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悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。  作者: 金田のん
第4章 入団までの1年間(3)、グラナダ迷宮と蓋をした私の思い
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98:就寝時間

(ずっと探索していた筈なのに、いいにおいがする・・・)



マクシムに急に抱きしめられ、その胸に顔をうずめながら私はそんなとりとめのないことを、ぼんやりと考えていた。もう何が何だか分からなくなって精神の許容量が・・・限界が突破してしまったのだ。

ちなみに私の中の貴族令嬢・レティシアは、声にならない叫びをあげた後、気絶してしまったかのように沈黙を保っている。


呆然と見上げると、ちょうどマクシムも下を向いたところだったのだろう・・・・私と目が合った。



「・・・っっっ!」


「・・・・・・・」



途端にバッと目線を反らされた。



(・・・いや、確かに私はいま兄・<フレデリック・フランシス>のふりをしているけど、それはないんじゃないか?)



その反応を「男同士で抱きしめ合う趣味はなくてイヤなのだろう」と漫然とそう思った。だけど、そもそもマクシムから抱きしめてきたのだから、違う意味なのかもしれない。

マクシムの様子を訝しげに思いながらも、少し冷静になった私は、アルフレッドに目線をやる。


彼は、「チッ」と舌打ちをしたかと思うと、親指で先ほど焚火をしていた傍近くを指差した。



「本当にその腕輪(・・)厄介だな。おいっ、三人で寝るんなら、あそこにするぞ。マントもあそこにある。さすがに使わなきゃ迷宮の中とはいえ、寒いからな」


「・・・・?」


「分かっている」


(いや、私は全く分からないぞ。なぜアルフレッドとマクシムの間では、三人で当然(・・)寝ることになっているんだ!?まぁ、ベルタに言われたからだろうが、私は寝るつもりはないからな?)



心の中でそう叫び、実際に一緒に寝るつもりなどないことを示すために、マクシムの腕の中から出て、抗議をしようと力を入れる。


だけど、全く彼の腕から出られない。私が身体強化魔法を使って力を入れたのと合わせて、マクシムが私より強い力で抱きしめたのだ。


密着がさらに激しくなり、自然と「カアッ」と顔が赤くなる。


しかし、私は気づいてしまった・・・・・もしかしてマクシムは・・・・「私を抱きしめているんじゃなく、私が一緒に寝るのを嫌がると予測して、腕を使って拘束した(・・・・)だけなのではないか・・・・?」ということに。


愕然としていると、私がこれ以上抵抗しないと思ったのか、マクシムは私の背中に左手を沿えたまま、右腕で私の膝裏をかかえて、持ち上げた。


・・・・・いわゆるお姫様抱っこの姿勢だ。


思わず腕で顔を隠し、下を向く。・・・・顔が先ほどの比じゃないくらい真っ赤になっているのが、自分で分かるから。兄の振りをしているのに、おかしい顔をしている自覚があった。



恋人(ベルタ)に三人で寝るように言われたから、それに従おうとしているのか・・・?律儀だけど、それは人としてどうなんだ。マクシム・・・・)



心の中で声にならない彼への罵詈雑言を並べ立てていると、いつの間にか地面に敷いたマクシムのマントの上に寝転がされていた。


ちなみに依然として、私はマクシムにギュッと抱きしめられたまま・・・いや、拘束されたままである。



「・・・・・・・・」



横目でチラリと様子を伺うと、抱き合う私たちの後ろにアルフレッドが横たわっているのが見えた。すごい不機嫌な顔をして何か言いたげなのに、何も言ってこない。



(いや、おかしいだろう!男三人で寝るのがイヤなら、文句を言うか、この状況をどうにかしてくれ)



必死に視線で「どうにかしろ!」と訴えるが、乙女ゲームの塩対応キャラ・アルフレッドは何もしてこない。



(・・・・・アルフレッド殿に期待するのは止めて、マクシムに抗議をしよう)



異性に抱きしめられているからか・・・・それとも大好きだった光輝に似た男に抱きしめられているせいなのか、もはや自分でもよく分からないが、心臓がひどくドキドキしてうるさい。

この状況で彼の顔を直視するのは、完全に悪手だが、この状況をどうにかしないとさらに困るから仕方がない。



「あの、マクシムさん・・・」



決意し、話しかけるためにマクシムに目を向ける。



「・・・ん?」


(光輝・・・・)



何だかもうその顔を見ると、抗議することも何もかもどうでもよくなってしまう。自らマクシムに抱き着く。彼は光輝ではないのに・・・・・。


前世でひどく執着していた彼が目の前にいる気がして、自分でも自分の行動を止められなかった。


マクシムは、そんな私の様子に「ようやく私が観念した」と思ったのだろう。私の額にそっとキスをして・・・・・・


「おやすみ」と呟いた。

補足メモ:最後の理奈の回想したシーンは「60:理奈の回想・元彼との日々(2)」で光輝が顔を真っ赤にしたあたり。

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