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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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45 鳥の国から  丸浜川への放し飼い   1999年6月

45 鳥の国から  すずがも通信116号 1999年6月


   丸浜川への放し飼い      

4月14・16日にかけて、野鳥病院の大部屋で飼育していた患者さんのうち、コブハクチョウ、カモ類、ウミネコ、アオサギなど、体が大きいものを思い切って丸浜川に出しました。猫や犬にとられたり、泥んこになったり、水の汚染で羽が荒れたり、と色々なことが心配で、ここ数年来、あまり積極的には丸浜川を利用していませんでした。でも、野外復帰ができずに飼育を続ける鳥は毎年ふえて、大部屋は手狭になってくるし、一方では丸浜川の状態はかなりよくなってきて、試してみてもよいのではないか、という話は1年ほど前から出ていたのです。

 むろん、何か目先が変わったことに踏み切るには、それなりの準備が必要です。第1段階は、餌場の下手に堰を作って水位を上げることでした。お正月休みと緑地の手入れで出た松丸太を利用して、堰は無事にできました。水も見た目にはなかなかきれいです。第2段階は、放した鳥が安全に落ちついていられるように、水路の中の浮き餌台を修繕したり、対岸の草を一部刈って上陸できるようにすること。これで生活の場はいちおう確保できたので、マークをつけたり、体重や健康状態をチェックしたりして、20羽以上もの鳥を放しました。

 さて、第3段階がけっこうやっかいだったのです。放した鳥たちに餌をやること。

 餌場のまわりに落ちついてくれるはず、と思っていた鳥たちは、さっさとあちこちに散ってしまって、なかなか餌場にきてくれません。しかたなく、ウミネコやアオサギにはアジを投げてやり、白鳥様にはパンをお届けし、と、ひと手間ふえた給餌を続けることになりました。

 放鳥後1カ月。丸浜川をすみずみまで探検した2羽のコブハクチョウは、ようやく餌場に上がることを覚えてくれました。10羽のウミネコも健在で、時には昨年放したものらしいよく飛べるウミネコまでまざって、11羽がアジをもらいに来たりします。対岸の上陸場所の草が随分伸びたので、近々のうちにまた刈ってやることになるでしょう。予想していたように、大部屋の中では少々しょぼくれていたヒドリガモは、つややかな姿を取り戻しました。幸いに、白鳥たちもとりたてて汚れてはいません。スペースは断然広くて、若草なども食べ放題だし、見たところはみんな大部屋にいた時よりものびのびと過ごしているように見えます。準備段階の布石もまあよかったかな。そのうち、ウミネコが繁殖してくれやしないか、と期待しているのですけれど。


 丸浜川の堰は、もともとは、餌場横手のオタマジャクシの池が干上がらないための方策でした。むろん、水鳥たちの放し飼いをめざしての深謀遠慮もありましたけれど。オタマ池のほうもうまく行きました。うようよと群れていたヒキガエルのオタマに手足が生えて、5月13日のこと、まだしっぽのついたままの極小ガエルが、岸のひとところがまっ黒になるほどびっしりと群がって、上陸しようとしていました。まもなく、ミジンコだけ残して池が空っぽになることでしょう。その前日には、アカミミガメが岸の泥に大きな穴を掘って産卵し、念入りに埋め戻すところが見られています。

 「クマバチにおじぎして通る時期」です。今年はあまり悲鳴が聞かれません。なわばり飛行中の雄で、針がないからこわくない、という宣伝がきいたのでしょう。口コミって意外に強力ですね。

 5月10日、愛鳥週間の始まる日に、毎年恒例となった東京電力の窓ふきボランティアが観察窓の清掃をして下さいました。鳥が少ないのはあいかわらず最大の悩みだけれど、周辺環境、生きものの反応、人間の環、わるくない、と、ちょっと気をよくしている(こういう時はあとがこわい)鳥の国です。



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