80 珍鳥は苦手です 2000年12月
80 鳥の国から すずがも通信125号 2000年12月
珍鳥は苦手です
10月8日n渡来してくれたヘラサギの若鳥。15日の日曜の定例観察会に詰めかけたお客様はなんと105名。ヘラサギ目当てに来てくださるのはうれしいけれど、今ひとつ、私たちにはしっくりきませんでした。観察舎スタッフには、珍鳥ハンターがぜんぜんいないせいかもしれません。「ヘラサギはどこですか」と来られた方々に、この鳥は何?と聞かれた小鳥が、どう見てもごく普通種のオオヨシキリだったことで少々不安になって、ダイサギ・チュウサギ・コサギは見分けられますか、と伺ったら、どうもみなさん自信がない様子。チュウサギとダイサギの見分けはさほどむずかしくないけれど、アマサギとチュウサギは単独でいると、実は私もけっこう迷います。でも、珍鳥と聞いてどっとかけつける方々は、鳥の識別がきちんとできるとは限らないということが初めてわかりました。かなりのショックです。
今、セグロカモメの中に足が黄色いのが1羽います。セグロカモメは種のとらえ方がむずかしく、亜種やら上種やら、国によっても、学者によっても見解が異なります。昨年のアイスランドカモメさわぎから、カモメはカモメ、よくわからない、と、私はおよそ鳥のプロらしからぬふまじめな態度をきめこんでいます。
夏からずっとクサシギが2羽残ってくれています。越冬するかもしれません。昨年よりタシギは今ひとつ少ないし、もう11月上旬をすぎたのに、まだツグミをちゃんと聞いたり見たりしていません。それでも水面にはぱらぱらとカモがいて、アシ原にはぱらぱらとオオジュリンがいて、堤防にはずらりと並ぶカモメ(今はユリカモメ、ウミネコ、セグロカモメ、と3種類が一望できます)、アシ原の上を時おり飛ぶタカ類、いい感じです。
朝、潮がひいた干潟にハマシギがいつもいるのはもっとうれしいこと。さあて、白鳥が来てくれたことだし、この冬は、そして2001年にも、何かいいことがあるかも。
この秋は入院患者さんもいたって多彩。オオタカ・ハヤブサ・トラツグミ(今3羽もかかえこんでいます)・アオバト等々。きわめつけは鎖・首輪・たぶんノミもついたタヌキで、愛敬はあるけれど、やたらかみつきます。飼い主が出なかったらどうしよう。こういう歯がついたやからよりも、鳥のほうがはるかに扱いが楽だということがよくわかりました。やることも、鳥の方がずっと単純明快だし。
野鳥病院は、将来は千葉県の自然保護センター・野生鳥獣救護センターとして発展させたいと、常ひごろ口に出しているくせに、歯があるニホンザルやシカやタヌキなんぞはこわくてとうてい扱えないかも、と、かなり弱気になっています。
秋恒例の員数チェックを無理やりに終わらせました。57種、161羽という結果になりました。水路に放し飼いの鳥が5種類はいるので、60種をこす鳥をかかえていることになります。やっぱり動物園に準ずる施設なんだなあ。これから、キョーフの「ドバトのカルテ合わせ」が待っています。早く原稿書きを終わらせて、ドバト合わせをやりたい!
夏用の金網のドアが木製につけかえられて、野鳥病院も冬姿になりました。治療室にこもることが多い私は、金網ドアの開放感が大好きで、木製ドアで外界と隔てられるのがさみしかったのですが、今年は大黒柱1号氏特製のアクリル窓がつけられて、外が見えます。
毎年、毎月、毎週、何かが少しずつよくなっていくんだ、と気をよくしている鳥の国です。




