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悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。  作者: 金田のん
第4章 入団までの1年間(3)、グラナダ迷宮と蓋をした私の思い
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79:鍛錬4日目・お嫁にいけない

マクシムがベルタを抱えあげている。

胸の痛みを感じながらも、その後ろ姿から目をそらせない。


1つ溜息を吐いたかと思うと、マクシムはこちらを振り返った。

その顔は、昨日もしていた爽やかな笑顔だった。



「ベルタもこう言っているし、このまま走ろうかと思う。・・・・アルフレッドさんはA級冒険者なんだよね?・・・・オレたちはこの迷宮、初めてなんだけど、アルフレッドさんは入ったことは?」



笑顔のまま朗らかに、アルフレッドに問いかける。


マクシムは昨日のラフな格好とは違い、皮の防具を胸当てにして、腰にはオーソドックスな片手剣をさげている。

アルフレッドと同じく整った顔をしているが、大柄で筋肉質な彼とは違う。

でも、程よく鍛え上げられているのだろう。

まぁ、強いのと言うのだから当然だけど、ベルタを片手で抱えているにも関わらず、スラッとした姿勢に全くブレがない。



(このまま・・・・・・か。マクシムは迷宮の中でも迷わず抱きあげた・・・なるほど、いつもこんなふうにベルタを・・普段から彼女に・・・・・触れているんだろうな・・・)



<元彼・光輝>にきっと重いと思われていた・・・・・私のどす暗い感情が、なかなか消えてくれない。

マクシムは光輝ではないのに・・・・そっくりなだけの他人なのに。そもそも光輝だとしても、もう付き合ってもない・・・・・私には、醜い嫉妬をぶつける権利さえないというのに・・・・さっきからあふれた感情の蓋が・・・全然閉まってくれない。


とにかく息を整えようとすると、アルフレッドにずっと握られている左手がぎゅっと握りこめられた。


思わず、視線をむけるとアメジストの瞳を細めて私を見る端正な顔が目に入る。

そのままアルフレッドはマクシムの方も見ずに返事をした。



「ああ。何度もある。20階層までなら、強くてもB級の魔獣までしかいないから、お前が勇者(・・)並みに強いなら、その状態でも楽勝だなぁ」


「はははっ、アルフレッドさん、冗談がうまいなぁ。ベルタは確かにオレのことをA級冒険者(・・・・・)並みに強いなんて嬉しい評価をしてくれたけどね。・・・じゃあ、迷宮経験者のアルフレッドさんに先導を頼んでもいいかな?」


「ああ。そもそもフレドが受けた依頼だしな。20階層まで、オレ達が先導するぜぇ?」



私が自分の感情に折り合いをつけていると・・・・・・急に身体が浮遊感を感じた。



「なっ・・・!?」



先ほどまで頭2つ分は上に合ったはずのアメジストの瞳を急に見下ろすかたちになって驚く。端正な顔が胸元に迫っていて、思わず心臓がバクバクと音を立ててしまう。

・・・・・私の足はいま地面についておらず、アルフレッドのたくましい腕の中に納まっている。

・・・・つまりは、私はいまベルタと同じ体勢だということだ。


突然の縦抱っこ。家族以外の男性に触れられたことのない貴族令嬢・レティシアの悲鳴が私の頭の中で鳴り響く。



(ああああ・・・わたくし、もうお嫁にいけない・・・・・)



まぁお嫁も何も・・もっとすごいことを出会った当初からされている気がするし・・・・・何よりいまは兄・<フレデリック・フランシス>なのだから、特に問題はないと私は思う。


というか・・・・喪女の理奈も先程までは、同じく真っ赤になっていたであろう状況だが、それよりも気になる点があって・・・・・いまはどうでもよくなっている。


私の第一に大切なことは「兄・フレデリックを公爵にすること」。

第二に大切なことは、「剣と魔法の世界を思う存分に楽しむこと」だ。


なのに、この状態では、迷宮探索を思う存分に楽しめない・・・・!


つまりは・・・・私の目的を害されそうなこの状況にいま憤慨しているのである。

しかし、貴族令嬢・レティシアのほうの気持ちも強いから、どうしても顔を赤くして目を潤ませて見つめるかたちになってしまう。


思わず固まっているとアルフレッドに耳元で優しく語り掛けられた。



「お前はそうやってオレの方を向いてればいいんだよ」



吐息が首筋にかかり、思わずビクッと体が揺れる。



「・・・じゃあ、行くか」



アルフレッドが私を抱えたまま、走りだす。3M以内に入っているのだろう、後ろからマクシムがベルタを抱えながら同じように走っているのが気配察知で感じられる。


でも、私は前を向いていたから知らなかったのだ。

マクシムが、そんな私たちのことを凄い形相で睨んでいたことなんて・・・・・・。

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