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第60話

  静寂を破ったのは電話の呼び出し音だった。受話器を取ろうとする夫人を高木が制し、自ら電話に出た。かけてきたのはやはり酒井だった。

「おお!待っていたよ。それでどうだったのかね・・・ん?・・ほう!それはそれは・・・そうだね。連絡先を教えてもらえればこちらから電話するよ。・・・それと君から紹介されたと言って差し支えないだろうね?・・・そうか。それはありがたい。ではここで待っていていいのかね?・・そうか。・・ではよろしく頼むよ。・・じゃ、後ほど。」

高木の表情からその内容が明るいものだということが察せられた。

「先生!」

綾子の問いかけに高木はVサインを見せ、

「さすがは大手出版社だけのことはあるね。短時間でカーペンター氏の孫という人物を見つけてくれたよ。何でも彼はアメリカで出版社の社長をやっているそうで、酒井君の会社とも懇意にしているらしいよ。早速連絡を取ってくれるそうだ。ここで待っているようにと言われたから、申し訳ないがもう少しここで私達年寄りの顔を見て辛抱していてくれないかね?」

高木は穏やかな笑みをたたえながら言った。


  それから待つこと更に2時間。ようやく電話が鳴った。

「はい。高木・・・おお!酒井君。待っていたよ。ん?おお!そうか!え?これから?それでは申し訳ないよ。え?・・・そうか。いやぁ、それは悪いね。じゃ、その時にまた。」

受話器を置いた高木は、不思議そうな面持ちで自分を見つめる2人の顔を見た。

「実はね。驚いちゃいかんよ。・・酒井君の話だと、その孫という人がこれから日本に来るというんだ。知り合いの人と一緒にね。いや、酒井君が連絡したからというのもあるらしいが、その知人が来日するので付き添って来るというのが本来の主旨なんだそうだがね。その人がだよ。酒井君の電話で私達と直接会ってくれることになったんだよ。日にちと時間がまだはっきりしないからわかり次第また連絡をくれるそうだ。」

高木の一言一句が綾子にはセンセーショナルな出来事だった。交友関係どころか一発で身内という人物にぶち当たったからだ。その上わざわざ来日して面会までしてくれるというのだから、綾子でなくとも驚きの一言に尽きるというものだ。

「だからね、日時がはっきりしたらすぐ連絡するから、申し訳ないがそれまで首を長くして待っていて下さい。いいですか?」

高木の申し出に返事もできずただ首を縦に振る綾子だった。

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