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第73話

  あの時の厳しい顔をした父は友人から聞いていた父親像そのものだった。万民を救う神主がそんなことを言うなんて・・・私の目には父が俗物に落ちたように見えたわ。いっときの感情で私は憤慨したけれど父は私の奥底にある感情の変化を見抜いていたのね。その時すでに私は良さんを愛し始めていたから。そして良さんが来てから2ヶ月ほど経った日。突然鼓島が核の実験地になっていることを知らされたわ。すぐ島を脱出しろと言われて強制的に海岸に連れて行かれ、米兵の待つ軍艦に乗せられた。そこで一子ちゃんに再び巡り会ったの。既に死んでいたと思っていた一子ちゃんに会って私は涙が枯れるのではないかと思う位泣いたわ。でも彼女の身体は拷問にかけられたせいでボロボロだった。同じことが勝一君の身にもおこっていたらしのだけれど、その時の私は一子ちゃんに会えた喜びでそこまで考える余裕はなかったの。その他、船に乗ったのは乳の恩師夫人だけだったわ。私達3人はお互い身を寄せ合ってじっと時が過ぎるのを待っていました。人工的に核爆発を起こさせるのですから軍艦はかなり遠くまで避難していたと思います。それまで米兵に張り詰めていた緊張感がある時を境に溶け、周囲がザワザワし始めました。私達には言葉が理解できませんでしたけれど、何か重大な事件が起きたのだろうという事は察知できました。それが鼓島消滅なのだろうか?と半信半疑でしたがさすがにそのことは夫人と一子ちゃんには言えませんでした。悲しみを大きくし、傷口に塩を刷り込むようなことをして一体何の得があるのでしょうか。ただ私は島に残った良さんのことが気がかりでなりませんでした。なぜ強引に連れて来なかったのだろうと後悔が残りました。以後60年私の心の中に消えない傷となっておりました。その頃の日本は男女七歳にして席を同じうせず。という基本理念がありましたが、良さんはそんなことを全く気にしていない方でした。当然ですわね。そんな理念があったなんて信じられないくらいずっと未来から来た人なのですもの。

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