4月 プロローグ
No.1 プロローグ
― 中学二年生になって、初めての登校。桜咲く中、俺はあなたに出会った。―
俺、間宮渚は今日から二年生になる。
二年生になるということは後輩ができるわけであり、妹が入ってくるというわけでもある。前者はいいが、後者は最悪だ。
兄弟がいる人は分かるだろうが、学校で先生に怒られたりすると親にばれてしまう。俺はあまりよろしい子ではないので、これから先が思いやられるわけである。
しかし!!可愛い女子が入って来たら、それはもう最高だ。そんなことを考えた俺は、ありがちな廊下の曲がり角でぶつかる的な出会いを期待しなが廊下を練り歩いていた。←はいっ!!ここ注目!!我ながらかなり変態!!
そうしていると、女子の声がした。先生と話しているようだ。俺はそれが終わるのを待ちながら、角でスタンバイ。
曲がってくる瞬間に走って勢いよくぶつかった。
「きゃっ!」
可愛い声で転んでしまった彼女にすかさず手を差し伸べる。
「大丈夫?俺、二年の間宮なぎ...。」
一年生だと思っていたが、上履きの色が赤だ。此処、都柴学院は三年生が赤、二年生が青、一年生が緑と上履きの色で学年が分かるようになっている。つまり、彼女は先輩なわけだ。
「あぁぁ...せっ先輩すいませんっ!!大丈夫ですか?」
慌ててしまっている俺を見て先輩は楽しそうに笑った。
「うん。大丈夫!君こそ怪我はない?」
先輩はスカートを叩きながら立ち上がった。
小柄で、とてもじゃないけど三年生には見えない。
「大丈夫です。本当にすいません。」
俺がそういうと同時に、窓から風が吹いてきた。その風にのって、桜の花びらがひらひらと雪のように廊下に入ってきた。
先輩はそれを掴むと、
「私は三年生の金本雅。後輩の彼女が欲しいなら、しっかり確認してから話しかけなさいよ♪頑張れよ、少年っ。」
と言って、俺の頭に花びらを載せた。
そしてにっこり笑って、小走りで何処かへ行ってしまった。
「金本...雅先輩....。」
俺は静かに囁いた。
静かな春の朝、温かな風と共に俺の前に現れた。
雅先輩と俺の出会いは俺のありがちな作戦から始まった。
もしかすると、この頃から先輩のことが好きだったのかもしれない。