訪問
この章は基本短めになっています。
次章からは平均3000文字で書かせてもらってます。
「はぁ疲れた……」
今日は色々ありすぎた……。
ただ仕事を探しに外に出ただけなのに、誘拐されるわ突然訳わからない話されるわ……。
やつれた顔をして帰ると時計の針は17時を刺していた。外に出てから7時間も経過している。
いや、あそこまで濃密な経験をすると、俺には7時間しか、経過していないと思えてしまう。
「今日はしんどかったな……」
そんな独り言を呟いていると、守さんがやけに上機嫌で俺を迎えてくれた。
「おかえりー」
「ただいま帰りました。守さん」
今迎えにきてくれたのは俺の義理の父親。
俺を養子に迎えてくれた紫藤守さんだ
「仕事は見つかったかい?」
「んー、今日も空振りでした」
空振りというかそもそも振ってもいない……。
早く守さんを安心させるために仕事を見つけなくては。
今はバイトすら雇ってくれる所は少ない。
「そっかー、あ! 剛太くん、君にお客さんだよ」
「え、お客さん?」
お客さんとは誰だろうか。約束なんてしていないが……。
よく分からないが待たせるのは良くない。
守さんの案内に従い、客間について行くとそこには……。
「こんにちわ、えっと荒木剛太くん、ですよね」
沙羅さんがいた。
白く長い綺麗な髪とお洒落な服。
よく見ると顔立ちも良くなんだかお嬢様のようで、一般家庭の部屋にいるのがとても場違いと感じた。
いや俺が女性に免疫がないから過剰評価しているだけという可能性もある。
なんせ彼女いない歴=年齢だから……。
「えっと……安藤沙羅さんでしたっけ」
「おっと自己紹介が先よね、失礼しました」
そういうと綺麗な動作で椅子から立ち、お辞儀をしながら自己紹介をしてくれた。
「私の名前は安藤沙羅、こう見えて成人してます。もう知ってるかもだけど自警団の人間です」
あまりに綺麗な所作で少し反応に遅れてしまったがこちらも返さなければ。
というか成人してるのか……。
「自分の名前は荒木剛太です。えっと……はい、特にこれ以外は紹介する事がありません……」
悲しくなる、なぜなら冗談ではなく事実だから。
「ふふっ、よろしくお願いします」
少し笑ってくれたおかげで緊張が解けた。
とりあえず座ろう。
俺が座った後、それを確認して沙羅さんも座った。
「お茶を入れてきますね」
「すみません、ありがとうございます」
守さんと沙羅さんが当たり障りない話をし、守さんが部屋から出た後、沙羅さんはこちらを向く。
「単刀直入にいいます、私はあなたをスカウトしにきました」
「スカウト?」
「ええ、もちろん自警団に」
まさか俺の人生の中でスカウトなんて話を聞くとは……そんなふうに思っていると沙羅さんが続けた。
「あなたの実力と正義感、このまま見過ごすには惜しい人材だと思いました、もちろん保護者さん……つまり守さんにも一言いれています」
「ちょ、ちょちょちょまって! 俺の事話したんですか!」
自分でも整理できてない、というかそもそもフワフワしてる状況なのに守さんにあんな事伝えただって!?
「もちろんはぐらかしました、守さんに話したのは、あなたが正義感に溢れた行動をしていた事とその際の手際がとても良かったてこと、まあ迷子の子供を助けたって事にして話を進めましたけど」
手際良かっただろうか……何もしていないが……。
「ま、守さんはなんて言ってました?」
「とても嬉しそうにしていましたし、スカウトに関しても二つ返事で許可がおりました、だから後はあなたの意思だけです」
その時、ちょうど守さんがお茶をいれに部屋に入ってきた。
「どうぞ」
「すみません、2杯目もいただいてしまって」
沙羅さんにお茶を出し俺にもお茶をだした後、守さんは気を利かせたのか部屋から出て行った。
「それで、どうします? 話に聞くと今は休職中みたいですが」
仕事をさせてくれるなら守さんも安心させられる。だけど自警団についてちょっと分からないところが多すぎる。
「スカウトの件、ありがとうございます。ただ僕自身自警団については名前しか聞いた事がなくどういった組織なのか分かりません。少し説明をしてもらっても大丈夫でしょうか?」
「そうですね、じゃあまずはそこから話します」
そういうとお茶を少し飲んだ後、色々と話してくれた。