5 鳥の国から 大黒柱1・2号さん 1996年6月
鳥の国から すずがも通信98号 1996年6月掲載
4月末、ようやくクビキリギス(*シブイロカヤキリかもしれない)が鳴きはじめました。ジィーーーーッという電線がうなるような大きな声で、暗くなってから道ばたの草むらで鳴いています。この声を聞くと、ああ、春だ、暖かくなったなあ、と思います。ひらひらとコウモリが飛んで、どこからか花の香りが漂ってくるような、そんな春の宵。3月末から4月はじめころ。春宵一刻値千金‥‥‥私にとって、クビキリギスの声とこのことばはほとんどセットになっているものです。クビキリギスは体長が10㎝近くもあるバッタの仲間で、成虫で越冬するため、春いちばんに鳴きはじめるのです。ところが今年は、いつまでたってもクビキリギスが鳴きませんでした。低温のせいでしょう。モンシロチョウ、ベニシジミ、ナミアゲハといった春の蝶の羽化も遅く、4月下旬になってから一挙に色々な昆虫が目につくようになりました。同時期、わが家では蚊取線香のご出座です。
鳥の方はといえば、ツバメは3月21日、コチドリが3月19日、コアジサシは4月19日、オオヨシキリは4月28日。夏鳥の到着はぴったり例年と同じです。いない、いない、鳥がいない、と嘆いているのはこれまでと同様ですが、さすがにゴールデンウィークともなれば、シギやチドリの姿も探せば目につくようになりました。ぴかぴかの夏羽になったキョウジョシギやメダイチドリなど、1羽でもいてくれればそれだけでうれしくなってしまいます。水上をひらひらと舞うコアジサシ、アシ原で鳴きたてるオオヨシキリ、小魚をねらうコサギ。ああ、いいなあ。
さて、鳥の国ではこれまでになくうれしいことがあるのです。一昨年、アメリカの国際鶴財団(ICF)で1年間のボランティアをしてきた石川一樹君、そして昨年、イギリス鳥類保護協会(RSPB)で1年間のボランティアをしてきた佐藤達夫君の二人が、非常勤職員としてそろって働いてくれています。フルタイムではないので、ボーナスどころか各種の身分保障もなく、決して楽観できる情勢ではないのですが、ともかくうれしくてたまりません。20年間、やりたくてたまらなくても手がつけられなかった環境改善や管理作業。ひとつひとつ納得のゆくまで仕事を進めるだけの時間はまだとても取れず、彼らにはたいへん申し訳ないのですが、ともかく手をつけることができた仕事だけでもいくつもあります。いいなあ、と心から思います。石川君の表現を借りれば「仕事に幅が出ましたね」
二人の経験や興味、技術や能力、そしてやる気を生かせるように、できるかぎりのことをしたいと思っています。そうすれば、地球だって動くにちがいない!
先行き不安定ではあるものの、それに、少々調子に乗りすぎていやしないか、と反省してはいるものの、鳥の国、上調子です(鳥は下降線‥‥‥)。楽しみに見ていてください。それより、見に来てください。スコップも長靴も予備があることですし、ご参加をお待ちしています。




