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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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11 みなと新池現在進行+α  大感謝!ユンボーくん  1997年2月

すずがも通信102 1997年2月号 みなと新池現在進行+α


 年末は大車輪で観察舎のまわりのゴミを拾ったり、傷病鳥舎の大掃除をしたり、棚田の手入れにはとても手がまわりませんでした。1月4日、張り切って出かけました。お正月休みで小さいユンボー(パワーショベル)があいているので、天地返しをやろうというわけです。北風が冷たく、どの池にもカモはあまり見られませんでしたが、棚田のまわりにはベニスズメがたくさんいました。

 11月以来2ヶ月ほど干し上げた棚田の土はほどよくかわき、仕事がしやすいことといったら。まる6時間がっちり働いて、10枚ある棚田のうち5枚の天地返しを終えました。でっかいウシガエルを2ひき、池に放り込みました。冬眠の穴をくずされたのでしょう。下敷きになってつぶれたものがいたかもしれませんけれど、見ないことにしています。タヒバリが1羽、ユンボーのすぐそばまで来て餌を探していました。12月にはゴイサギの若鳥が同じように機械にくっついて、獲物をとっていたそうです。

 それにしても、昨年のように手作業でやっていたら、棚田5枚分の天地返しにはたぶん40~50時間かかっていたはず。休みを返上するのでないかぎり、作業ができるのはふつう午後3時間だけなので、それだけでたっぷり3~4週間かかったことでしょう。ユンボーは耕す作業向きの機械ではないのですが、疲労や筋肉痛もなく働いてくれます。体を使わないので少々寒いのと、1日働いたあと、しばらく乗り物酔いのような状態になったのが玉に傷でした。でも、ありがたい!将来に夢と希望が持てるというものです。

 再整備工事の第2期目もたけなわ。広大な工事現場を見渡して、どんな感慨が浮かぶことでしょうか。

「ショックでした。ぼくの原風景といったら、セイタカアワダチソウの原野でしたもの」

 ごめんなさい。今回の工事で、保護区の本土部のほぼ半分は湿地にかわります。生きものにとって、住みやすい環境になるはずです。それでも、これまでこの中で生きていたアオダイショウやヒキガエル、ハツカネズミほかもろもろの生きものは、命や生活の場を失ったことでしょう。心して働かねば、と思っています。

 広大な工事現場を見渡して、目と鼻の先にせまる管理作業を考えると、最初はただ気が重いばかりでした。どうしたらこれだけの面積ぜんたいを、予定している浅い水たまりの状態に保つことができるでしょうか。水源、ポンプ、パイプライン、水車、草刈り、耕耘、道路維持

水路維持、水位調整、うわーっ。

 希望の灯火が見えてきたのは、小さいユンボーくんのおかげです。ともかく仕事がはかどるし、体力や腕力を必要とせずにできるのです。道路確保や排水路づくりに使ってみて、感動してしまいました。上池で約60mの排水路を掘りましたが、3時間ちょっとで終了。ところが、スコップででこぼこを直そうとしたら、ほんの2、3mの修正に延々1時間の重労働が必要でした。ユンボーでは楽々と掘れて、泥がやわらかすぎるほどだったのに、スコップでは縦横に通るアシの地下茎を三方から切り込んで、ようやく泥がひとすくい持ち上がるという状態。

 草刈用のジョイントを備えたトラクターを手に入れれば、広大な現場とはいえ、きっとこなせる作業量だ、という自信と展望が持てるようになりました。




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