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第49話

  薬が効いたのかその夜は悪夢にさいなまれることなく、無事朝を迎えることが出来た。綾子は学校があったため、良のことが気がかりではあったが時間通り登校した。その後、1人になった良を結城が訪ねてきた。

良は結城の顔を見た途端、ぐっと両手に力を込めた。ひと言でも発したら殴ってやろうと思ったからだ。しかしあまりにも結城が落胆している。そう見えてその手を緩めた。

「どうしたんだ、一体。まぁ入れよ。」

日中は体調も良かったのでいつもと変わらぬ対応が出来た。

「何かあったのか。おまえらしくないな。」

慣れぬ手つきでお茶を出し、話を切り出した。

「・・・・笹崎。・・・・オレ・・・お前に誤らなければならないことがあるんだ。」

結城の声は今にも消え入りそうなくらい小さかった。しかも異常なほど震えている。

「何だ。・・・綾子の事か?・・・まぁ待て。・・・やっぱりそうか。オレも今度お前の顔を見たら2〜3発ぶん殴ってやろうかと思ってたんだ。けど・・やめた。お前のそんなショボくれた姿を見たらそんな気無くなった。・・・でもお前、いつから綾子のことを?」

「・・・お前がいなくなった後、いろいろ手を尽くして捜すうち彼女と接する機会が増えたろ?それでいつの間にかそうなってたんだ。」

「そう・・か。それを聞いたら尚更殴れないな。全部オレのせいだもんな。悪かったな。心配かけて。それから――― ありがとう。会社を辞めた後までオレのことを気にかけてくれて。そんなことしてくれるのはお前だけだもんな。本当に嬉しいよ。」

感謝の言葉と共に肩に手を掛けると、結城の身体は小刻みに震えていた。膝に置いた両手にポタポタと涙が落ちた。

「いいや。おまえに・・そんなこと言ってもらえる資格なんか・・・俺にはない。だって・・お前のいないのをいいことに泥棒猫のようなマネをして・・・俺って男は・・友達の資格なんて・・・」

「そんなことない。それを言うならオレなんて人間として失格だ。助けられたはずの人間を助けられず、一人こんな所に逃げてしまったんだから。」

「笹崎?・・・お前、何かあったのか?」

「・・・え?ああ。いや、何でもないよ。オレ自身の問題だ。・・・で?会社のほうはどうなんだ?上手くいってるのか?」

「ああ。可もなく不可も無くってとこさ。相変わらず課長は毎日小言の材料を見つけるのに奔走してるよ。」

「そうか。・・・お前も大変だな。まぁ頑張れよ。オレも新しい仕事探すから。」

「ああ。何かあったら連絡してくれよ。俺、すっ飛んでくるから。」

「ありがとう。期待して待ってるよ。お前がすっ飛んでくる姿をね。」

その後しばらくの間2人はいろいろ語り合った。殆どが会社にいたころの思い出話だったが。そして結城は帰って行った。直後、それが合図だったかのように突然道路工事の音が聞こえてきた。と同時に落ち着いていたはずの発作が起きた。


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