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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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30 鳥の国から  繁殖鳥   1998年8月

30 鳥の国から  すずがも通信111号 1998年8月


 ヤブガラシの花にアオスジアゲハが来ています。キカラスウリの花が堤防の石垣を埋めつくすように咲き、丸浜川岸の実生のトウネズミモチが開花して、あたりに強い匂いが漂っています。特にきれいでもよい香りでもないけれど、蝶や蜂や甲虫がたくさん集まります。堤防から見るとちょうど目の高さに花があるので、昆虫の観察や撮影にはぴったり。どの木もぜんぶ鳥が運んだ種子から育ったもの、それもたかだかこの15年で。生長する緑のありがたさ。

 ギーイ、とコゲラの声が聞こえます。観察舎庭のニセアカシアから飛びたった鳥が、キツツキ類特有の深い波型の飛び方でUFO島を目指して飛び、島のニセアカシアの枯れ枝にとりつきました。今年は間違いなくこのあたりで繁殖しています。ずっと昔に定着したハクセキレイからはじまって、ヒヨドリ、セイタカシギ、カワセミ、チョウゲンボウ、イワツバメ、カワウ、コゲラ‥‥‥新米の繁殖鳥も数えてみるとけっこういるものです。カワセミやヒヨドリは再定着ということになるのかも知れませんけれど。

 市川の中心部にあたる平田にお住まいの方から、目の前でスズメをとった小型のタカの写真をいただきました。ツミの雄に間違いないようです。府中市の東京農工大で繁殖が見つかったのは10年以上も前のこと。その後都内の大きな公園のところどころで繁殖が見られるようになり、千葉県の都市部(船橋、松戸など)でも4年ほど前から営巣例があります。私は野外でツミに出会ったことがほとんどなくて、たしか丹沢で初めて見て感激したのを覚えています。遭遇するチャンスすらなかったツミが、都会の中で堂々と繁殖するようになったなんて、本当にふしぎ。

 7月に入って、ようやく「UFO君」の声をききました。UNKNOWN FLYING ONSEI(未確認飛行音声)です。たいてい2声(時に3声)、トゥリイ、トゥリイと聞こえる澄んだやわらかい声で、初夏から夏の宵、空を飛びながら鳴きます。明るい時にはまず聞かれません。この土地に移り住んで20年以上、毎年必ず耳にするのに正体不明。唯一の目撃例ではバンかカイツブリの飛び方だったそうです。今年は5月も6月も聞くことができず、気をもんでいました。音質からカイツブリだろうと思っていたのですが、湿地がふえてカイツブリは例年より多いのに、声がほとんどしない。やっぱり、ごく少なくなったバンのほうなのかしらん。正体がわからないことこそUFOの面白みなのかも知れないけれど、ずっとわからない宿題のまま、というのはくやしい。

 野鳥病院は例年通りラッシュのさなか。5月のスズメ月間、5~6月のムクドリ月間がすぎた、と思っていたら、7月に入ってからムクドリのヒナが次々に持ち込まれるようになりました。箱のふたをあけると、黄色い口が5つそろって、キャキャキャと大声で餌をねだります。1日中ヒナたちの餌やりをしていると、午後には猛烈に眠くなり、夜に入ると頭がぼーっとしてきます。みんな元気に育っている時は、こちらも元気が出るのですけれどね。たいていは1羽か2羽、明日の命も知れないという弱った鳥がいて、まあ、ほどよく元気と弱気のバランスがとれています。



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