表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。  作者: 金田のん
第4章 入団までの1年間(3)、グラナダ迷宮と蓋をした私の思い
88/103

87:勇者の過去(8)チェスター・バシュラールという男

「チェスター・・・さん?」


「ついてこい」



疑問の声を上げるオレに、<茶色い髪の中年男>は、その髪より少し淡いヘーゼルブラウンの眼を細めて、乱暴に言い放った。

白髪に瑠璃色という珍しい色合いを持つチェスターとは思えない、平凡な男が・・・・・・。



(いやいや、普通に説明しないで、<ついてこい>はないだろう・・・。

オレは乙女ゲームの設定を知っているから、この茶髪男が魔法で化けたチェスター本人だって分かるが、急に現れた別人についていく奴なんていないだろうが・・・・!)



だが、ここにいるチェスターが乙女ゲームそのままの性質だったら、そんな文句を言っても仕方がない。


彼はこと戦闘技術や魔法に関して、自分が知っているであろうことは、みんな知っているモノだと認識しているのだから。


影の一族に囲まれて育ち、そして今なおその中で暮らしているせいで、任務に必要なモノ以外の常識が極端に欠落している・・・それがチェスターという男なのだ。


いつの間にか、こめかみに右手を置いていたのにオレは気づき、そっとその手をはずす。


爽やかな青年らしい笑顔を浮かべ、返事をしようとして、それを取りやめる。


彼・<チェスター>が、乙女ゲームそのままの性質であるとした場合、それは悪手だからだ。


<チェスター>自身は基本的に、オレという男の性格にさして興味は抱いていない。

だが、今回の「フレデリック・フランシス暗殺」という任務に不適格な性格だったら、その性格を任務開始までに徹底的に矯正しようとするだろう。


具体的にはオレが<爽やかな青年風の性格>だと判断したら、徹底的に殺人への忌避感をなくすため、「大量の殺人」を強要する。


そういう男なのだ。


確かに任務の最中に、「人を殺す・子供を殺す」ということに一瞬でも忌避感を覚えられれば、それは隙となり、任務に支障をきたすから、理にかなってはいるのだが・・・・・・。



(そんなことはしたくはない・・・)



地面をトンと蹴り、加速する。


多少、手加減をしても<サムド>の能力を引き継いだオレの能力はすさまじいのだろう。コンマ一秒も満たない時間でチェスターに肉薄。


先ほどから表情を一切変えなかったチェスターが、一瞬だけその目の瞳孔を見開くのが分かった。


そんな彼に「にやり」と笑いかけて・・・・・・・


その髪を掴み、一気に頭ごとチェスターを持ち上げた。


<チェスター・バシュラール>は190cmを超える長身痩躯な体型だが、いまは<茶色い平凡な男>。オレより若干背が低い。


左手で軽々髪を掴み、自身を持ち上げるオレをチェスターは目を細めて、無表情ながらも思案気な様子で観察している。

オレの突然の行動を見極めようとしているのだろう。


オレはニタニタとイヤらしくなるように注意しながら笑いかけ、そんな男の顔に向け・・・・・・


一気にツバを吐き捨てた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ