プロローグ 旅の始まり
プロローグ 旅の始まり
俺、高原龍騎は何を隠そうゲーマーだ。それも毎日のプレイ時間が10時間を超えるほどのハードゲーマー。いや、もはや廃人だ。
そんな俺が一生に一度であろう若き青春時代どころかもはや学生生活までを投げ打ってまで熱中しているもの、それはFPSゲームのKill or Dieだ。
そもそもFPSとは一人称視点型シューティングゲームの略であり、その名の通り一人称視点のキャラクターと銃を操り敵を倒すゲームだ。なぜ俺がそんなに熱中するのかはこの一人称視点という所が大きく関わる。
敵との距離が近く緊張感や倒した時の爽快感が大きい。対人戦なので競技性が高い。
そう言えば俺がFPSを始めたきっかけは動画共有サイトで見た実況プレイだった。それを見て興味を持ったんだった。だがそこからは泥沼だった。
対人戦なだけあり自分より強いプレイヤーは山ほどいたし、そんな奴らを倒して1位になりたい。そういった思いからプレイ時間は日に日に増えていった。そして現在、アマチュアのプレイヤーレベル程度には負けない実力を身につけた。
プレイの楽しさと引き換えに。
上手くなるにはもはや楽しむよりも練習の意味合いが強くなり、負ける時はイライラする。そうするうちにプレイヤースキルは磨かれて言ったがプレイの楽しさは損なわれていった。
そして今日も遊びというよりもはや作業に近くなったこのゲームをそれでも飽きずに続ける。そんな毎日を一変させる出来事が起きた。
学校に行かなくなった俺に何も言わなかった母親が何故か今日は声をかけてきた。
ヘッドホンを付けて集中していたから何を言っていたのか聞き取れなかったがどうせ学校行けとかそんなところだろう。
そう思っていた、しかし真実はこうだ。
緊急地震速報がテレビに流れた。それに気づいた母が外に逃げようと声を掛けてくれた。だが、無視をされてしかも日頃の俺の行動を見ている母はどうせ「FPSやめらんねえwww」になると確信していたから1人で逃げた方が安全だ、と思った。
結局地震が来てもゲームをやり続け、家は倒壊し、俺は瓦礫の下敷きになりあっさりしょうもない人生を終えた。
はずだった。
目を開けててっきりここは天国か、と思ったがどうやら違うようだ。なんせ、そこらじゅうに悲鳴と銃声、爆発音が響いているからだ。
夢を見ているのか?だとしたら最悪だな。死ぬ前最後に見る夢がかわいい女の子とイチャイチャするものじゃないなんて。
そんなしょうもないことを考えていたが夢は醒めないし事態は一向に進まない。
そこら辺にいる住民らしい人にここはどこか聞いてみよう。あと、コーラ売ってないかも
瓦礫の前で座っている老父に尋ねた。
「ここはどこですか?」
すると、怪訝な顔をして案外若い声で返した。
「クルヒーマ、クルヒーマ村だよ」
聞き覚えのない土地、これはほんとに夢かもしれない。そう思って頬をつねってみたが夢は醒めない。
「何でこんなに悲鳴や銃声で溢れているんですか」
「戦争の真っ只中だからだよ」
何を言っているんだと言わんばかりの顔で返された。
銃は好きだし夢の中なら撃てるかもしれない。そんなことを思ってどうやら戦っているらしい部隊の拠点を目指す。
浅はかな欲が身を滅ぼし、衝撃の真実に気づかせる。