幕間1(沙羅サイド)
少々ボリューム少なめですが幕間です。
「スカウト、成功しました。主任」
「そうか、ご苦労だったな沙羅」
そう報告をした時、主任は眉間をマッサージしていた。
「あの、ちゃんと寝られていますか?」
「ん? あーまあな、この報告が終わったらちゃんと寝るつもりだよ」
主任はアディスを捕まえるために、昼夜を惜しまず常に警察と連携し指示を行なってきた。
その過酷さは眉間のシワと目の下のクマで容易に想像できる。
「それでどうだった、荒木くんは」
「そうですね、皆の言う通り正義感の強い人間でしたよ」
「まあそれもそうだが、再生の異能なんて記録にないからな、是非ともスカウトないしコネクションは持っておきたい」
異能の種類は様々だけど、再生というのは死からの回避では一番強く思いそうだ。
なのに今まで発見できなかった。
だけど私は再生よりも気になるところがある……。
「そうですね……」
「どうした。気になる事でもあるのか?」
私が思い耽っていると主任が質問をしてくる。
「気のせいだと思うのですが、なんとなく彼が私の幻影を見破っていたんじゃないかなって思う時があって……」
「んん? どういうことだ?」
私の異能は幻影、幻影と言っても何種類かあり脳に直接映像を流し込むタイプや、その場で皆が見える映像をつくるタイプがある。
私の場合は後者だ、その場で皆が見える映像を作り出す。
そのため広範囲に幻影を見せられるがその分連携が必要となる。
「私の幻影は周囲の人間にも見せてしまうタイプです、なので包囲を囲む隊員の方には事前に伝えてありました」
そのおかげで隊員たちは急に仲間が消えても私を信頼して動いてくれた。
だけど……。
「荒木くんにはあの時一言も伝えてはいないはずなのに、幻影を使ったところに向かっていくアディスをみて首を傾げていました……」
「考えすぎじゃないのか? おそらく急に人が消えて不思議に思ったんだろう」
「それならいいのですが……」
たしかに考えすぎかもしれない。
そもそもあの時は緊急事態だったためにアディスの意識が向いてるうちに急遽使った雑な物だった。
第三者からみたら不思議に思ったのかもしれない……。
「すみません、お時間とらせてしまいました」
「気にするな、そう言った相談をするのもお前の仕事だ」
そういうと主任は報告書作成に戻った。
確かに考え過ぎかもしれない、私も疲れているのだろう。
ここのところ残業ばかりだったし早く寝てしまおう。
私は帰宅して黒い髪と見せている幻影をとき、白い髪の手入れをして寝た。
※
「いやぁぁ、可愛い子だったね沙羅ちゃん」
「そうですね」
守さんは安藤さんのことを気に入ったらしい。
肉じゃがの大きいじゃがいもを頬張っていた。
機嫌がいいと食べ方にもそれが出てしまう人だ。
そういう時は一口が大きくなる。
沙羅さんか……まあ確かに顔が整っていてドキドキもしたが、ぶっちゃけ怖かった。
優しく接してくれたし怖い事なんてされてはいないが、何故か心の奥底で警戒をしてしまう。
女性の免疫が足りないのかもしれない。
「荒木くんはタイプじゃないのかい?」
「確かに可愛い人でしたが、そう言った感情はよく分かりません」
「そっかぁ、最初うちに訪れた時は荒木くんの彼女かと思ってすごくウキウキしたんだけどなぁ」
残念がるともう興味を無くしたのか、守さんは次の話に移った。
「それで剛太くん、これから自警団で働くみたいだけど無茶をしてはダメだよ。面接の時に言ったけど僕は剛太くんが自分で考えて動いたのなら何も言わない。だけど自分の命を捨てるような事をするなら僕は剛太くんを叱る」
「はい」
この命はお父さんとお母さんが守ってくれた命だ。
この命は守さんが繋いでくれた命だ。
大切にしないといけない。
「うん、分かっているならいいんだ」
そういうと守さんはもう一品の豆腐を箸できり口へ運んだ。
量的に機嫌が良さそうだった。