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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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26 鳥の国から  大雪 感謝 新年度・新体制 それでも春  1998年4月

26 鳥の国から  すずがも通信109号  1998年4月


   大雪 

 1998年1月8日、12日、15日、18日、2月10日、15日、3月1日、5日。何の日かわかりますか。降雪の日。よく降りましたねえ。暖冬だということになっているのに、それも、たいてい前日までぽかぽか陽気が続いた後、いきなりどさっと

 今冬はツグミ類の到着がえらく遅くて、いつもはまっさきに食べられる部類のトベラの実が、枝についたままひからびてしまったほど。それでも、大雪のあとには残っていた実がみるみるうちになくなりました。かちかちになって残っていたトベラの実も、このごろ鳥の糞の中で見かけます。そろそろ若芽やつぼみがふくらむ時期。もう一息で飢餓の季節もおしまい。

 雪の重みで常緑樹のトウネズミモチなどの枝がずいぶん折れ、メダケのやぶも地面にぺったり倒れ伏してしまいました。横に長くのびた松の大枝は、曲がったまま上がらなくなりました。道をふさぐトンネルになっていて、1本はそのままにしたのですが、メインルートにかかる1本は泣く泣く切ることに。それでも、いったん倒れた枯れアシや竹は、雪が消えるとまたじわじわと立ち上がってきます。たくましさに感動。


   感謝

 ライオンズマンションにお住まいの武田さんが、お休みのたびに欠真間三角の手入れに独力でがんばっておられます。何十袋ものゴミを拾い、水路を掘り、みるみるうちに視界がひろがってきました。ひとりの力ってすごい、と通るたびにいつも思います。観察舎の富田さんがすぐ下手でカワセミのために水面や小魚をふやそうと、堰をいくつも作っています。保護区の中ばかりでなく、丸浜川をもっと魅力的にしようとがんばってくださる方々。頭が下がります。

 森田昭次さんが持ってきてくださったアカガエル(たぶんニホンアカガエル)の卵から、オタマジャクシが泳ぎだしました。ヒキガエルも産卵をはじめ、ひも状の卵塊がいっぱいになって、餌場の池はまるでラーメンどんぶり状態です。観察舎前のU字溝でも、サカマキガイがはっています。3月5日には、黒地に赤点が二つある小型のテントウムシが、いくつもいくつも桜の幹を上がって行くのを見つけました。春ですねえ。

 

新しい浄化池への本格的な揚水がはじまって、男衆のどちらか一人は毎日必ず保護区をひとまわりして、管理作業や記録や調査をやっています。いながらにして様子がつかめるので、私はもっぱら観察舎で後詰め。野鳥病院は農閑期なので、この際できるだけ苦手なデスクワークをこなしておこう、と努力中。仕事は山積み、いらいらしてくるとつい甘いものに手が出るし、運動量は少ないし、このままだとふとってしまう! 早くきりをつけて、保護区の中の作業に出たいなあ。


新年度・新体制

 4月から、観察舎の勤務体制が少々変わります。夫、嘉彪が1月に満60歳になって、3月で定年。これまでのようなフルタイムでなく、非常勤職員として週に3日の勤務になります。一方、大黒柱1号・2号の石川一樹君、佐藤達夫君の2名がようやくフルタイム勤務(正規職員ではないのですが)になります。このほか、新人の川上正敬さんが週3日、野本裕美さんが午前のみ週3日程度来てくれることになっています。もう少しアルバイトさんが増える予定ですし、頼もしい学生アルバイトの石毛久美子さんもいるし、いやあ、若い助っ人さんたちに囲まれて、おばさんはうきうき。それでも、仕事の元締めをしっかりやらなくちゃ、とか、本格的にはじまる管理作業をどのように計画し、こなして行くのがいちばんベターなのだろうか、とか、過渡期の悩みもいっぱい。

 とにもかくにも、デスクワーク。早く年間計画と、勤務予定の一覧表と、日誌の用紙と、昨年の仕事状況の一覧表と、etc、etcを作成しなくっちゃ。回復した鳥を放し、水質調査のデータ入力(森田昭次さんのおかげでほとんど完了)をやり、4月初めの中国西湖の方々との琵琶湖でのシンポジウムの発表準備をして、あと何をやればいいのだっけ。いやもう、精神的にえらくじたばたしているところ。

 

  それでも春

 野鳥病院の治療室では、ツバメやイワツバメがにぎやかにさえずっています。仲の悪いヨタカとツツドリは、机の上で大口を開けてけんかをしています。きれいに換羽が終わったウソ(いつ放すのがいいのかなあ)は、どこかで飼われているうちに覚えたセキセイインコのさえずりと、自分で創作したメロディをまじえて、ごきげんで歌っています。

 わが家では、新入り縞三毛おばさん猫のマヤーが、先輩猫ぜんぶを敵にまわして、堂々とコタツをひとりじめ。これまでいちばん新入り若輩だった尾長黒白猫のオルカは、マヤーこわさに家に入れず、はんぶん野良猫化して、白いおなかがうす汚れてきました。先輩おば三毛のカスミと尾短黒猫のチョンマは、まあまあふつうに暮らしています。

 例年にまして気ぜわしい3月。でもオタオタしているのは、たぶんオルカと私だけ。意欲も気力もじゅうぶんだし、少々落ちつかないのは、春だからでしょう。なにか失敗をするたびに、「春だねえ」と笑ってごまかす鳥の国です。



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