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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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8 鳥の国から  カワウ初コロニー おがくず初搬入  1996年10月

すずがも通信100号 1996年10月 鳥の国から


 今年の秋は早いですねえ。8月8日の立秋の前から風がなんとなくひんやりしてきて、ひどく暑い日があったことはあったけど(傷病鳥舎の入口の最高最低温度計がなんと39.5℃を示した日がありました。台風通過後のフェーン現象で、東京がひどく暑かった日の翌日です)、急に涼しくなる日も何度もあったので、熱帯夜が延々と続き、日中の暑さは我慢するけど、せめて夜だけはもうちょっと気温が下がってほしい、と悲鳴を上げた昨年、一昨年とは大ちがいです。

 8月25日の気温低下からは、もう完ぺきに秋。9月に入ると待望の雨もしっかり降って、11日には生まれてこのかた見たこともないほどの見事な秋空を見ました。真昼、澄んだ青空に筆で描いたような美しいすじ雲が浮いて、草も木も人も鳥も、すべてのものの輪郭がくっきりと鮮明に見えて、雲もただまっ白というよりなにか輝きがあるのです。ああ、寿命が伸びる、ってこういうことだな、と、何度も何度も空を見上げていました。

 鳥の渡りの方は、例年通りといいたいところですが、8月中にはシギやチドリがけっこう見られて喜んでいたのに、さーっと波がひいてしまいました。カモの初認は例年とあまり変わりありません。

 衝突して保護されてくるセンダイムシクイなどの入院はほぼ例年通り。そういえば、悲しい事故がありました。9月1日の夜、神宮球場のバックネットに突っ込んだということで、翌日アカエリヒレアシシギが一度に4羽も入ったのです。4羽とも翼の骨折で、骨端が完全に離れており、再起は望めない状態でした。でも自分から餌を食べてくれるので、ほっとしていたのですが‥‥‥次の日、少しでも広い場所に入れてやりたいと、治療室の隣の中部屋に移しました。囲いの中だから、と安心していたのに、保護区の様子を見に行って2時間ほど留守にしていた間にぜんぶ死んでしまいました。元気いっぱいのオナガのヒナの犯行にたぶん間違いありません。注意が足りなかったばかりに起きた事故。気くばりは、やりすぎということがないようです。自分の不注意や無知で死なせる鳥がゼロになるということが、いつかあるのでしょうか。

 カワウが巣を作っています。湾岸道路に沿った緑地の中で、たしか1980年に何本か持って行って植えたニセアカシアがだいぶ大きく育っているところがあります。保護区の水面に面した何本かのニセアカシアが、遠目にもふんで白くなり、望遠鏡で見るといつも100羽をこすカワウが止まっているのがわかります。巣がいくつあるか正確にはわかりませんが、たぶん20~30巣はあるでしょう。木が枯れるとか、いろいろ問題はあるでしょうが、幸い近くに人家があるわけではなし。れっきとした鳥の保護区であるこの場所で、カワウの繁殖を認めてやれないようでは、他のどこに安住できるでしょうか。たんたんと見守ってやりたいと思います。

 9月29日、新木場の(株)佐藤製材のご好意で、おがくずが2トン、どさーっと届きました。禽舎の敷きわらがわりに最適なもので、運賃負担だけですみました。袋詰めにして倉庫の天井まで積み上げてあります。これでたっぷり半年は持つでしょう。干し草作りの時期に雨が続いても、もう大丈夫。しかし袋詰め・運び込み作業が夜8時半まで、きつかった!

 石川君の帰国を待って、みんなゴイサギなみに首を長くしている鳥の国です。




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