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悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。  作者: 金田のん
第4章 入団までの1年間(3)、グラナダ迷宮と蓋をした私の思い
94/103

93:勇者の過去(12)実験、その結果

この話ですが、多少残酷な描写があります(個人的にはそこまでではないかとは思います…)。

ご注意ください。

*********

*******の部分です。

特に読まなくても内容は問題ないかと思いますので

読みたくない方は飛ばしていただければ幸いです。

「アイスランス」



遠くで少年期特有のアルトの声が響きわたるのを、神妙な面持ちで、オレ・仲河光輝(なかがわこうき)は「常陽の森」の木陰の中で見守っていた。

隣にいる<茶色い髪の平凡な中年男>に扮した<チェスター・バシュラール>が、声をひそめてオレにささやいてくる。



「よく聞け。これから貴様は、いま魔法を放った<フレデリック・フランシス>のもとへ転移しろ。そして、出来れば一撃で仕留めるんだ。もし仕留めそこなったら、私がフォローするが、貴様も暗殺任務遂行のために最善を尽くせ」


「分かってますって、そんな念押しなくても大丈夫ですよ!」



チェスターの前で相変わらず軽薄な男を演じながら、オレは、にやにやとした笑いを作ることに集中した。

そうしないと、いまのチェスターの言葉のせいで流れた隷属の腕輪からの電流と・・・・・これからしなくてならない現実に押しつぶされそうだったのだ。


こめかみに手をやり、息を吐きだす。


様々な思考が浮かんでくるが・・・・誰かを恨んでも仕方がない。この状況で出来ることをするだけだ。


オレは上に羽織っていた旅装マントを脱ぎ、黒一色の姿になった。

この恰好は、自分で用意していた拠点に置いていた黒装束に似ているが、別物だ。


チェスターが用意したルナリア帝国の影用の服の一つで、魔力・物理に多少耐性のある布で作った特別製。

万が一にも、顔を見られない様に揃いの覆面もあった。


その覆面で顔を覆い隠し、剣を軽く握りしめる。



(まぁ、事前準備は考えられる限りしたんだ・・・・あとはもうなるようにしかならない・・・覚悟を決めよう)



事前準備とは、オレが一ヶ月前、ルナリア帝国帝王から命令をされた日とその翌日以降に行った数々のことだ。


まず、レイ皇国の拠点に行った後、オレは前々から場所だけは把握していた、レイ皇国南部・山の中にある盗賊団のアジトに転移した。


この盗賊団は、冒険者の中でも噂話になるくらい悪名が高い。

そして、この世界では盗賊はひとしく捕まったら、<縛り首>だ。


だから、これからする実験のために・・・・・・・・・彼らを選んだのだ。


********


魔獣同様に人を殺した後、ヒーリングで生き返るか否かという実験をするために・・・。


<サムド>の能力のすばやさを使い、多少てこずったものの、オレは盗賊全員を捕縛することに成功した。

そうして・・・・端から順に様々な方法で殺した。

もちろん拷問などはしたくないし、していない。だけど、盗賊たちにはすさまじい恐怖だったに違いない。


殺したそばから、ヒーリングで生き返らせたのだ。

実験の結果は、魔獣と同様の結果だった。


全員を無事、生き返らせることができた時、心底安堵したのに・・・やはり人殺しなどしたくはないのが自分の本音なのだと・・・・こんな状況になっても非情になり切れない自分に、思わず苦笑してしまった。


オレの横に・・・・この盗賊に凌辱されたり、拷問を受けていた者たちがいたから、なおさらそう感じたのかもしれない。


彼らは、「やめてくれ」と懇願する盗賊たちに、私の兄は、父は、恋人は・・・いまのあなた達のように懇願したのに、「あなたたちは残酷に殺したじゃない」と言って、罵っていた。



********


彼らの溜飲が多少は下がったのなら、この実験にも・・・オレのこだわりだけのためじゃない何かがある気がして、少しだけ気持ちが軽くなった。


感謝をされながら街の近くまで、怪我を癒した盗賊の被害者たちと縛り上げた盗賊たちを送り届けた明朝。


オレは次の実験をした。


この<腕輪>の効果を確かめるという・・・実験だ。


実験の結果は・・・・書籍で見た<隷属の首輪>と<同様の効果>があるということが分かった。


「明朝、ここに来い」とチェスターに言われたが、それを破ろうとしたのだが・・・・まず破る前に<勝手に身体がその命令に従おう>と動き出した。


そして、精神力でその行動をねじ伏せようとすると、すさまじい激痛に襲われ・・・気絶した。


いや、気絶する前に<ヒーリング>を使ったからら、気絶自体はしていないけど、使わなかったら<隷属の首輪>の効果同様、完全に気を失っていただろうことは明らかだった。


その後、激痛から回復したオレは、冷や汗をかきながら、今度は<身体の赴くままに>チェスターの指定した集合場所まで行ったのは言うまでもない。


もちろん一ヶ月もあったのだから、それ以外にも細々としたものはしたが、主にはこの二つの実験。

この二つの実験結果が重要で、それさえあれば・・・・この暗殺任務は、何とかなる・・・・・はず。


そうして、オレはチェスターの合図を受けて、万全の準備のもと・・・・・<フレデリック・フランシス>のもとに転移をした。


彼を一度殺し、必ず生き返らせるという決意を胸に抱えて。



その決意も、そしてすべての準備さえも・・・・<妖精>がすべてを台無しにするとも知らずに・・・・・・・。

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