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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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18 みなと池等々現在進行  ポンプのトラブル  1997年8月

すずがも通信105 1997年8月号 みなと池等々 現在進行


 少々疲れています。夏バテです。6月から30何℃なんて許せません! というのは置いといて、ポンプ疲れです。

 まあ、聞いてください。期待と不安に満ちてスタートを切った新しい広大な棚田には、いまだ水が入れられないままなのです。市川南ロータリークラブが寄贈してくださったトラクターのおかげで、棚田はひととおり耕し終えました。トラクターのかたわらをほんもののアマサギがついて歩く、という感動的な光景も見られました。水が入らないおかげで、少なくとも二組(三組かもしれません)のコチドリの親子が見られ、とてもかわいかったです。それは置いといて、ともかく、ポンプをちゃんと動かせないのです。

 遅れていた分電盤のとりつけが終わり、ポンプを使っていいよ、というはずだったのは5月9日。この日は小さい方のポンプが動かず、修理を終えて試運転にこぎつけたのは13日です。翌日から、まず揚水量がどのくらいなのか、何ヶ所もあるコックをどの程度開けるとどれだけ水が出るか、という水量チェックをはじめました。大きいポンプは最大一日に2000トン、小さいのでは300トンの揚水能力があるとわかったところで、5月26日にいよいよ大きいポンプを動かしはじめました。ところが、運転開始から30時間ほどで、吸い込み口の太いパイプがぺちゃんこにつぶれてしまったのです。パイプの修理をしてもらって、31日に再度連続運転をはじめました。夜も3時間ごとに見回りに行って、水位が下がって空気を吸ったりしないように気をくばりました。ところが、30時間後にまたパイプがつぶれました。水を吸い込む強い陰圧にパイプが耐えられない構造だったのです。 

 しかたなく、大きいポンプの使用をあきらめ、小さい方だけ使って様子をみることにしました。これでは必要な水量は確保できませんが、とりあえず、セイタカシギが餌場にしている上池・竹内ヶ原の湿地の水だけは絶やさないようにしよう、というわけです。水源である湊排水機場はだいたい毎日排水しているので、水位が下がるとポンプは空気を吸って止まります。揚水時間の見当をつけて、その時間帯はポンプを止めるようにタイマーをセットしていますが、排水時間は一定しておらず、週に何度かはポンプがとまり、その都度復旧しています。

 問題はまだまだあったのです。ポンプの吸い込み口には逆流防止の弁がつけてあります。この弁にゴミがはさまると、えらいことになります。パイプに水をさしても流れ落ちて、空気を追い出すことができず、ポンプ揚水ができません。

 6月中に弁にゴミがはさまる事故が三回起きました。そのうち二回は吸い込み口のゴミよけがこわれたためでしたが、一回はカゴが無事なのに起きました。この時のゴミは、長さ7センチ、太さ2ミリのマッチ棒くらいの小枝でした。こんなゴミは、水中に無限にあります。目のこまかいステンレスのザルを2個組んだゴミよけをつけたところ、1週間で目詰まりし、つぶれてしまいました。

 ここ2週間、小さいポンプの弁はひっかからずに動いています。空気を吸ってとまるのはほぼ毎日なので、1日の揚水量は平均100~150トンくらいでしょう。竹内ヶ原、上池、下池までは水がまわります。ただし、新ウラギク川に水が流れ出すまでにはなりません。皆、やけっぱち半分で面白がっていて、次に弁がひっかかったら、カゴ全体を網戸の生地でおおってみようか、と言っています。

 これまで、友の会で10年にわたって使っている水中ポンプでは、こういうトラブルはまったくありませんでした。使い始めのころのゴミづまりは、まわりに大きいカゴをとりつけ、1日1回水を止めて逆流させてゴミを押し流すという方法で解決し、メンテナンス作業は1~2年に1回のオーバーホールだけです。

 今回設置されたタービンポンプでは、毎日必ずポンプの様子を見に行き、週に2,3度かそれ以上も空気抜き(慣れれば10~30分で終わります)をしています。その上、月に1,2回はどぶ池におりて、吸い込み口全体を入れてある大きなカゴのふたをあけて、吸い込み口を引き上げ、掃除をし、弁に詰まったゴミを除き、元に戻す、という作業が現に必要になっています。たまりません。小さいポンプはまだしも、大きいポンプの吸い込み口は、水が入れば50キロ以上もの重さです。

 これではとてもやってられない、無理です、とネを上げました。水中ポンプに切り替えてください、友の会の手持ちのものを借りることができますから、という提案で、県は検討中です。結論が出るまでは、手をこまねいて待つしかありません。この秋の渡りどころか、来春の繁殖期に間にあうように水を入れられるのでしょうか。まあ、待つことには慣れたつもりですけれど、ねえ。

 さて、みなと池では今年は「恐怖のふとんわた(アミミドロの大発生)」も、「ヒシめきあうヒシ」も見られず、平和です。水の透明度が足りないのかも知れません。羽化したばかりのショウジョウトンボを見かけました。ずっと残っているキンクロハジロ君、元気でしょうか。

 そういえば、5月に水を入れたばかりの新しい水車池に、トンボのヤゴがたくさんいるのを見つけました。森田さんと竹内さんが高谷川からホテイアオイをいっぱい誘拐して入れてくださったのですが、それについてきたにしては数が多すぎます。何の種類かな、と興味津々。

 ポンプが動かない間は、水質管理や水位管理にかけずりまわる必要がないので、その分平和です。ものごとは、なにごともよいほうに解釈しなくてはね。それにしても、それにつけても、口惜しいかぎり。


 


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