表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/76

第54話

  帰宅した新一と綾子から良の入院を聞かされた母京子は、あたかもそれが綾子に責任があるかのように責め立てた。新一が庇ったせいでその怒りに拍車がかかり、金輪際綾子に笹崎家の敷居をまたがせないという始末だ。仕方なく綾子はその夜1人淋しく病院近くのホテルに部屋を取った。しかしその淋しさよりも良の身体のことが心配で眠れぬ夜を明かした。

  翌朝。あまり食欲はなかったが、食べなければ身体が持たないとホテル内のレストランでトーストとコーヒーを胃に流し込んでいると、新一が慌しく駆け込んできた。昨日の京子が取った非礼の侘びと、それを阻止できなかった自分の不甲斐なさを訴えたかったようだ。

「おじさん。もういいんです。おばさんの言う通り、私がもっとちゃんと良ちゃんの健康管理をしていればあんな風にならなかったんじゃないかと思うから。私の方こそおじさんやおばさんに申し訳なくて。夕べあれから反省したんです。本当にごめんなさい。」

「何を言うんだね。悪いのは私だよ。みんな綾ちゃんに任せっきりにしてしまって。おばさんもね、あの後、私の説明を聞いて早とちりして綾ちゃんにとんでもないことを言ってしまったと反省してね。ホテルの玄関先まで一緒に来たんだけれど、どうしても綾ちゃんの顔を見ることが出来ないって言ってね、外で綾ちゃんの許しが出るのを待ってるんだ。」

「えっ。おばさんが?!」

それを聞くと綾子は手に持っていたトーストの半切れを下に落とした。しかしそれを拾おうともせず慌てて外に出た。

車の前でしょんぼり立っている京子の姿を見つけると、綾子は傍に駆け寄り「ごめんなさい!おばさん!」

そうひと言言ったきり京子の胸にすがって泣いた。

「私の方こそ悪かったわ。ごめんね!何も知らずあんた1人を悪者にして。ごめんね!ごめんね!」

その光景を傍らで見ていた新一はホッと胸を撫で下ろしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ