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5月 桜色、春の風

No.1 桜色、春の風


金本先輩に出会ってから1ヶ月がたった。結局、可愛い後輩との出会いというものはなく、彼女のいない悲しい日々を送っていた。

そんなことを朝の教室で考えていると櫻井直哉が話しかけてきた。

「お前さ、後輩よりも先輩の方がいいと思わない?」

直哉がこういう話しを振ってくる時は、大抵気になる先輩がいる。

「何?誰かいい先輩いた?」

軽く聞いてみた。はっきりいうと、直哉の好きなタイプは俺と違う。なんというか....天然が好きな奴だ。

「三年の金本先輩とかよくね?なんか天然で、明るくて可愛いねああいうの。」

確かに金本先輩は可愛い感じだ。笑顔が眩しい。

だが、か弱い感じがしないから俺的にはダメだ。泣き虫な感じが好きだから。

「俺は嫌だな。確かに可愛いけど、泣かなそうだから。」

「お前マジ変態だな♪金本先輩だって泣くだろ?」

直哉はケラケラ笑って席に座った。気がつけば一時間目を告げるチャイムが鳴った。


――――――――――――


何故、中学は六時間授業が多いのだろうか。

俺に対する嫌がらせだろうか。

部活をやっていない俺は、早く帰れる。だが、授業時間が長いため、遊んだりは出来ない。悪夢だ。

でも、家に帰っても、煩い親と、生意気な妹の相手をしなくてはいけない。

結局は嫌なのだ。

直哉と授業時間に文句をつけながら、俺は家へと向かった。学校の桜はもうほとんど散っている。だが、甘い香りに満ちていた。

ぼんやりしていると、前に見覚えのある生徒が見えた。

「あれ、金本先輩じゃね?」

直哉が言った。

確かにそんな気がする。金本先輩は部活をやっていないのかな?

「たぶん、金本先輩って部活やってないのかね?」

「やってるよ。しかもすげーらしいぜ。美術部なんだけどさ。コンクールとかで金賞とったんだって。」

金賞とはすごいな。俺なんかと違って、才能がある人なんだな。

「じゃあまた明日なっ!!」

直哉は家が近い。だから此処までしか帰れない。

「またな。」

手を振って帰った。

前を見るとまだ金本先輩がいた。

金本先輩が公園の近くへ行くと、高校生らしい男の人に話しかけられていた。三人のうちの一人に肩を抱かれたり、なんだか危ない気がした。

しばらく見ていると、金本先輩が逃げように逃げられない感じだったので、助けようと思った。何が出来るわけじゃないが、俺も公園を通らないと帰れない。面倒なことに巻き込まれるのは嫌だが、帰れないのだからしょうがない。

「あの...止めてあげてくれませんか?」

俺は高校生にいった。

「何だよ....お前中学生?生意気だな。」

殴る気なのか、指を鳴らし始めたので、金本先輩の腕を掴み、公園の外へと走り出した。

小学校の六年間、サッカーをやっていたため、足には自信がある。

後ろをみると、高校生は面倒くさくなったのか、もう追いかけてこなかった。

走っていたら、いつの間にか学校に戻っていた。ひとまず金本先輩に話しかけてみた。

「先輩....大丈夫ですか?」

金本先輩は顔を上げた。少し涙目になった先輩の顔は、前にあった時よりも可愛く見えた。

「だっ大丈夫。ありがとう。」

金本先輩は無理をして笑っている感じだった。

「いつも話しかけられてるんですか?」

あの高校生は先輩を知っている風な感じに見えた。

「うん。なんかよく分からないけど、いつも話しかけられるの。」

先輩は苦笑した。

それを見て俺は、

「じゃあ俺と一緒に帰りませんか?」

と言っていた。

自分でも驚いた。そんなに好きなわけでもないのに。

「えっ...いいの?私友達いないし、困ってたの。お願いしてもいい?」

友達がいないというのには驚いたが、きっと何でもできる先輩への嫉妬だろうと思った。

「はい。俺で良ければ。」

先輩は嬉しそうに笑った。それをみて胸が熱くなった。


この気持ちは、いったい何なんだろう?


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