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悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。  作者: 金田のん
第4章 入団までの1年間(3)、グラナダ迷宮と蓋をした私の思い
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96:アルフォンス(アルフレッド)の迷宮探索(2)

続いてアルフレッド視点になります。

オレ、<レイ皇国王弟>アルフォンス・レイこと、<A級冒険者>のアルフレッド・ブラッドレイは、湖の中に沈みながら、たったいま受けた攻撃とこれからの攻防を考えて、興奮していた。



(やべぇ、すげえ楽しい。オレが防御するのに精いっぱいかよ)



勇者に殴られた腕を確かめる。痣にはなっているが、骨までは折れていないようだ。

湖底まで足が着くと同時に、一気に足に魔素を集め強化する。このまま脚力で一気に地上まで飛び出し、攻勢に出ようとしたそのとき・・・・目を疑う光景が、目に入った。


勇者が、湖の中をオレめがけて勢いよく泳いできたのだ。



(まさか湖まで、追撃に来るとはなぁ・・・!)



思わず笑いながら、勇者のその意気にこたえて、このまま水の中で臨戦態勢で出迎えることにした。湖の中だろうとオレの身体強化魔法なら、地上と同等に剣を振れるからな。・・・・が、勇者の様子が明らかにおかしい。


さっき見せたゾクゾクするような殺気をまとっていない。勢いよく泳ぎながらも、何やら左腕(・・)を指差してアピールしてくる。



『あ“あ!?』



その不思議な光景から、ある可能性に気付いて、すげぇイラついた。せっかくの楽しい戦闘(じかん)は・・・・・どうやら隷属の腕輪の<命令>に邪魔されたらしい。



(<隷属の腕輪>を早めになんとかしねぇと、勇者と闘うのにも水を差されんのかよ)



湖の中で音にならない舌打ちする。勇者が隷属されている現状は、レイ皇国としては早く解決しなきゃいけない問題だが、オレ自身でも早くどうにかしたい理由ができちまった。


今朝、<通信用魔道具>で会話した、オレの兄・<レイ皇国皇帝>の言葉を思い返す。




『アル、君は王弟としての利益をほとんど享受していないから、今まで冒険者になろうが何をしようが止めなかったがね。勇者や聖女が召喚されるのは、世界の危機が訪れている証だ。


それなのに、五大国のどこからも勇者を召喚したという話を聞かない。どころか、見つけた勇者が<隷属の腕輪>をはめているというじゃないか。


<隷属の腕輪>の正式な解除方法は<隷属の首輪>と同じだ。<隷属>の(あるじ)登録をしている者が自ら解除する呪文を唱えるか、主登録している者がすべて死ぬ(・・・・・)しかない。


そして<隷属の腕輪>は、この世に三つと存在しないのだ。持っているのは・・・・我が国とルナリア帝国の王家だけだ。


君なら・・・この意味が分かるだろう?


最悪、五大国随一の強国・ルナリア帝国に我が国から戦争を仕掛けなければ(・・・・・・・)ならない、ということだ。


なぜ勇者が召喚されたのか断定は出来ん。

だが、ここ最近のルナリア帝国への食物の輸出量の増加を考えると・・・女神の加護を失っている・・・帝王に<帝王たる資格がない者が居座っている>可能性がある。


五大国同士が戦争をするのは、女神の怒りをかうから戦争は仕掛けられないが・・・・<王たる資格がない者が居座っている>場合は別だ。


むしろ<正当な王家の血筋を継ぐ者>を旗印に、他の国家や国内の貴族家が倒さねばならない(・・・・・・・・)のだ。世界の危機を救うためにな。


我が国が戦争を仕掛ける時に旗印になるのは、王弟であり・・・そして、ルナリア帝国前帝王の<正式な孫>である君になる。


兄としては君の自由に生きたい気持ちを尊重したい。だが、これから探るルナリア帝国の状況によっては、王として君に近々、命令を下すことになることを覚悟してほしい』



オレの母は、レイ皇国の前王と恋仲になった冒険者だが、ルナリア帝国の前帝王が結婚前に(・・・・)恋仲になっていた平民との間に作った庶子でもあった。


政争とかなにかのせいで、いまは王族どころか貴族令嬢ですらないし、その存在自体ないものとして扱われているが、前帝王が、各国の王家の書物に正式に登録を要請した、(れっき)とした<ルナリア帝国前帝王の直系の血筋>だ。


勇者と共に湖からあがる。ずぶ濡れになったオレと勇者のためだろう。フレドが焚火をおこしていた。

勇者とベルタとかいう女、そしてフレドとオレでその火を囲む。


フレドがオレの採ってきた果実<メレニ>を美味そうに食っているのを見ながら、こんな風に迷宮で火を囲う日々の終わりを感じていた。



(仕方ねぇか。冒険者を続けても勇者より強いヤツはいねぇだろうしな。それにフレドも来春には、魔法騎士団に入団するしなぁ)



色々思うところはあるが、よく考えるとフレドが魔法騎士団に入団するなら、むしろオレも冒険者を辞めた方が都合が良いことに気付く。むしろ冒険者を続ける理由がねぇ。


そうしてオレが今後の算段をつけ、そろそろ寝る時間になって・・・・・・・事件が起きた。

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