9 鳥の国から 導流提の草とり 1996年12月
すずがも通信101号(1996年12月) 鳥の国から
「いつごろだと、鳥がみられるんですか」
「朝早くのほうがいるんでしょうね」
「やっぱり春の方が多いんですか」」
「あ、たくさんいるよ、まっくろな鳥」
ため息が出てしまいます。秋に入ってから、観察舎から数百羽以上の鳥(カワウは別として)が見られた日というのは、ほんの数日。10月3日から6日まで、わずか4日間でしたが、数百から千羽近いオナガガモの群れが観察舎のすぐ前の鈴が浦に入りました。うれしかったですねえ。千羽の群れなんて、十年ちょっと前だったら、今日はどうしてこんなに少ないの、と言われたことでしょう。でも、ここ数年来ではほんとうに貴重な光景です。トモエガモやヨシガモもまじっていて、大よろこびしました。落ちついてくれなかったのが残念でなりません。
旧淡水池や新設の池にいちおうはカモがいるのですが、なんで観察舎の前にだけ入らないのでしょうか。チュウヒの数が少ないのも気がかりです。チュウヒ、オオタカ、ノスリ。保護区の中に入るとちゃんといるのに、観察舎から必ず見られる、という状態ではありません。
出演料つきでご招待しているセグロカモメ。なぜか、餌場に来るのをためらっています。導流堤の上に昨年砂を入れました。草が生えました。それが気に入らないらしいのです。観察舎の屋上にはずらりと並ぶのに、堤防に下りません。
休館日の11月5日に草とりをしました。よくしげったものだ、と歌でもうたいたくなるほど、各種さまざま、みごとにのびています。砂の厚みは5㎝から30㎝まで。5㎝のところは夏のひでりのため、乾燥に強いスベリヒユが地面にぴったりはりつくか、秋の雨のあとで伸びた小さいのがはびこる程度ですが、30㎝のところはすごい。アカザやメヒシバ、オヒシバのたぐいががっちりと根をはっています。根のまわりには、ダンゴムシやヨトウムシ、甲虫の幼虫などがついていました。植物は偉大です。
3人でのべ9時間ほど働いて、100mほどの区間の草をざっと抜きました。うれしいことに、次の日からセグロカモメが下りてくれました。まだ、ちゃんと餌づいてはいませんが、時間の問題でしょう。導流堤の延長は600m、作業はまだまだ続くことになります。
これまた休館日を利用して、観察舎から見える鈴が浦の岸で、水ぎわのアシをはば1mほど刈って、サギが風をよけたり休めるようにしました。もくろみ通り、アオサギなどが上がってくれています。
野鳥病院の入院ラッシュと事後処理月間がだいたい終わり、月30~40羽程度の入院数に落ちついてきました。草刈りの時期もほぼ終えました。おかげで、こうした余分の作業をこなすことができます。鳥やほかの生きものがこたえてくれる、というのは、最高のごほうびです。
ジョウビタキ、ウグイス、オオジュリン、アオジ、ツグミ。冬の小鳥たちが出そろいました。11月4日には、餌場のところでクイナを見ました。丸浜川でクイナを見るのは、保護したものを放鳥した時を別にすれば、たぶん初めてです。
いよいよ来週から再整備工事の第2期目がはじまります。アメリカでの3ヶ月のボランティア生活を終えて帰国した石川君は、勤務初日が草とり、2、3日目が工事用の見通し線の草刈り。夏の「農繁期」」をひとりで乗り切った佐藤君と、たのもしい相棒2人がまたそろいました。武者ぶるいしている鳥の国です。