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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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42 鳥の国から アイスランドカモメ 1999年4月

42 鳥の国から  すずがも通信115号 1999年4月


   アイスランドカモメ

 ここ数日、雨もよいの寒い日が続いているというのに、観察台や餌場の前には重装備に身をかためたカメラマンやウォッチャーが2,3人ずつねばっておられます。時ならぬ「アイスランドカモメ」ブームが起きているのです。

 もう20年も前から、餌場に集まるセグロカモメの中に時々まじっている初列風切がまっ白なカモメ(私たちはシロカモメと信じていました)がずいぶん小柄だし、シロカモメではなくて、よく似たアイスランドカモメ(大西洋が分布域であり、当時は日本での記録はまだなかった)ではないのか、という話が出ていました。シロカモメとアイスランドカモメは羽色はまったくと言ってよいほど変わりません。種類を見分ける識別のポイントは、アイスランドカモメのほうが小柄でセグロカモメとほぼ同大(シロカモメはふつうはセグロカモメより大きい)であるのと嘴がむしろセグロカモメよりも短めであること(シロカモメの嘴はセグロカモメと同じか長め―体や顔との釣合から見ると、短めか同じくらいに見える)、目ぶちの色が赤いこと(シロカモメは黄色)。

 要するに、見分けるのはそれなりにむずかしいのですよ。トータルでは(標本でも写真でも図鑑でも)アイスランドカモメの方が「かわいい感じ」、シロカモメは「少しごつい感じ」。捕まえて測定すれば(嘴の長さについては測定値がほとんど重ならない)わかる場合が多いのでしょうが、はっきり目で見て違っているのは「目ぶちの色」だけです。

 20年も前から気にしている「シロいカモメ」は、目ぶちが赤でした。でも目ぶちの色までくっきり見るチャンスというのはいつもあるわけではありません。

 目ぶちが黄色い本格的シロカモメというのも、確かに見ています。並ぶとセグロカモメよりどーんと大きいシロカモメの幼鳥というのも、ときどき見られます。でも、セグロカモメより大柄できれいな成鳥羽のシロカモメというのは、観察舎からはまだ見られていないかも知れません。

 毎年見られる「シロカモメ」が、実はアイスランドカモメだった、ということになるかも知れないのです。つまり、観察舎スタッフや常連さんにとっては、ああ、自分はシロカモメとアイスランドカモメの見分けができていないんだ、シロカモメという鳥をライフリスト(自分が見たことがあって野外で見分けられる鳥)からけずらなくてはならないのかも知れない、というわけで、およそ感動モノとはほど遠い話になります。

 カモメなんてわかんなーい、というのが私の結論。セグロカモメの中にカナダカモメがいる、という話もあるし、もう、いやっ。連中はたまに混血だってするし。

 ともかく「シロいカモメ」くんは餌場の常連さんで、毎日ではないけれど、ちょいちょい出現しては、がつがつと出されたパンなどを食べています。20年来、同じ個体が来ているのかなあ、とか、この寒い中で一日待っている方がいるのに、出てこなくて申し訳ないなあ、とか、妙な気分。無責任だけど、もう知らん!

 「農閑期」を利用して、男衆・女衆は展示物を作ったり、パソコンソフトに手を入れたりしています。繁殖期をめざした手入れ作業の開始まで、わずかな平和な時間を楽しんでいる鳥の国です。


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