61 じっくり座って 2000年2月
61 保護区はいつも現在進行 すずがも通信120号 2000年2月
じっくり座って
「今、そこにいるんですよ」
えっ、ほんと? あわててのぞいた双眼鏡と、ぎろっとにらんだオオタカの目が、真正面からぶつかりました。翼を半開きにして獲物を隠すようにしながら、食いちぎっている最中です。上池の観察壁から30mほどのところにある松の木の下。足下の獲物はアシのしげみで見えず、オオタカの姿も半分がた隠れているけれど、観察壁に人がいる気配がわかるらしく、こちらをひどく気にしている様子です。
「旧淡水池の方でカモが騒いでいると思ったら、獲物を下げて飛んできたんですよ。たぶん、捕ったばかり」
夜になって見に行ったところ、獲物はホシハジロの雌で、大黒柱1号の一樹君の予想的中。人を気にしてすぐ飛び去ってしまったためか、内臓もほとんどそっくりしていましたが、3日後には跡形もなくなっていました。
この日は大黒柱1・2号氏と新人の高橋さんと、男衆3人で上池のしげみに手を入れていたところ。カヤツリグサ類など、あまり丈の高くない草がぜんたいを覆った湿原状態で、見た目にはなかなかよさそうな環境に見えるのですが、いつ来ても鳥があまりいません。水面がちらちら見えるような感じにしたらどうか、という話は秋からずっと出ていたのですが、どういう手入れをしたらよいのか、なかなか結論が出ませんでした。
結局、観察壁に陣取って、終日じっくり様子を見てから考えよう、ということになり、12月11日の土曜日に、大黒柱1号氏が朝から暗くなるまで「ただすわって見る」という職務につきました。
実は、これは私にとっては大感動ものなのです。観察舎職員が「観察という仕事」のために1日を費やした、というのは、観察舎始まって20数年来、実に初めてのことなのですよ。それだけのゆとりをようやく持つことができたわけですから。見られた鳥は多くはなかったのですが、おかげで、風よけのしげみの重要性など、ポイントがいくつか見えてきました。
真冬の草刈りは、植物のコントロールにつながるわけではないし、一歩間違うと、越冬のための大事な餌や隠れ場をなくしてしまうことになります。デザインをきっちり。事前調査をしっかり。なかなかむずかしい注文ですけれど、「高橋さんのアイデアで、あみだくじみたいな形の刈り方を試してみることにしました」
どう手を入れたのか、ちょっと見にはわからない、という仕上がり。悪くないな、と思っています。あとは鳥の採点待ち。




