76 アシナガバチとのおつきあい 2000年10月
76 鳥の国から すずがも通信124号 2000年10月
アシナガバチとのおつきあい
嫌気性細菌で、体外に毒素を出し、温血動物(鳥や哺乳類)の中枢神経に致命的な中毒症状をもたらすボツリヌス菌。昨年ほどではないものの、今年もボツリヌス菌中毒症状が出ています。今年は昨年とは逆に、ひどくなったらさっさと全体を干上げてトラクターをかける、ということにしています。泥の嫌気的な状態がよくないのだから、空気にさらそう、という考え方で、9月中旬にはからからに干上げるつもりです。いずれにしても、水鳥の保護区管理はまだ手探り状態なのだから、振り子の振幅を大きくして、より望ましい方向を見つけよう、ということ。
それでも、うれしかった。今年は淡水性のシギ、クサシギがなんと一時に5羽までも見られているのです。ソリタリアという種小名からも、この鳥は孤独な種類と思っていました。単独以外で見たことは、私はありません。それが5羽!うそみたい。タカブシギ、アオアシシギ、ヒバリシギ、エリマキシギ、オオジシギ‥‥‥数はまだまだですし、水位調整は胃が痛くなるような作業ですけれど、「合格」マークをくれた鳥がこんなにいて、ほんとうにうれしい。
裏口のらせん階段のすぐ近く、1階の映写室の換気扇カバーの中に、大きなアシナガバチが大きな巣を作っています。まだ種類を調べていませんが、セグロかキアシナガではないかと思っています。それからほんの4,5mの距離、こともあろうに、傷病鳥舎の給湯用のプロパンガスボンベのキャップの中にアシナガバチが巣を作りました。こちらはフタモンのようです。
アシナガバチは礼儀正しくて、よくよくのことがなければ刺したりしない、と信じています。溺れそうなハチを手ですくい上げて刺された東邦大学の風呂田先生の他は、毎日つきあっていても、誰も刺されていません。これまでに私たちが刺された時も、巣に気づかずに踏み込んだり、切りつけたりした時に限られています。ところが、観察会の時に2日続けて、保護区内の竹内ヶ原のところで、お客様がハチに刺されてしまいました。どうしようか、と頭を痛めましたが、とんでもない、すぐに巣をとってしまえ、という声がまったく上がらなかったことは意外で、刺された方には本当に申し訳ないのですが、実はちょっとほっとしました。ハチにはハチの言い分があるわけですから。目下、ロープを張って、危険区域には入らないようにしています。
生きもの優先をつらぬけるかな、と、勝手に希望的観測をしている鳥の国です。




