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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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41 鳥の国から   明暗    1999年4月

41 鳥の国から  すずがも通信115号 1999年4月


   明暗

 野鳥病院のフクロウが卵を生みました。大きさも色(白)もちょうどチャボの卵くらい、形が丸っこいのだけが違っています。でも、生んだあとは誰も構いつけません。狭い中に5羽もいっしょにいるので、巣を作って抱こうという気持にはなれないみたいです。ウミネコの求愛も目だつようになりました。春ですねえ。

 野鳥病院の大部屋は、妙に白々としています。理由は簡単。3月1日にカワウ8羽が日本獣医畜産大学に、カルガモ7羽が筑波の農林省の研究所に引き取られて行きました。あわせて飛べるようになった鳩を何羽か放しました。それだけでも、黒、こげ茶、暗灰色の鳥が減って、カモメ類やサギ類の白や淡灰色が目につくようになったのですが、何たること。その前の週にコブハクチョウの若鳥がなんと続けて2羽も入院してきたのですよ。

 2月21日の月曜、浦安の入船地先で大きな白鳥がけがをしているという連絡が入り、やむを得ず見に行ったら本当にいたので、保護して連れ帰り、既にとれてしまっていた左翼の傷口を縫合、というのが1羽目。次は26日の金曜、八千代市から入所したもの。同じく左翼がどうやっても治りそうもないひどい折れ方をしていたため、切断しました。

 翼切除は大きい動脈を切る必要があり、またわが野鳥病院では麻酔の技術がないので、出来る限り避けていました。血管がちゃんとつながっている翼を積極的に切ることにしたのは、実は今回が初めてに近いのです。止血など少々こわい場面がありましたが、幸いどちらも経過はよいらしく、大部屋で仲良くしています。前からいる雄の大きなコブハクチョウは面白くなくて、最初はかみついたりしましたが、このごろはあきらめたみたい。翼をなくした2羽は、そのうち丸浜川で放し飼いにすることになるでしょう。


 白鳥の翼の手術がまあまあうまく行って、カワウやカルガモも引き取られ、2月26日で春先のトラクターがけもすべて終了し、3月のすべり出しは最高の気分でした。でも、ちゃんとお返しが来ました。筑波に出したカルガモが、移送中にすべて死亡してしまったとの連絡が入ったのです。1羽ずつ袋につめられ、段ボール箱2個に入れて運ぶ、という方法がまずかった。移動中に体温が上がりすぎてしまったのです。

 どうかな、と不安に思った段階で、1羽ずつ別の箱に入れたほうがいいですよ、とか、袋づめだときゅうくつですよ、という意見を的確に、もっとはっきり言わなくてはいけなかった。いつもと同じです。物事がうまく運び、ごほうびをもらうのは私なのに、私の失敗のために負担を強いられ、死んだり弱ったりひどい目に会うのは鳥のほう。

 二度と同じ失敗はしないつもりです。でも、失敗の種はきりもなくあるんです。



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