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現在進行 鳥の国 1  作者: 蓮尾純子(はすおすみこ)
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10 湊新池現在進行+再整備工事ニュース  百合が浜の小学3年生たち  1996年12月

すずがも通信101号 1996年12月 みなと新池現在進行+再整備工事ニュース


「あらっ、落っこちちゃったの?」

 前のほうで、腰まで水につかっている子がいます。ああ、ちょうど水路で深くなっているところだった。10月といっても半袖が気持ちよいほど暖かい日だけど、あらあら、まあまあ。

 塩浜小学校3年の授業で、日を変えて1クラスずつ保護区の中を見学するのに付き添って行った時のこと。みなと新池の先の昨年度の再整備工事で完成した2つの池が、長雨も手伝って、満水状態になりました。水にかこまれた中を歩くのはおもしろいにちがいない、と、佐藤君が土のうを積んで、飛び石のようにして渡るコースを作ってくれました。みんな、こわごわ渡っていたのですが、2つの池をつなぐ水路は深いのです。

 落ちた男の子は、先に行くみんなを見送ってから、べそもかかず、平然と着替えにかかりました。よし、えらいぞ!

「パンツの替えは持ってこなかった」

「うーん、でもズボンははきかえたほうがいいんじゃない?」

 百合が浜に出ていた生徒たちに追いついて、またまたびっくり。水着に着替えて泳いでいる子がふたり。着替えを持ってないのに泳いだ子がひとり。決してきれいといえない保護区の干潟や海でも、みんなの生き生きした様子はどうでしょう。

 夢中になって泥を掘っている小グループがいます。1ヶ所だけにしてください、とあらかじめ先生にお願いしてありました。もちろん、採集や持ち帰りは止めてあります。黒い泥の中からは、大きなオキシジミが次々に出てきます。みんな、泥がついてもへっちゃらです

 百合が浜で小一時間ほど遊び、とった貝やカニはみんなで見てからもとに戻し、足を洗ったり、着替えをして出発です。ぬれるのやよごれるのは覚悟の上らしいけど、けがをした子はいないかしら。

「貝で足を切っちゃった。でも、もう血は止まってるから平気」 うわーっ。昨今の小学3年生というのは、こんなにたくましい生きものだったんだ。

 生まれて初めて保護区に入った小学生たちに付き添ってみて、保護区はこんなにすてきなところだったんだ、と新鮮な目で見直すことができました。もっともっとこんな機会を作れたらなあ、と思う反面、少々くたびれました。先生方の下見のご案内はなんとか仕事時間中にできたのですが、3クラス、3日間の見学の付き添いは、私や主人の休みの日を利用するしか時間がとれなかったのです。それに、保護区の面積は限られています。多人数の利用があるとしたら、生物への影響も無視できません。さて、うーん。

 みなと新池の棚田では、今年はホテイアオイが大して大きくはなりませんでした。オモダカやミズアオイのほか、まだ名前を調べていない種類など、色々な植物がおいしげっています。池本体ではヒシがはばをきかせ、トチカガミはむしろ少数派になっていました。マコモやガマも手堅くのびています。新しい池2面(百合が浜新池、北池新池という名前はあんまりです。はやく呼びやすい名をつけないと)(註:現在の百合池、三島池)はほぼ満水で、作られた島はぜんぶ水没しています。それでも、もともとの地盤の高さまでは水は上がっていないようです。満々たる水に囲まれて、みなと新池のサワトラノオやシロバナサクラタデはいたって元気。春に新設の池のふちに森田さんが植えられたヒメガマの群落もなかなかよい感じ。カモの群れが入るようになりました。この調子です。


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