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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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35 鳥の国から ツツドリ ミニ観察会   1998年12月

35 鳥の国から  すずがも通信113号 1998年12月

   

   ツツドリ

 食い入るような視線が手もとに注がれています。早く、早く、あれ食べたい、おなかがすいたよ。‥‥‥やらないよー、だ。 

 食い入るような黄土色の目が6つ。私はミルワームを選んでいるところ。目玉のヌシは3羽のツツドリです。この秋は渡り途中のツツドリが4羽も入院してきました。半身マヒの2羽は死にましたが、昨年からの1羽も加えて、3羽が室内を飛びまわっています。もう少し上手に飛べれば放してやれるのにねえ。どれもミルワームなら大喜びで自分から食べるのですが、代用食のドッグフードやマイナーフード(九官鳥の餌)はまだちゃんと食べてはくれません。

 今年はミルワームがずっと品薄で、九州の製造元(生きものだから養殖元というべきだろうか)に注文するたびに、半月から1ヶ月、ひどい時には3ヶ月以上も待たされます。それを見越して1カ月くらい前から注文しているのに、今回は最悪。近くのペットショップにおまったく在庫がなく、仕入れの見通しもないとのこと。ふだんはミルワーム7にその他の餌3くらいの割合でやっているヨタカくんには、まず目いっぱい代用食をつめこみ、もう吐き出したい、というそぶりをしたところで、ミルワームをちょっぴりやります。好物のミルワームは吐き出したくない‥‥‥むりやり呑み込んでくれる、というわけ。ツツドリはしかたなく、つかまえて代用食を無理に食べさせる「割り餌(強制給餌)」に戻しました。ツバメが落としたものや、私が見ていないすきにうばいとるミルワームがツツドリたちの唯一の楽しみ。どこかに毛虫の群れでもいないかなあ。

 新入りツツドリの1羽「赤」は、ジュースにつけたパンだけは自分から食べるようになりました。栄養的には問題だけどなあ。「赤」は人なつこくて面白い鳥で、流しの水滴を一つずつていねいに吸いとって飲みます。ふだんでも、葉についた雨粒などをこうして飲んでいるのかしら。


   ミニ観察会

 さて、この11月から、これまで第1・3日曜に実施している観察舎主催の観察会を、毎休日に試してみることにしました。観察舎オープン以来続けている1周約2時間の観察会は、保護区全体をまわり、鳥の多いところや浄化システムをひととおり見ていただくことができるのですが、時間が長いので、案内にも参加にも少々覚悟がいります。もっと気軽にできるものを、というのと、「中には入れないんですか」という残念そうなお客さまの声をどうにかこなしてみよう、というのが、試行中のミニ観察会です。

 初回は11月3日。「30分で終えるとしたら、どう回ればいいかなあ」「Iの6から近い方のトビハゼルートに出て戻るのはどうですか」 ほんとの入り口だけ、保護区の中を歩くのはたぶん200mちょっとです。ま、いいか。何ができるかやってみよう。

 15名ほどと、ちょうど手ごろな人数が集まりました。「短いコースは今日が初めてですので、もしかしたら、ススキやヨシの穂しかお目にかけられないかも知れませんけれど、どうぞ40分ほどおつきあい願います。それからこれはお願いです。今日はとても暖かいので、冬が近い感じではないのですが、生きものたちにとってはすぐそこに冬が迫っています。葉一枚、花ひとつでも、厳しい時期を越すために大事になるかも知れません。採集は、葉っぱ一枚でもご遠慮ください」

 入口の門につくまでにも、堤防ぞいにぎっしり生えたトウネズミモチ、色あざやかなノブドウの実、台風で葉が落ちたために花が咲いた芝生の桜など、見るものはたくさんあります。保護区入口の門の前で、例によって「目をつぶって20数える」をやってもらいました。何が聞こえるか、何のにおいがするか。集中する練習にはこれだけのことがずいぶん効きます。ヒヨドリ、ハクセキレイ、カネタタキなど聞こえてラッキー。

 門を入ってすぐのところのオギの群落はみごとに穂をつけています。さわるとふわふわのオギ、少しちくちくするススキ。手触りで覚えていただきました。鴨場沿いに100mほど歩くと、もう「Iの6」のわかれ道。これから先は4年前に開いたウラギク湿地内のバイパスルートで、2年前に掘った水路に今年はじめから水を通し、この夏からはクロベンケイガニを見るのにちょうどよいポイントになっています。この日は数十匹と少なめでしたが、その他に小魚やアメリカザリガニもたっぷり見られました。

 ウラギク湿地にはトビハゼがたくさんいます。でも、トビハゼが多い東側は観察舎からまる見えで、観察会の人がおおぜい顔を出すのはどうも。アシで人影が隠れる西側にトビハゼを呼ぶことはできないかと考えていました。一昨年、ユンボー(パワーショベル)でアシ原を掘って干潟に泥を積み、トビハゼが好きなやや高めの場所を作りました。今年は近くまで真水(雑排水ですが)の流れが届くようにしてあります。この秋ついに、まさにそのポイントで、トビハゼが見つかったのですよ! 小柄だけど4尾も。どういう環境がトビハゼにとっていちばん好ましいのかはまだよくわかりませんが、定着してくれればほんとうにありがたい。

 残念ながらこの時はトビハゼを見ていただくことはできず、靴が泥だらけになってしまった人もいたけれど、こうした試みの紹介だけはできました。

 さて、もう出口はすぐそこ、というところで、思いがけないものを見ました。海面に浮く頭10㎝くらいの謎の生物。丸い頭に大きな口、とまるでオバQ(毛はないけれど)。十数匹もいて、大口をぱくぱくさせて水面の浮きカスを吸い込むようにしています。正体は、たぶんボラ。潮がさしてきた干潟にわれさきに上がって、藻類などを食べるところはよく見かけますが、こういう餌のとりかたもするんだ。感心して見とれてしまいました。

 30分コースのすべり出しは順調。もっと人に楽しんでもらえて、鳥にも住みよい状態にするにはどうしたらよいか。あれこれチャレンジの鳥の国です。



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