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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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56 鳥の国から   大掃除+α   1999年12月  

56 鳥の国から  すずがも通信119号 1999年12月


 員数チェック・大掃除・ペンキ塗り、と大仕事を3つも終えた「鳥の国」のもうひとつの大懸案‥‥‥ゴキブリの燻蒸消毒。さて、どうすればできるか。

「ゴキブリがいると何かまずいんですか」

 ごもっとも。ゴキブリがいたからと言って、それもぞろぞろいたからと言って、夜、小鳥室のドアをあけると、30匹以上が四方八方三十二方向にいっせいに逃げ出すからと言って、どうということはない。多少、板がかみけずられては行くけれど、ネズミの被害の比ではありません。はらはらと飛んで肩に止まったり、パンの箱でかさかさ音を立てたりしたって、彼らには何の悪気も罪もないことは、ようくわかっているのです。ただ単に超々苦手なだけ。ペストとかコレラとかがはやっているのでもないかぎり、ゴキブリを目の仇にする正当な理由はないんだけど。

 それでも、ついに燻蒸消毒に踏み切ってしまいました。三十二方向がこたえていたものですから。傷病鳥舎の廊下と大部屋・中部屋等の間の隙間を延々とビニールシートとガムテープでふさぎ、大型のブルーシートで外壁全体をおおって、鳥のいない半分でバルサンをたきました。初日、小バケツ半分近くもふりつもったゴキブリという成果にいちおう満足しています。来夏、多少は減るかしら。


 余勢をかって、というのか、いくつかの余得ができました。

その1 終生飼育予定の個別室の小鳥たちを、プールの水を抜いた上で中部屋に一時移したのですが、大半は活発に動けるので、そのまま置くことにしました。中部屋は広いので、どの鳥ものびのびして羽もきれいになりました。それでも、個別室から中部屋への移動時と、動作が不自由で、プールに水を入れると溺死しそうな三羽だけを個別室に戻した時、それぞれ一羽ずつヒヨドリが死にました。この二羽はオレンジジュースだけを餌料にしていたようで、どちらもジュースが一日切れた後のことでした。移動による混乱の犠牲者です。

その2 嘴が小さくてワカサギしか食べないため、他のサギといっしょにできず、中部屋に隔離していたアマサギとチュウサギを、大部屋の一部を仕切って収容しました。慣れたころ、思い切って仕切の出入りを自由にしてみたところ、1週間たっても体重が減っていないことがわかりました。あと1週間たっても大丈夫なら、中部屋は小型種と要注意のもの、大部屋はサギ類ぜんぶを含めた水鳥全般、という使い分けができます。

その3 長年にわたって治療室の段ボール箱に1羽ずつ収容してきた盲目のハト類9羽を、ひとつの囲いにまとめて入れてみました。スペースと時間の節約が第一目的ですが、もしうまく運べば、独房よりは多少ハトらしい生活の質的向上が期待できます。ドバトについてはどうにかうまく行きそうです。キジバトは既に一羽殺されており、まだ不安な段階。

その4 これまでほとんど行っていなかった翼切除手術をしたチュウサギ二羽は、今のところ元気にしています。


 新しい試みには失敗がつきもの。でも、責めを負うべき私は痛くもなんともないのに、鳥たちが死んだりけがをしたりする。うまく運ぶとは限らないのに、新しいことをやろうとするのは「業」なんだろうか。もちろん、よかれと思ってやるに決まっています。でも、ねえ。

 大掃除もペンキ塗りも順調に運んだのに、気分はちょっとブルーな鳥の国です。


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