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悪役令嬢は男装して、魔法騎士として生きる。  作者: 金田のん
第3章 入団までの1年間(2)、帝国の陰謀とグラナダ迷宮
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43:勇者の過去(4)逃げられない

お待たせしました!

まだまだ光輝視点です・・・

(さくっと2・3話でレティに戻るはずだったのですが・・・・・・

説明することが思ったより多く・・・・・・・すみません)。

王様の言葉を受けて、まずは室内の様子に目線を走らせる。


いまは窓のない薄暗い部屋から、外の景色の見える1階の部屋に移っている。

さらに騎士がいない状態。

もしかしたら、右横にある大きな窓から<素早さ>で逃げ切れるかもしれない。



(でも、ここから逃げたとしても、あまりいい展開にはならないだろうなぁ・・・)



もし、この王様の言うとおりの状況だとしたら、いまいる<加護持ち>を<王位>に据えるためには、オレは<人を大勢殺す>必要があるだろう。


すんなりこの王様たちが<王位>を譲ってくれるなら何も問題はないだろうけど、王位をめぐって内戦になるのならば、<大勢の兵士や騎士>を殺さなくてはならないし

さらには<罪のない民間人>を殺す場面だってあるかもしれない・・・。


だけど・・・・王様の言うとおりにすれば、たった<1人の加護持ちを殺す>だけですむ。


異世界の女神・カトレアに召喚されて・・・<世界を救ってほしい>なんて言われたが、つまるところオレが求められた役割は・・・・・・どう転んでも・・・・・<人殺し>をするしかないんじゃないか・・・・・・・・・・。


オレは・・・・その現実を改めて実感した・・・。



(・・・・・・マジか・・・)



もう若干どころか肩をすっかり落としてしまうのは仕方ない。

一度目を閉じて、今日の理奈と付き合えた瞬間の様子を思い起こす。


オレの告白に・・・理奈がうなずいたときの頬を染めたかわいい顔。

思わず抱きしめた瞬間のいい匂い。唇のやわらかい感触。


とにかくもう一度会って、彼女といちゃつくためにはこの世界を生き抜いて、役割を全うしなくてはいけないんだ。


でも・・・・



(罪のない人を殺した・・・・自分の血で汚れた手で・・・・もう一度、理奈を抱きしめるのは・・・したくはないなぁ・・・・・・)



・・・・他になにか方法はないかな・・・と頭をめぐらせる。


その結果・・・オレは<一つの案>を思いついた。


女神・カトレアの古代魔道具である<玉座>に<加護持ち>を据えればいいと言う言葉。

<サムド>の能力である、転移。


これらを使えば、誰も殺さずに・・・・・・しかも簡単に、<玉座>の古代魔道具(アーティファクト)を起動することができるはずだ。


例えば、深夜など誰もいない時間帯にひそかに<現在の加護持ち>を古代魔道具(アーティファクト)である<玉座>座らせてしまえば、それで問題は解決するんじゃないか?


もちろん問題の先送りにしかならないかもしれないけれど、<20年に一度起動すればいい>のなら、今回のオレの役目はそれだけでも十分だろう。


この<一つの案>を思いついたお陰でオレがこれからやるべき方向性は・・・・決まった。



・第一に玉座の位置を正確に把握すること。

・第二に<現在の加護持ち>と<白い馬>を見つけること。

・第三に<白い馬>にこの<一つの案>が問題ないかを聞くこと。

・第四に、問題がなかった場合は、<加護持ち>にこの協力を依頼して古代魔道具(アーティファクト)玉座を起動すること。

     もし問題があった場合は・・・・もう一度、別の方法を検討すること。



大きな方向性が決まったら、だいぶ冷静になってきた。

第一の目標も第二の目標も、この目の前の王様の協力は不可欠。


とにかくやっぱり、この王様と友好関係を築くことが大切なんだ。

オレは目を開けて、覚悟を決めて王様に目線を合わせた。

この思考に5秒もかかっていないから、王様たちが、不審がってはいない様子で安心する。



「ご事情をお話してくださり、ありがとうございます。

<加護の紋章を持つ者>を玉座に据えるそのお話、ぜひ協力したいです。

ただ・・・・オレはここに来たばかりなので、女神さまから授けられた力でどのくらい戦えるのかまだ分からなくて、


色々この世界のことを教えていただきながら、お力になれるよう、まずは鍛錬したいと思うのですが・・・・」


<加護の紋章を持つ者>を殺すとは明言しないで、オレはそう王様に言った。

ウソ発見器のような機械がこの世界にある可能性もあるから、ボカしたのだ。


オレの言葉を受けて、50代のメガネは一瞬顔をゆがめるも、目の前の王様は、オレの言葉に満足そうに頷いた。



「もちろん勇者様には生活の保障をさせていただいたうえで、鍛錬のご協力をさせていただく予定でした。


それでは、あらためて自己紹介をさせてください、勇者様。

私はこの国・ルナリア帝国の帝王<イグナシオ・ルナリア3世>である。こやつらは・・・」



王様に目線を向けられた、50代メガネ男がオレに優雅にお辞儀した。



「この国の宰相を務めるシュテルン侯爵家の当主、<モレノ・ シュテルン>と申します。勇者様」


「こやつは我が母・前王妃の弟、つまり我が叔父でな。宰相に就く前は、この国の筆頭魔導士もしていたのだ。魔法についてはこやつから教えさせる予定です。そして、もう1人のこやつは・・・」


「私はオイストル伯爵家当主、<リーンハルト・オイストル>です、勇者様。ルナリア帝国騎士団長をしてます」


リーンハルトと名乗った40代筋肉男は、オレに少し嘲笑するような笑いで微笑みかけた。



(さっきから気の障る笑い方をするやつだなぁ・・・・・・)



そんな内心とは裏腹に、<騎士団長・リーンハルト>に目線を合わせ、オレは笑顔で頷く。



「こやつからは剣技を含めた実践を教える予定です」



彼らを見渡した後、オレは姿勢を正し、心底嬉しそうな笑みを浮かべた。

しばらくは本当のオレではなく、<正義感の強い、感情が分かりやすい男>で過ごすことにしたのだ。

そのほうが相手の信頼を早く得やすそうだと思ったのだ。



「オレの名前は、光輝です!まだ分からないことばかりですが、どうぞよろしくお願いします!!」



そして姓を名乗らず、名前だけを名乗たのは、異世界で完全な本名をさらすのは危険な可能性を考慮して・・・。


こうして・・・・・・・オレの異世界生活が幕開けした。

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