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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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71 セイタカシギのヒナかえる  2000年8月

71 鳥の国から  すずがも通信123号 2000年8月

   セイタカシギのヒナかえる


「見ましたよ!お赤飯炊かなくっちゃね」 7月2日の園内観察会から戻ってこられた節子さんがうれしそうに言われました。田植えした田んぼのまわりの草をせっせと刈って、カエルが住みやすくなるようにと、ここのところ毎週のように完全武装で来られている町田ご夫妻のことですから、生きものからごほうびが出て当然です。観察会の最後尾を歩いていて、竹内ヶ原でセイタカシギのヒナを2羽見つけられたとのこと。

 このセイタカシギは、例年にも増していわく因縁つき。4・5月の余力のほとんどを費やした営巣場所づくりで、お目当てのコアジサシは産卵してくれなかったようですが、観察舎からよく見える小島岬の「第一現場」でセイタカシギが抱卵をはじめてくれました。ヒナがかえるといいね、と楽しみに見ていた矢先、6月9日に強い南風が吹き荒れました。南風に押された東京湾の潮は、いつもよりずっと高くなります。この日には、ふだんの大潮よりも満潮位が40㎝以上も高くなったようで、セイタカシギの巣があるはずの場所も潮をかぶってしまいました朝いちばんに水門を閉めていればこんなに潮を挙げずに済んだのに、と悔やんでもあとのまつり。

 小島岬では4組が巣を作っていたようですが、1組は翌日から放棄。それでもよく見える場所にいる1組は卵を抱き続けていました。やがてアシがのびて、親鳥の姿は見えなくなりました。

 6月20日ころ、それまでずっと静かだった小島岬で、セイタカシギの警戒声が盛んに聞かれるようになりました。カラスが近づくたびに親鳥が警戒して舞い上がり、激しく攻撃します。明らかにヒナがいる時の行動です。

 親鳥の警戒声は10日たっても聞かれました。そうこうするうちのヒナの確認。翌日にはヒナが3羽いるとの情報。いやあ、よかった、よかった、とみんな大喜び。去年はとうとう1羽しかヒナが育たなかったのですから、営巣場所づくりに時間と体力と化石燃料をかけただけのことはあったのでしょうね。新浄化池の中で早々と産卵してくれた3巣分の卵が、半月もたたずにぜんぶ消えてしまったことから考えても、小島岬の現場はいちおう成功例になるのでしょう。

 うーん、来年はどうしよう‥‥‥秋になってトラクターがけが終わるころになったら、ゆっくり考えればいいかな。



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