」

「危ないから動かないで、性能実験よ」

 沙羅さんは暴れる俺の腕をがっしりと掴む。

かなり強い力で、それを振り払う事が出来なかった。

「これも安全のためよ」

 そう言うとカッターの刃を服の上から俺の腕をなぞるが、それは痛いどころか服が破れる事が無かった。

「……え?」

「防刃機能はしっかりしてるようね」

 なんとこの服、軽い上に丈夫で防刃機能もある。

なんなんだこの素材は、ちょっと怖くなる。

「防刃の他にも防水の機能があるわ、ただ流石に防弾の機能はないから、それは気をつけなさい」

「わ、分かりました」

 流石にこれで防弾の機能があったら驚きだ。

でも本当に素材はなんなのだろうか……。

「さて……じゃあ仕事を始めましょうか」

 沙羅さんはそう言うと、スマホを取り出す。

「スマホ? それが仕事に繋がるんですか?」

「ええ、あなたも支給されたスマホのこのアプリを開いてみなさい」

「これですか?」

 俺は支給されたスマホを開き、掲示板と書かれたアプリを開く。

「うわ、なるほど……」

「もう分かった? そこにあるの全て警察の依頼よ、代わりにして欲しい捜査の依頼ね」

「かなり多いですね……20件くらい……?」

「普段はもっと少ないのだけど、最近は誘拐事件が多発してるからね」

「誘拐?」

「ええ、最近は落ち着いたのだけど……あ、これなんて良いんじゃないかしら」

 そう言われて沙羅さんに見せられたのは、子供の失踪事件と思われる依頼だった。

「じゃあ基本は私が進めるから、あなたは見ておきなさい」

「分かりました!」

 俺は沙羅さんにそう答えて、一緒に依頼者の家へと向かった。

ここで登場したスマホ、PCは現実世界と大体同じ機能を持っています。

しかし違う点もあります。

それは情報です。

この世界には、インターネットやSNSといった情報を簡単に入手できる技術は発達しておりません。

これは国が能力者という存在を隠すためにあえて発展させなかった部分となります。


ただテレビのニュース、新聞、雑誌等はあります。

ここら辺の設定はどこかでまとめて投稿したいと思います。

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