表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/5

6月 雨音、初夏の香り

No.2 雨音、初夏の香り


なんやかんやで、俺と雅先輩は一緒に帰ることになった。おっと、説明し忘れていたが、雅先輩と呼ぶことになった。ちなみに俺は、渚くんと呼ばれている。ちょっとカップルみたいになっているわけだ。

しかし、俺と雅先輩がこういう関係(注*名前で呼び合っているだけ)になると文句を付けたがる奴が約一人いる。俺はそんな奴の文句を聞き流しているところだ。

「ふざけんなよなーぎん!!狡い!!うざい!!」

さらりと酷いことをいうコイツは....櫻井少年だ。話の流れからして、直哉以外はいないと思うが....。

「しょうがないだろ?キュートなレディをお守りするのが、スペシャルボーイの役目だから。」

大空に向けて両手を広げながらいう俺を、直哉は睨みつけた。

「なっなんだよ!!」

「じゃあさ。なーぎんの妹紹介してよ?」

はっ?コイツは何をほざいてやがる。

俺の妹は究極のツンデレ野郎だ。(全国のツンデレ好きさんごめんなさい。しかし兄貴はそんな妹に虐められてしまうから嫌なんです。)

「俺の妹なんか彼女にしてどうすんの?」

「俺みたぜ。見た目最高。」

確かに見た目はなかなかだが....。

「お前の好きなタイプじゃ...。」

「紹介しろっ!」

言い終わる前に言われてしまった。

仕方なく俺は直哉を家に迎えることにした。


――――――――――――

「すいません。雅先輩....今日だけ直哉も一緒です。」

雅先輩との待ち合わせ場所、つまり校門について俺が一番にいった言葉はこれだ。

「大丈夫だよ。君が直哉くんね。よろしく。」

俺と二人で帰れないことは悲しんでくれないんすね。まぁ当たり前だが。

「雅先輩よろしくっす。」

直哉は他人受けのいい笑顔で雅先輩に挨拶した。

という感じに会話は進み、美術の話や、学校の先生の話をして時は過ぎていった。


「俺んちここなんですよ。」

俺は先輩に言った。

「じゃあ私の家と近いね。私はそこだよ。 」

先輩が指さしたのは、向かい側のマンションだった。

「いいなぁ。雅先輩と家近いじゃん。」

直哉は何気なくアタックする。

そんなことをしていると、

「あれ...お兄ちゃんに直哉くんそれに金本先輩。何してるの?」

妹が家から出てきた。

「おうっ!!夏紀ちゃん。」

すかさず直哉が声をかける。

夏紀は美術部だから雅先輩のことを知っているらしい。

「直哉くん遊びに来たの?金本先輩は?」

「私は一緒に帰って来ただけだよ。夏紀ちゃんって渚くんの妹だったんだね。知らなかった。」

雅先輩はにっこり笑いながら夏紀にいった。

「そうですよ。それでは先輩さようなら。」

そういって夏紀は、俺と直哉を家へと押し込んだ。

「んっ?私なんか言ったかな?」

そう雅先輩が言ったのが聞こえた。

そして外から雨音がシトシトと聞こえた。

――――――――――――

直哉が帰ってから、俺と夏紀はギクシャクしていた。なんだか夏紀は不機嫌だ。

「なぁ、夏紀?なんかあったか?」

俺は、兄貴らしく聞いた。

「金本先輩...なんで一緒に帰ってたの?それに今日の直哉くん...私のこと好きとか気持ち悪かった。」

気持ち悪かったとか平気な顔していうコイツは、なかなかやる。

確かに直哉は猛烈アタックしていた。まぁ、あっさりスルーされたのは言うまでもないが。

「それになにか不満あった?」

そう聞くと、夏紀は黙った。しばらく静寂が続いた。

「なんで....なんで分かんないかな?」

夏紀が真っ赤な顔をして言った。

「私....私....お兄ちゃんのこと好きなんだよ?」

「へっ!?」

「なのに、なのに...。馬鹿っ!!」

そう言って夏紀は部屋を飛び出した。


夏紀がドアを開けた瞬間爽やかな香りがした。



気がつけば、初夏の足音がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ