13 鳥の国から いいことがいっぱい 1997年4月
すずがも通信103 1997年4月号 鳥の国から
「あさって、うかがいたいと思います」 やった!
「助かります。今、仕事は山のようにあるの。あてにしちゃっていいですか?あ、雨だったらお休みにしますけど」
「いっぱいとっといてください。晴れるといいですね」
新人の若手ボランティアさん登場です。古くからの友人の教え子さんで、環境保護に関すること、それも体を動かす仕事がやりたいとのこと。こんなありがたい話はありません。5月のある日、とつぜんはじまる傷病鳥舎のラッシュの前まで、春先のいっときは、わが観察舎の鳥および保護区担当スタッフのかきいれ時。昨年までは棚田の耕耘にただただ必死で、暇さえあればスコップを肩に保護区に向かっていたのですが、今年はユンボー(パワーショベル)くんのおかげで天地返しが終わっています。そのかわり、人力での畔の仕上げをはじめ、「よけいな仕事」「まったくの趣味の世界」じゃないかなあ、と自問しながら、ついやってしまった「アシ原をガマ原に」キャンペーンやら、増やした水路の仕上げやら、去年とちっとも変わらないくらい、やりたい仕事がいっぱいあるのです。まあ、これはいつでもきっと同じですね。入院ラッシュで、他には全く頭も手もまわらない時期を別にすれば、いつでも、いっぱい、やりたい仕事があります。
夜、ぱらぱらと雨がふって、からからの地面に適度なおしめりがありました。朝は申し分のない上天気。10時前、晴ればれとした表情で、23歳の伊藤さんが登場しました。待ってました!いっしょに仕事をする予定の石川君は、道具をぜんぶ用意して、特長(ももまでくる長い長靴)まではいて、いつでも出られる態勢です。午前の部なアシの地下茎とり。午後の部は棚田の畔仕上げ。それなりにきつい仕事ですが、ふたりとも、実に楽しそうにやってくれました。
「これだけ体を動かして仕事をしたのは初めてです。土を掘ると、いっぱい生き物がいるんですね。なんか悪いなあ、と思いながら掘ってましたけど。こういう仕事、やっぱり、好きです。それに、水鳥にはアシ原よりもガマ原の方が都合がいいというのもおもしろかったです」
これにこりずに、また暇ができたら来てね。でも、決して、行かなくちゃ申し訳ない、なんて義務感を持たないでね!
伊藤さんが帰ったあと、そういえば今朝は日食だった、見せてあげればよかったのに忘れてた、と反省しました。
観察舎や保護区の仕事は、色々な場面で、色々な方々から、それもなにげなく助けていただいています。1ヵ月ほど前に、観察舎のゴミ置き場に大きなゴミ袋を置いている方を見かけました。帰られた後でふっと思い当たりました。福栄公園に隣接した「欠真間三角」でゴミを拾ってくださる方がおられるのです。まだお名前どころか顔もちゃんと存じ上げていないのですけれど、この日もゴミ拾いをされたに違いありません。塩浜橋の方面でゴミ拾いをやってくださる方もおられます。職員の富田さんが、カワセミ用の餌場にしようと、駐車場の近くでせっせと堰をつくり、水が常時たまるようにしています。そこに、ボール紙にカワセミの絵を描いて「Keep Clean!」という札を出してくださった方もいます。友の会会員の森田真一郎さんなど、もう何年にもわたって、ほとんど毎日のように、行頭高校までの1キロもの道のりでゴミ拾いを続けてくださっているのです。
カモメの給餌用ばかりか、野鳥病院の魚食性の鳥たちの餌にもなっているアナゴのアラは、週に何回か、アナゴの卸業をやっている魚屋さんが届けてくださっています。もう一年以上にもなるおつきあいなのに、なんといまだにお名前も住所もうかがっていません。なんたること!ご近所の川辺さんをはじめ、パンや古米などの餌を届けてくださる方もおられます。福栄中学からは、もう十数年にわたって、給食の残りのパンをいただいています。こうした無料の餌がなかったら、餌代としての支出は今の10倍くらいになるでしょう。
ありがたいです!ほんとうはいくら書いても書き足りないくらい、ありがたいことがいっぱいあります。
そう、だから、どんなことがあっても、この商売(というのでしょうか?)からは足が洗えないのかもしれません。最高の幸せ、というのか、業というのか、因果というのか、よくわかりませんけれど。
さて、あたりは春一色。ウグイスがあちこちで鳴き、青空を入れた杯のようなオオイヌノフグリの花が咲きました。柳の芽が開き、気の早い桜も1輪見つかっています。湾岸道路沿いの緑地の中には、カワウの一大コロニーができつつあります。2月はじめに95数えた巣が、3月6日になんと211もあったそうです。コロニーに占拠されたニセアカシア林はかわいそうですが、近くには建物もなく、これ以上はないほどの場所選び。暖かく見守ってやりたいと思います。
2月22日、寒風吹きすさぶ釧路航路のフェリー探鳥に出かけたみなさんにお願いして、保護していたコアホウドリを鹿島沖で放していただきました。ちゃんとみごとに飛んだそうです。よかった!




