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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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40 周辺緑地の手入れ   1999年2月

40 保護区の中の池や管理作業等 もろもろのできごと  すずがも通信114号

                     1999年2月

   周辺緑地の手入れ

 あれっ。暗くなってから戻ってきた男衆の防寒服が、点々と白く見えます。

「カワウのふん、じゃないよねえ」

「いやあ、申し訳ないです。ペンキなんです。この防寒服は私専用にします」

 ピンク色の迷彩をほどこした防寒服を着ている人、さあ、誰でしょう。見てやってください。

 湾岸道路や行徳高校に沿った周辺緑地の手入れをするという話を前回書かせていただきました。現況調査を終え、週末からいよいよ伐採という運び。伐採予定木にマークをつけるため、男衆が3人そろって出かけました。手ごろな小さい水性ペイントの缶を探したら、ピンクがちょうど3缶あったので、マークはピンク色に決定。それぞれ分担を決めてマークつけに入ったのですが、運悪く下生えの若木がびっしり生えているところに当ったばかりに、伐採木の幹ばかりでなく、周囲の若木にまでペンキがつき、それで帽子や背中までピンクの点や線が入ってしまった、というわけ。

 保護区の周辺を守る樹林帯なのですから、造林地のような単調な感じや、公園の木立のようにいかにも「きれいに手を入れました」という感じにはしたくありません。それでいて、多少は樹木が生長しやすく、人がいくらか林内を見られるように、林の様子にも変化がつくように、というのが手入れの目標です。

 ピンクまみれの甲斐あって、ペンキのマークは遠目でも、林内が暗くてもよく目だち、伐採作業はたいへん効率よく終りました。梨の赤星病防止のために市内の北部から移植されたビャクシンの木立など、密植のしすぎで、場所によっては半分から3分の2近く切ってもらったところがあります。実生で育った山桜や、どういうわけか存在している竹やぶのまわりなどは、かぶさっている松のうち、勢いの悪いものを間引きました。予定していたように、一見どう手を入れたかわからないけれど、所々は林内も歩けるし、海面を眺められる場所もあるし、特色のある木は目だつようになり、木もれ日がさす場所もできた、と、自然な仕上がりになりました。まっすぐではないけれど、色々な用途に使えそうな松丸太もずいぶんできたし、手をかけただけのことはあった、と、結果に満足しています。


 樹林帯での伐採作業に立ち会う合間に、とうとうがまんできなくて、二十年来にわたってたまったゴミを拾って片づけるところまで、ついやってしまいました。観察舎の軽トラックで清掃工場まで三往復、どうやらほとんどを運び終えました。満足感は十二分に味わうことができましたけれど、人が入らないはずの場所なのに、門の近くなど、1週間もたたないうちに、また弁当がらが散らかっていてびっくり。

 樹林調査、ゴミ片づけ、丸太運び、土のう作り、水路の手入れ、と目標にしていた作業が次々に片づいて、ほっとしています。ほとんど独力で欠真間三角のゴミを片づけておられる武田さんが、強力な助っ人として、お正月休みに作業を手伝ってくださいました。年末に道のゴミ拾いに出たら、ご自分でゴミばさみや袋を用意して、散歩のついでに吸い殻や空き缶をていねいに拾ってくださっている方にお会いしました。ありがたいです。こういう支えがあると、気持がぽっと暖かくなって、その分体が軽くなります。


 年明けからは、いよいよ作業の焦点が竹内ヶ原のトラクターがけに絞られてきました。隣接した新浄化池に水がなかった一昨年秋には、なんということもない作業でしたけれど、今回はやはり手ごわそう。干上がってからからになった部分が広がってきたので、試しに始めてみた1月8日、さっそくぬかるみにはまりました。カニ穴、ザリガニ穴、マスクラット穴、と、水がもれてくる場所がけっこうあって、ふさげないところもあるのです。すぐに目についたマスクラット穴だけはふさぎ、少し水たまりが縮小してきたようなので、遠からずまたトラクターを動かすことになるでしょう。乾くのを待つ間に、旧淡水池沿いに目隠し用のスクリーンづくりを進めています。


 新しく挑戦することが次々に出て来ている間は、体はきついけれど、本当のつらさを味わうことはないんだ。たいへんなのは、頂上が見えないようなゆるやかな登り坂が続く時。いくら押してみても、扉のすきまが開かない時。目標が見えなくなる時。若いスタッフたちにではなくて、自分に言い聞かせているんだな、と思います。むこう5年やそこらは、きっと次から次へと立ち上がってくる目標やピークを越えることに必死で、本当に苦しい目には会わずにすむのではないかな。

 まあ、先のことを今からくよくよ考えても仕方がないので、見た目ではいちばんたいへんだけれど、たぶんいちばん楽しい時期でもある今を乗り切って行きたいと思っています。



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