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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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54 ボランティア研修当日

 いよいよ8月31日、ボランティア研修日当日。たくましい先生方4名、当方の男衆3名と計7名の働き手が勢ぞろい。みごとな夏空の下、意気軒昂に出発して行きました。

 前日に激しい雷雨があったものの、干し草はまあまあの状態で、蜂もいなくなったとのこと。作業はきわめて快調に進み、2日間の仕事のはずだった畔は初日の午後には完成。観察壁からの視野をさえぎるヒメガマの群落を水中で刈る追加分の作業もぐんぐんはかどり、先生方が帰られた夕方遅く、スタッフは急きょ作戦会議。いずれ手が空いた時にと思っていた塩ビ管や松丸太運びもやってしまおうということになりました。

「パンももらってきちゃいましょうか。じゃ、ついでだから段ボールも運び出してしまおう」

「鬼! ごめんなさいね。うちのスタッフはみんな無慈悲にしつけられているものだから」

「いいんですよ。仕事は手がある時に勢いで片づけてしまった方がいいに決まってます」

 2日目の夕方、袋につめた干し草をバケツリレーの要領で置き場に積み上げて、2日間のボランティア研修は無事終了しました。ぱさぱさに乾いていた上池観察壁の前にはひたひたと水がたまり、さっそくサギが入りました。三島池の岸には、3日後くらいからカルガモやサギが上がり、毎日数が増えています。現場に行くだけでもアゴを出しそうな暑さの中、さすがにみんなくたくたでしたが、意気は盛ん。

「いやあ、お祭り騒ぎをするだけになって、役にも立たなかったとか、かえって足手まといになるのだけはいやで」

「とんでもない! むこう3ヶ月分くらいの仕事が片づいてしまったんですよ。そうだ、また来週も来てもらえないでしょうか」

 三浦さんをはじめ、安重稔・荒居哲也・後藤俊一先生、暑い中、きつい仕事をほんとうにありがとうございました。翌日は9月1日の始業式。寝坊された先生はおられなかったでしょうか。スタッフ一同とも、とても楽しく刺激になる2日間でした。


 あれから十日。干草を取り込み終えた岬では、トラクターがけも終わり、さっそくカモやサギが集まりました。運び込んだパイプで、気になっていた長靴池から竹内ヶ原への水もれも補修しました。

 さて、目下の目標はいよいよ浄化池のトラクターがけ。9月2日に新鋭の草刈機、オーレック社のハンマーナイフモアが到着しました。この草刈機は、背丈より高い草を刈り倒して、10㎝くらいのサイズにかみこなしてしまうことができます。これまで、肩掛け式の草刈機でまず刈り倒し、その後刃が回転する芝刈り機でこまかくしていたものが、1台の機械、1回の作業でできてしまうわけです。

 お天気も幸いして、新浄化池の四系列(西側)は8月28日の水止め後、水田まわりの3・4・5・6・の4枚の棚田を除き、草刈りと草の処理のすべてを終え、13日後の9月10日から水入れを再開することができました。記録的なスピードです。入れ替えで三系列(東側)の水を止めました。全体の作業を終え、全域に水をまわすまで、気の抜けない時期が続きます。

「オーレック君、いいですよ。すごくはかどるし楽だ」

「よかった。でもねえ、私、これで仕事が楽になるとは思わないんだ」

「え、どうして?、実際、楽じゃないですか」

「だってねえ、みんな、時間や体が空けばすぐに、次にやりたいことを始めてしまうじゃない。仕事が楽になるのではなくて、やりたいことがもっと進められるようになる、ってこと」

 保護区はいつも現在進行。これって、いいのかなあ。楽しいことは確かだけど。




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