7月 約束、恋の面影
No.3 約束、恋の面影
夏紀の爆弾発言からしばらくたった夏休みの朝。
夏紀の気持ちをよそに、俺と雅先輩は更に仲良くなった。メアドも教えてもらい、電波で繋がることが出きるようになった。
言うまでもないことだが、俺と雅先輩の仲を噂されるようになり、夏紀の機嫌は最高に悪くなった。
雅先輩からのメールを待ちながら、一階のリビングに下り、テレビをつける。
いつものことだが、父と母は共に仕事で留守、珍しく部活がある夏紀もいないということで、俺は開放感に浸ることができる。
エアコンをガンガンにつけ、アイスを食べようと冷蔵庫に向かう。
しかし、冷蔵庫にアイスは入っていなかった。
仕方がないので、アイスを買いに行くことにする。
近くに村岡悠翔先輩のおばあちゃんの経営する駄菓子屋がある。そこへ行けば、当たらなくとも二本アイスが貰えるのだ。
今日はソーダにするかコーラにするか悩みながら歩いていると、雅先輩らしき人がいた。いつもと違って下を向いて歩いていた。
「雅せんぱーい!!」
俺は雅先輩に手を振り大声で呼んだ。
「なっ...渚クン。」
顔をあげた先輩の頬には、涙の跡があった。
「どうしたんですか?」
先輩に近づくと先輩は俺の胸に飛び込んできた。
どうしたんだろうと思ったが、そのまま優しく抱きしめた。
「なんでかな?....私何かしたかな?」
俺の腕の中で泣き始める先輩はよく分からない事を聞いてきた。
「でも...私負けないから!!」
突然強い眼差しで俺を見つめてきた。
「はっはい....。」
よく分からないが、ひとまず頷いておいた。
「ねぇ...渚クン!!私と都柴祭りに行きませんか?」
何を言い出すのか急に夏祭りの約束をせがまれた。でも誰とも約束していないし。相手は雅先輩だし。
俺はちょっと嬉しくなった。
「ねぇ...ダメかな?」
もう一度先輩は言った。
「もちろんいいですよ。ただし条件付きで。」
俺は雅先輩の耳元で、本当は付けなくてもいい条件をつけた。
俺の中で大きく、しっかりと形を付け始めたこの気持ちはいったい何なんだろうか...そんなことを考えながら、俺はまた強く先輩を抱きしめた。
そんな真夏の小さな小さな約束の日。