63 フクロウの産卵 2000年4月
63 鳥の国から すずがも通信121号 2000年4月号
フクロウの産卵
「フクロウが卵を産んでいるんです」
えっ、ほんと? 片隅にフクロウコーナーを設けた大部屋で、月に一度の大掃除をはじめたばかり。5羽もいるフクロウは、掃除の間段ボール箱にとじこめておくので、掃除開始はまず捕獲から。フクロウを手づかみにするのはなかなかいいわよ、とか、手づかみされるのだけはやめてね、とか、言い合っていたところです。山階鳥類研究所でボランティアをしておられる宮坂さんが、巻いた鋼板の芯に使われている頑丈なボール紙の筒を使って自作された巣箱を寄贈してくださいました。その巣箱が気に入って、よく入っているのが1羽。同じ個体かどうかはわかりませんが、はずした巣箱の中でしっかりすわりこんでいるフクロウ。「卵は1個見えましたけれど」 幸いパニックになって暴れたり飛び出したりする様子はないので、巣箱の入口にタオルをかぶせて覆い、ゴムロープでとめて、掃除の間だけ空き部屋に置くことにしました。
4時間後、敷きわら替えや床の水洗い、やっかいな止まり木の組みたてを終えて、他のフクロウもぜんぶ囲いに戻したところで、巣箱を元の位置に据え、10分ほどたってから覆いのタオルをはずしました。あわてて飛び立ち、網に当たったフクロウが1羽。せっかく抱いていた卵を見捨ててしまうのではないか、とぎょっとしました。でも、何度数えても囲いに出ているフクロウは4羽だけ。巣箱のそばにいた1羽が暴れたようで、これがダンナさんかも。巣箱の1羽はずっと出てきませんでした。これでいちおう、一件落着。無精卵である可能性が高いけれど、万一にもヒナがふ化したら、うれしいだろうなあ。
春めいて華やいで、幾組ものカップルが熱々の求愛行動を見せて、と鳥の国もにぎやかなのはいいけれど、仲よくプールサイドに陣取っているアオサギのつがいが、とても危険な縄張り確保行動をしているみたい。首すじから血を流して死んだ鳥が最近になって2羽も出ています。凶行の現場は見ていないのですが、何とか対策を講じないと。
これまでアオサギの放飼はあまり成績がよくありません。すなおに餌をもらいに来てくれず、死んでしまったり、弱って結局もう一度ケージに戻したり。でも、他の鳥が殺されるのを放置しておくわけには行きません。近日中にアオサギたちを丸浜川へ放すことになるでしょう。ケージの中では健康に飼うことができる鳥だけれど、他の種類との共存がむずかしい。さて、どういう工夫をしたら、放飼した後も健康に長生きさせられるのか。
野鳥病院はまだ課題が山積み。解決ずみの問題なんて、ほんとうにひとにぎりだけ。




